「かぜがなおる」「パソコンがなおる」、どちらも同じ「なおる」という言葉ですが、漢字で書くと「治る」と「直る」の2種類があります。
会話では気にならなくても、メールや文章で書くときに「どっちの漢字が正しいんだっけ?」と迷った経験はありませんか?
この記事では、「治る」と「直る」の明確な意味の違いや使い分けのポイントを、豊富な例文とともに分かりやすく解説します。
「治る」と「直る」の基本的な意味の違い
まずは、2つの言葉が持つ基本的な意味の違いをざっくりと押さえておきましょう。
一言でいうと、対象が「生き物」か「モノ・事柄」かで見分けることができます。
- 治る:病気やケガなど、体に関する悪い状態が回復すること。
- 直る:故障や間違いなど、モノや事柄が本来あるべき正しい状態に戻ること。
このように、体の不調が良くなる場合は「治る」、モノの故障や間違いが正される場合は「直る」と覚えるのが基本です。次の章から、それぞれの具体的な使い方を詳しく見ていきましょう。
「治る」の具体的な使い方と例文
「治る」は、主に人や動物など、生き物の体に関する不調が良くなる場合に使われる漢字です。
病気やケガが回復するとき
「治る」の最も代表的な使い方が、病気やケガからの回復です。風邪をひいたり、ケガをしたりした状態から、健康な状態に戻ることを指します。
この漢字の部首である「さんずい(氵)」は、もともと汗や涙、洗い清めることなどを意味しており、病気が汗などとともに出ていって回復するイメージと結びついています。
【例文】
- なかなか咳が止まらなかったけど、ようやく風邪が治ったようだ。
- 医者さんから「骨折は順調に治っています」と言われて安心した。
- この薬を飲めば、つらい症状もきっと治るでしょう。
- 愛犬の病気がすっかり治り、元気に走り回っている。
「直る」の具体的な使い方と例文
一方、「直る」は非常に幅広く使われる言葉で、モノや物事が正常な状態・正しい状態に戻ることを意味します。
モノの故障が修理されるとき
最も分かりやすいのが、機械や道具などのモノが壊れた状態から、再び使えるようになるケースです。物理的な修理によって、機能が回復した際に使います。
【例文】
- 修理に出していたスマートフォンが、きれいに直って返ってきた。
- 叩いたらテレビが直ったなんて、昔の話だよね。
- エアコンの調子が悪かったけれど、フィルターを掃除したら直った。
- この時計は古いものだから、もう直らないかもしれない。
間違いや欠点が改善されるとき
「直る」は物理的なモノだけでなく、間違いや悪いクセ、機嫌といった抽象的な事柄が改善されるときにも使われます。
例えば、文章の間違いが訂正されたり、人の短所が改善されたりする場合です。また、「機嫌が直る」のように、人の気持ちが好転する際にも使われるのが特徴的です。
【例文】
- 先生に指摘された文章の誤字が、きれいに直っていた。
- 子供の頃からの寝坊癖が、社会人になってようやく直った。
- 彼の頑固な性格は、なかなか直らないだろう。
- さっきまで怒っていたのに、もう機嫌が直ったの?
迷ったときの簡単な見分け方【比較表】
「治る」と「直る」の使い分けに迷ったときは、以下の比較表を参考にしてみてください。何が「なおる」のか、その対象に注目するのがポイントです。
漢字 | 対象 | 意味 | 例文 |
---|---|---|---|
治る | 人や動物の体 | 病気やケガなどが回復する | 風邪が治る、傷が治る |
直る | モノ、機械、道具 | 故障などが修理されて元に戻る | パソコンが直る、時計が直る |
直る | 間違い、クセ、性格、機嫌など | 誤りが正されたり、悪い点が改善されたりする | 誤字が直る、クセが直る、機嫌が直る |
基本的には「体のことなら『治る』、それ以外は『直る』」と覚えておけば、日常的な場面で間違うことは少なくなるでしょう。
「治す」と「直す」の違いも知っておこう
「なおる」とよく似た言葉に、動詞の「なおす」があります。こちらも「治す」と「直す」の2つの漢字があり、意味の使い分けは「なおる」の場合と全く同じです。
- 治す(なおす):医者が病気を治す、自分で風邪を治す。
- 直す(なおす):壊れたPCを直す、文章の間違いを直す。
「〜が治る/直る」は自然に状態が良くなることを指すのに対し、「〜を治す/直す」は誰かが意図的に働きかけて良くする場合に使う、と覚えておくと分かりやすいです。
まとめ
「治る」と「直る」の違いについて解説しました。ポイントを簡単におさらいしましょう。
- 治る:病気やケガなど、体の不調が良くなるときに使う。
- 直る:モノの故障や間違い、悪いクセなど、本来の正しい状態に戻るときに使う。
この2つの漢字の違いは、対象が「体」か「それ以外」かで判断できます。
普段何気なく使っている言葉でも、漢字の意味を知ることで、より正確に意図を伝えられるようになります。文章を書く際に迷ったら、ぜひこの記事を思い出してみてくださいね。
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