「高級ミニバンのヴェルファイアが、中古車だとなぜか安い」。そう感じたことはありませんか?
確かに、最上級ミニバンとして君臨するヴェルファイアですが、中古車市場を見ると、兄弟車であるアルファードに比べてお買い得な価格設定になっている個体が多いのは事実です。
その主な理由は、ズバリ「アルファードとの人気格差」と「流通台数の多さ」にあります。決して「壊れやすいから安い」わけではありません。
この記事では、ヴェルファイアの中古車が安い理由を深掘りしつつ、後悔しないための賢い選び方まで、分かりやすく解説します。
ヴェルファイアの中古車が安い「4つの理由」
ヴェルファイアの中古車価格が比較的リーズナブルな設定になっている背景には、いくつかの明確な理由があります。安さの秘密を紐解いていきましょう。
理由1:兄弟車アルファードとの「人気格差」
ヴェルファイアの中古車価格を語る上で、兄弟車「アルファード」の存在は欠かせません。
新車販売時から、アルファードは「王道・高級感」、ヴェルファイアは「迫力・個性」といったイメージで棲み分けがされてきました。しかし、特に30系後期モデル以降、アルファードの「オラオラ顔」がヴェルファイアの個性を上回るほどの人気を獲得します。
結果として、中古車市場でも「アルファードが欲しい」という指名買い層が厚くなり、需要が集中。需要と供給のバランスで、アルファードの価格が高騰し、相対的にヴェルファイアの価格が安く(というより、適正価格に)落ち着いているのです。
最新の40系ではヴェルファイアに専用の2.4Lガソリンターボエンジンが設定される(Z Premier)など、アルファードとは異なるスポーティな味付けで明確な差別化が図られました。中古市場の主役である30系以前では、この人気格差が価格に直結している状況です。
理由2:新車価格の高さとリセールバリュー
ヴェルファイアは、新車価格が非常に高額な車種です。オプションを含めると、乗り出し価格が500万円を超えることも珍しくありません。
高額な新車が中古車になると、当然ながら「値下がり額」も大きくなります。例えば、500万円の車が3年後に350万円になった場合、150万円も値下がりしていますが、残価率は70%と高水準です。
ヴェルファイアはリセールバリュー(再販価値)が非常に高い車種として有名ですが、それはあくまで「他の車種に比べて」の話。新車価格が高い分、中古車として購入する側から見れば「安くなった」と感じる価格帯まで下がってくるのです。
特に、アルファードに人気が集中している今、ヴェルファイアのリセールは以前ほどの「異常な高さ」がなくなり、購入しやすい価格帯に落ち着いてきたと言えます。
理由3:モデルチェンジによる旧型の価格下落
これはヴェルファイアに限った話ではありませんが、自動車はモデルチェンジが行われると、旧型モデルの価格は下落する傾向にあります。
2023年に新型の40系が登場したことで、中古車市場のメインであった30系(2015年〜2023年)の価格も、徐々に下落傾向に入りました。特に、30系前期モデルは、後期モデル(2018年〜)とのデザインの違いもあり、価格がこなれてきています。
また、その前の20系(2008年〜2015年)は、10年落ちを超える個体も増えてきたため、さらに安価な価格帯で流通しています。
新型が出ると、旧型を下取りに出して乗り換える人が増えるため、中古車市場での供給(タマ数)が増えることも、価格が安くなる要因の一つです。
理由4:流通台数の多さ(供給過多)
ヴェルファイアは、アルファードと並んで「日本で最も売れた高級ミニバン」の一つです。新車販売台数が多かったということは、そのまま中古車市場での流通台数が多いことを意味します。
中古車市場において、需要(買いたい人)に対して供給(売りたい車)が多ければ、価格は自然と下がります。
特にヴェルファイアは、法人需要やレンタカー、さらにはインバウンド需要(現在は減少)などでも大量に導入されてきました。これらの車両が中古車市場に放出されると、一時的に供給過多となり、価格が下落することがあります。
購入者にとっては、多くの選択肢から選べるというメリットでもあるのです。
安い=悪い?ヴェルファイア中古車の魅力
「安い」と聞くと、「何か問題があるのでは?」と不安になるかもしれませんが、前述の通り、ヴェルファイアの安さは市場原理によるものが大きいです。むしろ、その安さこそが最大の魅力と言えるかもしれません。
魅力1:迫力満点のデザインと高級感
ヴェルファイアの最大の魅力は、やはりそのアグレッシブで迫力のあるエクステリアデザインでしょう。特に30系後期のエアロボディは、2段ヘッドライトと巨大なメッキグリルが特徴的で、アルファードとは異なる「強さ」を感じさせます。
インテリアも、広々とした空間に上質な素材が使われており、国産車トップクラスの高級感を味わうことができます。特に上位グレードの「エグゼクティブラウンジ」のセカンドシートは、飛行機のビジネスクラスのような快適さ。これが中古車価格で手に入るのは大きな魅力です。
魅力2:アルファードより「狙い目」という圧倒的コスパ
性能や装備はアルファードとほとんど同じ。それなのに、中古車価格はヴェルファイアの方が数十万円安い。
これは、コストパフォーマンスを重視する賢い消費者にとって、最大のメリットではないでしょうか。「アルファードじゃないと嫌だ」という強いこだわりがなければ、ヴェルファイアは非常にお買い得な選択肢です。
浮いた予算で、上位グレードを狙ったり、スタッドレスタイヤやコーティングなどのオプションに回したりすることもできます。
デザインの好みは人それぞれですが、「ヴェルファイアのデザインも好き」という方にとっては、まさに「狙い目」の車だと言えます。
アルファードとヴェルファイアどっちが買い?価格・維持費・リセールまで徹底比較
「安い」にはワケがある!注意すべき中古車の見極め方
市場原理で安くなっているとはいえ、中古車は「一点モノ」。中には、本当に状態が悪くて安い「訳あり物件」も紛れ込んでいます。後悔しないために、最低限のチェックポイントを押さえておきましょう。
走行距離と年式のバランスは大丈夫?
中古車の基本ですが、年式に対して走行距離が多すぎないか(過走行)、逆に少なすぎないか(放置車両のリスク)は重要です。
一般的に、乗用車の年間走行距離は1万km前後が目安とされます。例えば、5年落ち(2020年式)なのに走行距離が10万kmを超えている車は、主に高速道路を長距離移動するような(例:法人の送迎など)使われ方をしていた可能性が高いです。高速走行メインであればエンジンは好調な場合も多いですが、足回りやブッシュ類の消耗は進んでいる可能性があります。
逆に、5年落ちで1万kmしか走っていない車は魅力的ですが、バッテリー上がりやオイルが長期間交換されていないリスクも考えられます。整備記録簿(メンテナンスノート)で、定期的に点検やオイル交換が行われていたかを確認することが大切です。
修復歴(事故歴)と水没車は絶対に避ける
価格が相場より極端に安い場合、最も警戒すべきは「修復歴車」と「水没車」です。
修復歴車とは、車の骨格(フレーム)部分を修理・交換した車のこと。骨格にダメージが及ぶほどの事故を起こしているため、後々まっすぐ走らない、雨漏りがするなどの不具合が出るリスクが非常に高いです。
水没車は、台風やゲリラ豪雨などで冠水した車。電気系統が広範囲にわたってダメージを受けている可能性があり、購入後にエンジンが突然止まったり、電装品が一切動かなくなったりする危険性があります。修復歴と違って表示義務がない場合もあるため、シート下のサビや、車内の異様なカビ臭さ・芳香剤の匂いには注意が必要です。
これらの車は、安物買いの銭失いになる典型です。必ず信頼できる販売店で「修復歴なし」の個体を選びましょう。
要注意!ヴェルファイアの「故障しやすいポイント」
ヴェルファイアは全体的に非常に頑丈な車ですが、その構造上、年式が古くなると不具合が出やすい「ウィークポイント」も存在します。
①パワースライドドアの不具合
大型で重たいスライドドアを電動で動かしているため、モーターやワイヤー、レール部分に負担がかかりやすいです。特に20系では定番の故障箇所でした。30系では改善されていますが、中古車を購入する際は、必ず両側のスライドドアがスムーズに開閉するか、異音はしないかを最低5回は連続で試してみましょう。修理すると10万円以上かかることもあります。
②電装系のトラブル
高級ミニバンゆえに、ナビ、エアコン、電動シート、イルミネーションなど、電装品が満載です。年式が古くなると、これらの接触不良や基盤の故障が起きる可能性があります。特にサンルーフ装着車は、雨漏りからの電装系トラブルにも注意が必要です。内張りにシミがないかも確認しましょう。
③足回りからの異音(特に20系)
2トンを超える車重を支えているため、10万km近くになると、サスペンションやアッパーマウントといった足回りの部品が消耗し、「コトコト」「ギシギシ」といった異音が出ることがあります。試乗させてもらい、段差を乗り越えた時のフィーリングを確認できるとベストです。
ヴェルファイア中古車選びで後悔しないためのQ&A
最後に、ヴェルファイアの中古車を検討する際によくある疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1. 「ヤンキーイメージ」が気になります…実際は?
一時期、ヴェルファイアはその迫力あるデザインから「ヤンキー御用達」などと言われることもありました。確かに、派手なカスタムを施した車両が目立つこともあったのは事実です。
しかし、実際のオーナー層は、ファミリー層や法人の役員送迎用が圧倒的多数です。広大な室内空間と快適な乗り心地、そして高い安全性(特に30系後期以降のトヨタセーフティセンス)は、家族を持つ方や大事なゲストをもてなす上で、何物にも代えがたい価値があります。
最近ではアルファードの方がより「オラオラ顔」と認識されており、むしろヴェルファイアの方が落ち着いて見える、という声も。ノーマルで上品に乗れば、イメージを気にする必要は全くないでしょう。
Q2. 残クレ(残価設定ローン)は「やばい」って本当?
中古車販売店で「残クレ」を勧められることも多いかもしれません。残クレは、数年後の下取り価格(残価)をあらかじめ設定し、車両本体価格からその残価を差し引いた金額を分割で支払うローン方式です。
月々の支払いが安くなるメリットがありますが、「やばい」と言われるのには理由があります。
- 走行距離に制限があり、超えるとペナルティ(追加料金)が発生する。
- 契約終了時に車を返却するか、残価を一括で支払って買い取るか選ぶ必要がある。
- 事故や傷で車の価値が下がると、返却時に追加の精算金(追い金)が必要になる。
- 金利が残価部分にもかかるため、総支払額は通常のローンより高くなるケースが多い。
特に中古車の場合、残価の設定が難しく、リスクが高まる可能性があります。「月々が安いから」という理由だけで飛びつかず、総支払額や契約条件をしっかり理解した上で利用を検討しましょう。
残クレ(残価設定ローン)とは?仕組みやメリット・デメリット・注意点を解説【お得に利用するコツも】
Q3. 狙い目のモデルやグレードは?
価格と満足度のバランスで考えると、以下のモデルがおすすめです。
おすすめ1:30系 前期型(2015年〜2017年)
後期型が登場したことで、価格がかなりこなれてきました。特に「Z Gエディション」は、快適装備と高級感が揃っており、コスパが高いです。前期型でも安全装備(トヨタセーフティセンスP)は搭載されていますが、後期型に比べると機能が限定的です。デザインが気に入れば、最もお買い得な選択肢と言えます。
おすすめ2:20系 後期型(2011年〜2015年)
予算を100万円台〜200万円前半に抑えたいなら、20系の後期型が狙い目です。最終モデルから10年近く経過していますが、デザインの完成度は高く、古臭さを感じさせません。ただし、走行距離が10万km前後の個体が多くなるため、前述のパワースライドドアや足回りの状態はしっかり確認する必要があります。
プレミアがつくのは?:30系 後期「エグゼクティブラウンジ」
逆に、リセールを期待したり、最高の満足感を求めたりするなら、30系後期の最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」です。新車価格は700万円を超えますが、中古車市場でも非常に人気が高く、価格は高値で安定しています。アルファードに比べて安価とはいえ、他のグレードとは一線を画す価格帯です。
まとめ:安い理由を理解し、賢くヴェルファイアオーナーになろう
ヴェルファイアの中古車が安いのは、壊れやすいからではなく、アルファードとの人気差や流通量の多さといった、中古車市場の「需要と供給のバランス」によるものです。
この事実を理解していれば、ヴェルファイアは「アルファードとほぼ同じ性能の高級ミニバンを、より安く手に入れられる」という、非常に賢い選択肢であることが分かります。
ただし、安い個体には「修復歴」や「過走行」といったリスクが隠れている可能性もゼロではありません。
この記事で紹介したチェックポイントを参考に、信頼できる販売店で状態の良い個体を見極め、ぜひお得にヴェルファイアオーナーの仲間入りを果たしてください。

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