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「取り組み・取組・取組み」の違いと使い分け|公用文とビジネスでの正しい表記

「取り組み・取組・取組み」の違いと使い分け|公用文とビジネスでの正しい表記 勉強・資格

「取り組み」「取組」「取組み」という3つの表記、どれを使えばいいのか迷ったことはありませんか。 パソコンやスマホで変換するとすべて候補に出てくるため、余計に混乱してしまいますよね。

結論からお伝えします。 迷ったら「取り組み」と書くのが最も無難で間違いがありません。

しかし、役所への提出書類や専門用語として使う場合には、別の正解が存在します。 この記事では、内閣告示のルールやビジネスシーンでの使い分け、公用文での決まりなど、プロのライターが現場で判断基準にしているポイントを分かりやすく解説します。

正しい表記を知れば、メールや資料作成で手が止まることはもうありませんよ。

「取り組み・取組・取組み」の基本ルールと意味の違い

日本語の送り仮名には、国が定めたルールが存在することをご存じでしょうか。
昭和48年に内閣告示として出された「送り仮名の付け方」に基づくと、この3つの言葉には「本則」と「許容」という明確な区分があります。

基本的には、動詞の「取る」と「組む」が合わさった複合語であるため、両方の送り仮名を残すのが原則(本則)です。
一方で、読みやすさや慣習を考慮して、送り仮名を省くことも「許容」として認められています。

それぞれの表記が持つ意味合いと、国語的な位置づけを正しく理解しましょう。

【本則】「取り組み」は最も基本で正しい形

公私を問わず、最も広く使われているのが「取り組み」です。
これが「本則(原則的な書き方)」とされています。

「読み間違えようがない」「誰にでも親切な表記」であるため、一般的なビジネスメール、Web記事、社内報、手紙などではこの表記を使うのがベストです。
迷ったときは、この「取り組み」を選んでおけば、マナー違反になることはまずありません。

【許容】「取組み」と「取組」はどちらも認められた形

実は、「取組み」と「取組」は、どちらも国のルールにおいて「許容(使ってもよい表記)」として分類されています。
ただし、使われるシーンには明確な違いがあります。

①「取組み」:読みやすさ重視の省略

「り」を省略した形です。個人のメモやカジュアルなチャットなどで、「文字数を減らしたいが読みやすさも残したい」場合に使われます。
しかし、近年は中途半端な省略と捉えられることもあり、ビジネス文書での使用頻度は減ってきています。

②「取組」:公用文や複合語での標準

送り仮名をすべてカットした形です。これも文化庁の基準では「許容」の一つですが、非常に重要な役割を持っています。
内閣訓令により、公用文(国の公式文書)ではこの表記を積極的に用いると定められているからです。

そのため、行政文書や法律関係の書類、あるいは「安全管理取組」のように他の語と結びついて複合語になる場合は、この「取組」が標準的に使われます。

参考:文化庁 | 送り仮名の付け方

一目でわかる!3つの表記の比較表と使い分け

それぞれの特徴を理解したところで、実際にどのように使い分けるべきかを表にまとめました。
ご自身の作成する文書がどれに当てはまるか、確認してみてください。

表記分類(文化庁基準)おすすめの場面特徴
取り組み本則(基本)一般的なビジネスメール
Web記事、広報誌
学校・教育関連
丁寧・親切
最も無難
取組み許容個人のメモ
社内チャット
文字数制限がある場合
やや略式
使用頻度は低め
取組許容(公用文で採用)公用文(役所への書類)
法令・契約書
相撲・株式用語
公式・固い
複合語に適する

このように、相手や媒体によって使い分けるのが「デキる大人」の対応です。
次は、より具体的なビジネスシーンでの例文を見ていきましょう。

【ビジネス編】メールや書類での実践的な使い方と例文

ビジネスシーンでは、「読み手にストレスを与えないこと」が最優先です。
一般的には「取り組み」を使いますが、例外的なケースも存在します。

一般的なメール・報告書では「取り組み」

クライアントへのメールや、上司への日報などは「取り組み」と書きましょう。
ひらがなが適度に入ることで文章に余白が生まれ、読みやすくなる効果もあります。

例文:

  • 弊社のSDGsへの取り組みについてご説明いたします。
  • 新しいプロジェクトへの取り組みを開始しました。
  • 環境問題への取り組みを強化する方針です。

複合語やタイトルでは「取組」がスッキリする

単独で使うのではなく、他の漢字とくっついて一つの単語(複合語)になる場合は、送り仮名がない「取組」の方がバランスが良いことがあります。
「取り組み内容」と書くよりも「取組内容」とした方が、ひとまとまりの言葉として認識しやすいからです。

ただし、これも必須ルールではないため、前後のバランスを見て決めましょう。

例文:

  • 重点取組事項を一覧にまとめました。
  • 次年度の取組計画書を作成してください。
  • 安全管理取組評価表の提出をお願いします。

絶対に注意したい「公用文」のルール

もしあなたが公務員であったり、自治体の補助金を申請する書類を作成していたりする場合は注意が必要です。
国の公用文作成の要領では、名詞として使う場合は「許容」の規定を適用し、「送り仮名を付けない(取組)」と定めているからです。

この場合、「取り組み」と書くと修正を求められる可能性があります。
役所関連の書類では、タイトルや名詞としての箇所は「取組」、文中で動詞として使う場合は「取り組む」と明確に使い分けましょう。

相撲や株式市場における「取組」の特殊な意味

ここまで一般的な「努力する」「事にあたる」という意味での解説をしてきましたが、特定の業界では全く別の意味を持つ専門用語として「取組」が使われます。
この場合、「取り組み」と送り仮名を付けることはほとんどありません。

大相撲における「取組」

相撲の試合の組み合わせのことを「取組(とりくみ)」と言います。
これは完全に名詞化している用語です。

例文:

  • 本日の取組表を確認する。
  • 千秋楽の注目の取組が決まった。

株式市場における「取組」

金融業界、特に株式市場においても「取組」という言葉が登場します。
これは信用取引において、買い残高と売り残高が拮抗(きっこう)している状態などを指す用語です。
「取組高(とりくみだか)」という言葉もあります。

例文:

  • 信用取組が良化している銘柄を探す。
  • 取組倍率に注目が集まる。

文章作成時の注意点:動詞にする場合と統一感

最後に、記事を書いたり資料を作ったりする際に、よくやってしまいがちなミスについて解説します。
プロのライターも、校正(推敲)の段階で必ずチェックするポイントです。

動詞の場合は必ず「取り組む」

名詞の場合は「取組」と省略することが許されていますが、動詞として使う(文末に来る)場合は省略できません。
「取組む」と書くと、誤字のような印象を与えてしまいます。

NG例:

  • 全力で課題に取組む所存です。

OK例:

  • 全力で課題に取り組む所存です。

一つの文書内で表記を統一する

最も重要なのは、一つの記事や資料の中で表記がバラバラにならないようにすることです。
「はじめに」では「取り組み」と書いているのに、「まとめ」では「取組」になっていると、読み手は違和感を覚えます。

これを「表記揺れ」と言います。
書き始める前に「今回は『取り組み』で統一する」と決めておくと、質の高い文章になりますよ。

「なお」と「尚」の使い分け:意味の違いや例文を解説【ビジネス向け】

まとめ

「取り組み」「取組」「取組み」の違いについて解説しました。
それぞれの使い分けのポイントを整理します。

  • 「取り組み」:最も基本の形(本則)。迷ったらこれを使う。ビジネスメールや一般的な文章に最適。
  • 「取組」:許容の形だが、公用文(役所書類)では標準として使われる。表のタイトルや複合語にも適している。
  • 「取組み」:こちらも許容の形。間違いではないが、近年は使用頻度が低め。

言葉は生き物ですが、ビジネスにおいては「相手がどう受け取るか」がすべてです。
親切で丁寧な印象を与えたいときは「取り組み」、公式で厳格な印象が必要なときは「取組」を選んでみてください。

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