「今回の計画には、現場の意見を加味してあります」
ビジネスシーンで耳にすることの多い「加味(かみ)」という言葉。なんとなく「プラスする」という意味で使っている方が多いのではないでしょうか。
結論から言うと、加味とは「ある物事に、別の要素を付け加えて判断すること」を指します。単に足し算するのではなく、「より良い判断や結果を出すために、スパイスを加える」というニュアンスが含まれているのがポイントです。
この記事では、元々薬の調合から来ている「加味」の本来の意味から、ビジネスでの正しい使い方、間違いやすい「考慮」との違いまでを分かりやすく解説します。
「加味(かみ)」の本来の意味と由来
「加味」という言葉を辞書で引くと、大きく分けて二つの意味が出てきます。一つは料理や薬に関する物理的な意味、もう一つは私たちがビジネスでよく使う抽象的な意味です。
もともとの語源は、漢方医学などの「薬の調合」にあります。ある基本的な処方に、特定の症状に効く別の生薬(薬草など)を加えることを「加味」と呼んでいました。例えば、「〇〇湯」という基本の薬に、別の成分を足して「加味〇〇湯」と名付けるケースなどがこれに当たります。
ここから転じて、料理において調味料を加えて味を整えること、そして現在一般的によく使われている「ある事柄に、別の要素を付け加えること」という意味で定着しました。
ビジネスシーンで使う際は、単に「追加する(Add)」という意味だけではありません。「メインとなる計画や意見があり、それをより良くするため、あるいはリスクを回避するために、別の視点や事情を含めて判断する」という、判断・決定のための調整という意味合いが強く含まれています。
ビジネスシーンですぐ使える「加味」の例文5選
「加味」は、何かを決定するプロセスにおいて、補足的な要素を取り入れる際によく使われます。ここでは、具体的ですぐに使える例文を5つ紹介しましょう。状況をイメージしながら読んでみてください。
1. 予算やコストの調整をする場面
「資材高騰のリスクを加味して、来期の予算を少し多めに見積もっておきましょう」
(解説:基本の予算案に対し、リスクという要素を足して最終決定をするパターンです。)
2. スケジュール管理の場面
「渋滞の可能性を加味すると、出発時間を30分早めたほうが安全です」
(解説:移動時間という基本要素に、不確定要素を加えて判断しています。)
3. 人事評価やフィードバックの場面
「営業成績だけでなく、チームへの貢献度も加味して評価を決定します」
(解説:数字というメインの指標に、定性的な要素をプラスする使い方です。)
4. 商品開発やマーケティングの場面
「ユーザーアンケートの結果を加味して、新機能の実装を検討します」
(解説:開発計画というベースに、顧客の声というスパイスを加えるイメージです。)
5. 日程調整の場面
「遠方からの参加者がいることを加味して、開始時間を午後からに設定しました」
(解説:参加者の事情という要素を取り入れて、決定を下しています。)
このように、何かベースとなるものがあり、そこに「事情・条件・意見」などをトッピングして、最終的な結論を整える際に使うと非常に自然な日本語になります。
どっちが正解?「加味」と「考慮」の違い
「加味する」と似た言葉に「考慮(こうりょ)する」があります。どちらも「考える」という意味合いで使われますが、この二つには明確なニュアンスの違いが存在します。
最大の違いは、「付け加える」のか「その中で考える」のかという点です。「加味」は「Aという案にBという要素を足す」という足し算のイメージです。一方、「考慮」は「判断材料の一つとして、その要素を含めてよく考える」という、より包括的な思考プロセスを指します。
違いを分かりやすく整理するために、以下の比較表を作成しました。使い分けに迷った際の参考にしてください。
| 言葉 | 中心となる意味 | イメージ・ニュアンス |
|---|---|---|
| 加味 | 付け加える | 料理にスパイスを足すように、メインの案に特定の要素をプラスして調整する。 |
| 考慮 | 考えに入れる | 判断を下す前に、色々な事情や条件を頭の中でよく検討する。 |
例えば、「電車の遅延を考慮して家を出る」は、「遅延するかもしれない」という可能性を含めて思考し行動することを指します。一方、「基本給に手当を加味する」と言うと、基本給に物理的に金額が上乗せされるイメージが強くなります。
文脈によってはどちらを使っても通じる場合が多いですが、「具体的に何かをプラスして結果を変える」場合は「加味」、「判断材料として頭に入れておく」場合は「考慮」を選ぶと、よりスマートな表現になるでしょう。
言い換えで表現力アップ!「加味」の類語・類義語
ビジネス文書やメールで「加味」ばかり繰り返してしまうと、文章が単調になってしまいます。相手やシチュエーションに合わせて類語を使い分けることで、より洗練された印象を与えることができます。
1. 勘案(かんあん)
公的な文書や、少し堅いビジネスシーンでよく使われる言葉です。「あれこれと考え合わせること」を意味します。「諸事情を勘案し、決定いたしました」のように、複数の要素を総合的に判断したニュアンスを出したい時に便利です。
2. 斟酌(しんしゃく)
相手の事情や心情をくみ取る、という意味合いが強い言葉です。「情状酌量」に近いニュアンスがあります。「加味」が条件や事実を足すのに対し、「斟酌」は相手の気持ちや裏側の事情に配慮する場合に使います。「ご事情を斟酌して、今回は見送ります」といった使い方が一般的です。
3. 織り込み済み(おりこみずみ)
計画の中にすでにその要素が含まれている状態を指します。「加味」がこれから加える動作であるのに対し、「織り込み済み」はすでに計算に入っている状態です。「リスクはすでに株価に織り込み済みだ」のように、金融や経済のニュースでもよく耳にします。
4. 踏まえる(ふまえる)
「前提とする」「根拠とする」という意味です。「アンケート結果を踏まえて」と言えば、「アンケート結果を土台にして」という意味になります。「加味」よりも土台としての重要度が高い場合に使われます。
このように、単に「考える」だけでなく、どの程度の重みを持たせるかによって言葉を選ぶことが、デキるビジネスパーソンのライティングテクニックと言えます。
英語で「加味する」はどう伝える?
グローバルなビジネスシーンにおいて、「加味する」を直訳して「Add(加える)」だけで表現してしまうと、意図が十分に伝わらないことがあります。「Add」は物理的に数を増やす意味合いが強いため、判断材料に加えるというニュアンスには不十分な場合があるからです。
ビジネス英語として「事情を加味する」「要因を考慮に入れる」と言いたい場合は、以下の表現が適しています。
1. Take into account / Take into consideration
最も一般的で使いやすい表現です。「計算に入れる」「考慮に入れる」という意味で、日本語の「加味する」のニュアンスに非常に近いです。
- We need to take inflation into account.(インフレを加味する必要があります。)
2. Factor in
「要因(Factor)」として中に組み込む、という表現です。予算やスケジュールなどの計算に要素を含める場合によく使われます。
- Did you factor in the travel time?(移動時間は加味しましたか?/計算に入れましたか?)
3. Allow for
余裕を持たせる、見込んでおく、という意味合いで使われます。予備日や予備費などを加味する場合にぴったりです。
- Please allow for traffic delays.(渋滞の遅れを加味しておいてください。)
英語でのコミュニケーションでも、単に「足す」だけでなく、「計算に入れる」「要因として組み込む」という動詞を選ぶことで、よりプロフェッショナルな印象を与えることができます。
まとめ
今回は「加味」という言葉について、本来の意味からビジネスでの活用法まで詳しく解説してきました。
ポイントを整理すると以下のようになります。
- 意味: ある事柄に別の要素を付け加えて、判断や評価を行うこと。
- イメージ: 料理の味付けや薬の調合のように、メインのものに「スパイス」を加える。
- 使い分け: 具体的な要素を足すなら「加味」、思考のプロセス全体なら「考慮」、複数の事情を総合するなら「勘案」。
「加味」は、あなたの計画や判断が、一面的なものではなく、多角的な視点を持っていることをアピールできる便利な言葉です。
「現場の声を加味する」「リスクを加味する」といった表現を適切に使いこなすことで、周囲への配慮が行き届いた、説得力のあるコミュニケーションが可能になります。ぜひ明日のメールや会話で意識して使ってみてください。

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