
アメリカ農務省(USDA)がオオスズメバチを根絶したと発表:政府と地域社会の協力が実った歴史的快挙
アメリカのワシントン州で2019年末に初めて確認され、以後「侵略的外来種」として警戒されてきたオオスズメバチ(アジアンスズメバチ)が、3年以上にわたる徹底的な駆除活動の末、ついに根絶されたことが公的に宣言されました。2024年12月18日に行われたワシントン州農務省(WSDA)と米国農務省(USDA)の合同記者会見で正式に報告されたこの成功は、米国内の養蜂業や生態系を脅かしてきた外来昆虫への対策としては画期的な一歩となります。
オオスズメバチとは
オオスズメバチは学名をVespa mandariniaといい、日本を含む東アジア地域に生息する世界最大級のスズメバチです。その強力な毒針に加え、わずか90分ほどでミツバチの巣を全滅させる攻撃性から、在来の蜜源や花粉媒介者を守るうえで重大な脅威とされてきました。とりわけアメリカのミツバチ産業では受粉サービスを担う養蜂事業が農作物の生産を支えており、この外来種が定着すれば農業への影響は計り知れないと懸念されてきたのです。
侵入から根絶までの道のり
初確認と脅威の広がり
- 2019年12月:ワシントン州で初めてオオスズメバチが目撃される。
- その後、州および連邦政府機関はただちに対策を開始し、地域住民に対しても通報を呼びかけました。
追跡と駆除作戦
- 2020年:WSDAは捕獲した個体に小型発信器を取り付けて巣の場所を割り出すというユニークな方法を実施。これにより同州ワットコム郡で1つの巣が発見・駆除されました。
- 2021年:さらに8月から9月にかけて3つの巣を見つけ出し、すべてハンノキの樹洞に営巣していたオオスズメバチを駆除。
- その後〜2024年:WSDAは続けてわなや監視カメラを使った調査や、市民からの通報情報を精査するなど、粘り強い監視体制を維持。結果的に新たな巣は確認されませんでした。
地域住民との連携
特筆すべきは、ワットコム郡をはじめとする地域住民の協力です。2020年以降に発見された巣はすべて、直接的または間接的に住民からの通報をもとに特定されました。こうした草の根レベルの協力体制は、短期間でオオスズメバチを追い詰めるうえで非常に大きな力となりました。
2024年12月の最終発表
12月18日の記者会見で、WSDAとUSDAは「2019年の初確認以来、確認・駆除された巣は計4つにのぼり、2024年までの調査の結果、新たな個体の目撃や捕獲は一件もなかった」と報告。オオスズメバチの根絶を正式に宣言しました。ただし、同年10月にキツァップ郡で疑わしい目撃情報があったものの、標本を入手できず正式な確認に至らなかったことも併せて明らかにされています。
今後も続く警戒
今回の根絶宣言は、州や連邦政府機関と地域社会が一体となって取り組んだ成果として高く評価されています。しかし、WSDAの害虫プログラムマネージャーであるスウェン・スピチガー氏は、オオスズメバチの再侵入リスクを依然として懸念。「一度侵入を許した以上、貨物や旅行者などを通じて外来種が再び持ち込まれる可能性はゼロではない。引き続き監視体制を緩めるわけにはいかない」と強調しています。
生物学的に「根絶」を宣言するには通常、より長期間の監視が必要とされます。「根絶」という表現が科学的に適切かどうかは検討の余地があります。
まとめ
- 大きな脅威とされたオオスズメバチが、3年以上にわたる大規模調査・駆除活動によってワシントン州で根絶された。
- 住民からの情報提供と発信器を活用した捜索が奏功し、4つの巣を発見・駆除。
- 今後の課題として、外来種の再侵入を防ぐため、監視を継続していく必要がある。
オオスズメバチの根絶は、侵略的外来種対策における希有な成功事例といえます。環境保全や農業被害を未然に防ぐためには、地域社会と行政が密接に連携し続けることが欠かせません。今回の「成功体験」が、他の外来生物対策においても大きな指針となることが期待されています。
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