「愛でる」という言葉、小説や歌詞などで見かけるけれど、いざ声に出して読もうとすると迷ってしまうことはありませんか？
「あいでる？それとも……」と不安になる前に、ここで正解をはっきりさせておきましょう。
結論から言うと、「愛でる」の正しい読み方は「めでる」です。
「愛」という漢字を使いますが、「あいでる」とは読みません。また、なんとなく雰囲気で「まなでる」と読んでしまう方もいますが、これも誤りです。
この記事では、言葉のプロであるWebライターが、「愛でる」の正しい読み方や意味はもちろん、似ている言葉である「愛する」との違いまで、分かりやすく解説します。
日本語特有の美しいニュアンスを理解して、大人の語彙力を身につけましょう。
「愛でる」の正しい読み方は「めでる」
冒頭でもお伝えした通り、「愛でる」は「めでる」と読みます。
「愛」という漢字は音読みで「アイ」、訓読みで「いと（しい）」と読むのが一般的ですが、常用外の読み方として「め（でる）」という読み方が存在します。
パソコンやスマホの変換機能で「めでる」と入力すれば、一発で「愛でる」と変換されるはずです。
「まなでる」という読み方は存在しない
よくある間違いとして「まなでる」という読み方が挙げられます。
これはおそらく、「愛娘（まなむすめ）」や「愛弟子（まなでし）」のように、「愛」を「まな」と読む言葉があるため、混同してしまったのでしょう。
しかし、日本語に「まなでる」という動詞は存在しません。「愛でる」と書いてあったら、自信を持って「めでる」と読んでくださいね。
「愛でる」が持つ2つの主要な意味
読み方がわかったところで、次は言葉の意味を深く理解していきましょう。
「愛でる」には、大きく分けて2つのニュアンスが含まれています。単に「好き」という感情だけでなく、対象をどのように扱うかという行動や態度が含まれるのが特徴です。
美しさや風情に感心し、味わうこと
一つ目は、景色や芸術作品などを見て「美しいなあ」「素晴らしいなあ」と感動し、その風情を味わうことです。
古くは「月を愛でる（月見をする）」「花を愛でる（花見をする）」といったように、自然の美しさを賞賛する際によく使われてきました。
現代でも、絵画や骨董品、あるいは推しのフィギュアなどを眺めてうっとりするような場面で使われます。
かわいがって大切にすること
二つ目は、小さいものや弱いものを慈しみ、大切に扱うという意味です。
小さな子供やペットを優しく撫でたり、世話を焼いたりする様子を指します。「猫を愛でる」と言えば、ただ猫を見ているだけでなく、撫でたり抱っこしたりして可愛がっている情景が浮かびますね。
「愛でる」と「愛する」の違いとは？
「愛」という字を使うため、「愛する（あいする）」と同じ意味だと思われがちですが、実は微妙なニュアンスの違いがあります。
この違いを理解すると、より適切な場面で言葉を使い分けられるようになりますよ。分かりやすく比較表にまとめました。
| 項目 | 愛でる（めでる） | 愛する（あいする） |
|---|---|---|
| 主な対象 | 自然、動物、物、子供、年下 | 人、家族、恋人、国家、概念 |
| ニュアンス | 美しさを称賛する、可愛がる | 心から大切に思う、熱烈に慕う |
| 距離感 | 一歩引いて眺める、愛玩する | 精神的な深い繋がり、一体感 |
| 行動の例 | 月を眺める、猫を撫でる | 人生を共にする、犠牲を払う |
表を見るとわかるように、「愛する」が相手との深い精神的な繋がりや情熱を含んでいるのに対し、「愛でる」は対象を「鑑賞する」「可愛がる」といった、やや客観的あるいは一方的な愛情表現に近いと言えます。
たとえば、恋人に対して「君を愛でたい」と言うと、少し「ペット扱い」や「鑑賞物扱い」をしているような響きになるため、使う場面には注意が必要です。
すぐに使える「愛でる」の例文
日常生活や文章作成で自然に使えるよう、具体的な例文をいくつか紹介します。
文脈によって「称賛」なのか「愛玩（かわいがる）」なのかが変わる点に注目してみてください。
自然や物を対象にする場合（称賛・鑑賞）
- 秋の夜長に、美しい満月を愛でる。
- 祖父は縁側で盆栽を愛でるのが日課だ。
- 美術館で名画を愛でる時間は、私にとって至福のひとときだ。
生き物を対象にする場合（慈しみ・愛玩）
- 子猫の柔らかな毛並みを愛でる。
- 久しぶりに会った孫を、目に入れても痛くないほど愛でる。
- 飼い主が愛犬を愛でる姿は、見ているこちらまで温かい気持ちになる。
「愛でる」の言い換え・類語表現
場面によっては、「愛でる」以外の言葉を使ったほうが適切な場合もあります。
語彙の幅を広げるために、いくつか類語を押さえておきましょう。
慈しむ（いつくしむ）
「愛でる」よりも、さらに深く「大切にする」「かわいがる」という意味合いが強い言葉です。特に、自分より弱いものや下の立場のものに対して、愛情を持って守り育てるというニュアンスが含まれます。
例：我が子を慈しんで育てる。
賞賛する（しょうさんする）
「愛でる」の「美しさに感心する」という意味を、より硬い表現にしたものです。素晴らしい成果や作品をほめたたえる時に使います。
例：彼の勇気ある行動を賞賛する。
鑑賞する（かんしょうする）
芸術作品や自然などを、味わいながら見ることを指します。「愛でる」から感情的な「かわいがる」要素を抜き、視覚的な楽しみにフォーカスした言葉です。
例：クラシック音楽を鑑賞する。
「視聴」と「鑑賞」の違いをわかりやすく解説｜意味・使い分け・類似表現
まとめ
今回は、「愛でる」という言葉の正しい読み方や意味について解説しました。
最後にポイントを振り返りましょう。
- 読み方は「あいでる」「まなでる」ではなく「めでる」が正解。
- 意味は大きく分けて「美しさに感心・感動する」と「かわいがり大切にする」の2つ。
- 「愛する」よりも、対象を眺めたり愛玩したりするニュアンスが強い。
「愛でる」は、日本の四季や美意識、そして優しさが詰まったとても美しい日本語です。
「桜を愛でる」「ペットを愛でる」など、日常のふとした瞬間にこの言葉を思い出して、心の中で使ってみてください。きっと、普段の景色が少しだけ豊かに感じられるはずですよ。
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