フェルミ推定の練習に使える例題5つ【論理的に数を導く】
この記事では、フェルミ推定の練習に使える代表的な例題や、その解法ステップの例を紹介します。フェルミ推定は「大雑把な前提」と「単純な計算過程」を積み重ねることで、最終的に「オーダー(桁)を見積もる」手法です。あくまで近似を求めるものなので、細かい正確さを追求するのではなく「どのような視点や前提を置き、どう計算するか」を考えるトレーニングとして活用してみてください。
東京都内のピアノ調律師の数を推定する
問題
「東京都には何人ほどピアノ調律師がいるでしょうか?」
解法の例
- 人口と世帯数を推定する
- 東京都の人口:約1,400万人
- 1世帯あたりの人数:仮に平均2.3人(総務省統計局データを参考)
- 東京都の世帯数:約 610万世帯
- ピアノ所有率を仮定する
- 日本全体のピアノ普及率は 10~15%(ヤマハ調査より)
- 東京都では集合住宅が多く、所有率は低めと仮定し 7% を採用
- ピアノの台数:610万世帯 × 7% = 約43万台
- 1台あたりの調律頻度を仮定する
- 一般家庭は 1~2 年に 1 回、学校やプロは年 2 回以上
- 平均して 1.5 年に 1 回と仮定
- 43万台 × (1/1.5) = 約28万7000件/年
- ピアノ調律師1人が1年で扱える調律件数を仮定する
- 1日2.5件、年間 200日稼働と仮定(移動時間を考慮)
- 2.5件 × 200日 = 500件/年
- 調律師の人数を推定する
- 年間調律件数 28.7万件 ÷ 500件/年 ≈ 570人
まとめ
東京都のピアノ調律師は500~600人程度と推定される。
東京23区内のマンホールの数を推定する
問題
「東京23区にはマンホールがいくつあるでしょうか?」
解法の例
- 面積アプローチ
- 東京23区の面積:約 620 km²
- 1km² = 100万m²
- 道路延長アプローチ(より現実的な推定)
- 23区内の道路延長:約 23,000 km(国交省データ参照)
- 片側 20m 間隔に 1 つのマンホールがあると仮定
- 1km あたり (1000m / 20m) × 2(両側)= 100個
- 23,000 km × 100個/km = 230万個
- 東京都のデータと比較
- 東京都の下水道マンホール数は 約100万個(東京都下水道局)
- 上下水道以外のマンホール(電気、通信、ガス)を含めると 約200~250万個 の可能性
まとめ
東京23区内のマンホール数は200~250万個と推定される。
平均的な日本人の頭髪の本数を推定する
問題
「平均的な日本人の頭髪の本数はどのくらいでしょうか?」
解法の例
- 頭の表面積を仮定する
- 平均的な頭の表面積:250~400 cm²
- 毛髪の密度を考慮
- 日本人の平均毛髪密度は 1cm²あたり 150~200本(皮膚科学の研究データ)
- 計算
- 250~400 cm² × 150~200本/cm² = 3.75万~8万本
- よく言われる「10万本」説は最大値寄りの推定
まとめ
日本人の頭髪は8万~10万本程度が妥当な推定値。
一生のうちに撮影するスマホ写真の枚数を推定する
問題
「スマホで一生のうちに撮影する写真の枚数はどのくらいでしょうか?」
解法の例
- スマホの使用期間
- 20~75歳まで 55年間 と仮定
- 1日の撮影枚数を見直す
- 一般ユーザー:1日 10~15枚(SNS時代の影響)
- シニア層はやや少ないと仮定し、平均 8枚/日
- 年間撮影枚数
- 8枚/日 × 365日 = 2,920枚/年
- 一生の総数
- 2,920枚 × 55年 = 約16万枚
まとめ
一生のスマホ写真枚数は15万~20万枚が妥当な推定値。
世界で1日に生まれる赤ちゃんの数を推定する
問題
「世界で1日に生まれる赤ちゃんは何人くらいいるでしょうか?」
解法の例
- 世界の年間出生数を最新データで確認
- 2023年の世界年間出生数:約1.3億人(国連データ)
- 1日あたりの出生数に換算
- 1.3億 ÷ 365 ≈ 35.6万人/日
- 人口減少の影響
- 近年、出生数は 減少傾向 にあるため、今後は 30万~35万人/日 に減る可能性
まとめ
- 現在の推定値は35~36万人/日
- 将来的には30万人台前半まで減る可能性あり
フェルミ推定のポイント
- あくまで「桁」を見積もる
- フェルミ推定は「正確な値」を求めるものではなく、「大きさ」を短時間で概算するための手段です。
- 妥当な前提を置く
- 「人口何人」「1人当たりの○○」などをざっくり仮定し、その値が全くおかしくないかを考えつつ進めます。
- 計算をできるだけ簡潔に
- 小数点以下の厳密計算より、10倍・100倍といったオーダー感を重視します。
- 最後に常識的か検証する
- 得られた結果が常識から極端にかけ離れていないか再確認します。
まとめ
上記のように、フェルミ推定では問題ごとに
- 「人口」「世帯数」「普及率」などを利用して“全体の母数”をざっくり求め
- 「1人あたり」「1台あたり」「単位面積あたり」といった視点で数を積み上げ
- 「頻度」「稼働率」などを組み合わせて最終的なオーダーを導く 手順が典型的です。
トレーニングを重ねると、自分の中に「ざっくりとした統計情報」や「感覚的な数字」が蓄積され、様々な業界や分野で役立ちます。ぜひ日常のちょっとした疑問でもフェルミ推定を試してみてください。
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