
【徹底比較】Wi‑Fi 6 vs Wi‑Fi 7 ─ 次世代規格のメリットと対応機器
無線LAN(Wi‑Fi)の技術は年々進化し、通信速度・同時接続数・低遅延などの面で飛躍的な改善が図られています。現行規格のWi‑Fi 6(IEEE 802.11ax)は、混雑した環境下でも安定した通信を実現してきましたが、2024年1月8日にWi-Fi Allianceが「Wi-Fi Certified 7」プログラムを開始し、正式にWi-Fi 7の規格が確定しました。これに伴い、すでに一部メーカーが対応製品を市場に投入しています。本記事では、両規格の技術的特徴や最新動向、対応機器について詳しく解説します。
Wi‑Fi 6 の概要と特徴
Wi‑Fi 6は2019年頃に市場へ登場し、現代の多端末接続環境を想定して設計された規格です。以下の特徴により、家庭やオフィス、公共空間で高い信頼性を発揮しています。
- 高効率な通信方式
OFDMA(直交周波数分割多重接続)により、複数の端末が同時にデータを送受信可能。混雑環境下でもスムーズな通信を実現しています。 - 高い伝送速度
複数の空間ストリームやチャネルの利用により、理論上は約9.6Gbps程度の高速通信が可能です。 - MU‑MIMOの活用
複数ユーザへの同時通信を実現するMulti‑User MIMO技術により、ネットワーク全体の効率が向上しています。 - 省電力機能
Target Wake Time (TWT) により、端末が通信タイミングを最適に調整し、バッテリー消費を低減します。 - 6GHz帯の利用
Wi-Fi 6E(Wi-Fi 6の拡張版として6GHz帯に対応した新規格)の登場により、従来の2.4GHz/5GHz以外の広い帯域が利用可能になり、混信が少ない環境での通信が実現しています。
Wi‑Fi 7 の概要と次世代技術
Wi‑Fi 7は2024年に正式規格として確定し、既にASUS、Netgear、TP‑Linkなど一部のメーカーから対応製品が投入されています。Wi‑Fi 6の改良点に加え、以下の画期的な技術が採用されています。
- 広いチャネル幅
Wi‑Fi 6では最大160MHzまでのチャネル幅でしたが、Wi‑Fi 7では最大320MHzが利用可能となり、同時に扱えるデータ量が大幅に増加します。 - 4096‑QAMの採用
従来の1024‑QAMに比べ、Wi‑Fi 7では正式に4096‑QAMが採用され、同一帯域内でより多くのビットを送信。スペクトル効率が向上しています。 - マルチリンクオペレーション(MLO)
複数の周波数帯(2.4GHz, 5GHz, 6GHz)を同時に利用することにより、リンクの冗長性が確保され、低遅延かつ高安定な通信が実現されます。 - 追加技術の導入
- Multi‑RU(複数リソースユニット)
複数のリソースユニットを同時に利用し、帯域の柔軟な配分と効率的な通信を実現します。 - EHT(Extremely High Throughput)
超高速通信に向けた最適化技術で、特に大容量データ送受信や低遅延を必要とするユースケースでその強みが発揮されます。 - 低遅延・高スループット
オンラインゲーム、VR、4K/8Kストリーミングなど、高帯域かつ低遅延な通信が求められるシーンで、Wi‑Fi 7の技術が大きなメリットを発揮します。
Wi‑Fi 6 と Wi‑Fi 7 の技術比較
下記の表は、両規格の主要な仕様上の違いをまとめたものです。なお、実際の製品や環境によっては測定値に差が出る可能性があるため、あくまで目安となります。
仕様項目 | Wi‑Fi 6 (IEEE 802.11ax) | Wi‑Fi 7 (IEEE 802.11be, 次世代) |
---|---|---|
チャネル幅 | 最大160MHz(Wi‑Fi 6Eで6GHz帯も利用可能) | 最大320MHz |
変調方式 | 最大1024‑QAM | 正式に4096‑QAMが採用 |
マルチリンクオペレーション | 非対応または限定的 | MLOにより複数帯同時利用で低遅延・高安定性 |
追加技術 | ― | Multi‑RU、EHT導入によりさらに効率的 |
理論上の最大スループット | 約9.6Gbps程度 | 理論上30Gbps以上が期待される |
対応周波数帯 | 2.4GHz / 5GHz(Wi‑Fi 6Eで6GHzを追加) | 2.4GHz、5GHz、6GHz |
対応機器と市場動向
Wi‑Fi 6 対応機器
- ルーター・アクセスポイント
ASUS、TP‑Link、Netgear、Ciscoなどの主要メーカーから、Wi‑Fi 6対応のルーターやアクセスポイントが既に多数発売され、幅広いユーザーに支持されています。 - スマートフォン・パソコン
最新のスマートフォン、ノートPC、タブレットはWi‑Fi 6対応で、混雑環境下でも安定した通信を維持できる点が評価されています。
Wi‑Fi 7 対応機器
- 市場投入の現状
Wi‑Fi 7(IEEE 802.11be)は、2024年1月8日にWi-Fi Allianceが「Wi-Fi Certified 7」プログラムを開始し、正式に認証が始まりました。これに伴い、ASUS(ROG Rapture GT-BE98)、Netgear(Nighthawk RS700)などのWi-Fi 7対応ルーターが2024年初頭に発売されました。
さらに、2024年2月にはバッファローの「WXR18000BE10P」も登場し、市場での選択肢が広がっています。
2025年3月現在、iPhone 16シリーズやPixel 9シリーズなど、多くの最新スマートフォンやパソコンがWi-Fi 7に対応しており、企業向け製品も続々と発表されています。業務用無線LANアクセスポイント「ACERA EW770」や産業向け組み込みモジュール「SX-PCEBE」など、Wi-Fi 7の普及が進んでいます。 - 高負荷環境でのメリット
オンラインゲーム、4K/8Kストリーミング、VRといった高帯域・低遅延が求められるシーンで、Wi‑Fi 7の技術が大きなメリットとなるのは間違いありません。
まとめ
Wi‑Fi 6は既に多くの機器で採用され、混雑した環境下でも安定した通信を提供している信頼のある規格です。一方、Wi‑Fi 7は320MHzチャネル、4096‑QAM、MLOに加え、Multi‑RUやEHTといった先進技術の導入により、さらに高速かつ低遅延な通信を実現します。2024年の正式規格化および対応製品の増加によって、次世代ネットワーク環境への移行が加速することが期待されます。各ユーザーは自身の利用環境や通信要求に応じて、適切な規格と製品を選定することが重要です。
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