SDGs(持続可能な開発目標)の目標15「陸の豊かさも守ろう」は、森林や湿地、山地などの生態系を守り、生物多様性の損失を阻止することを目的としています。
陸の自然を守ることは、単に動物や植物を守るだけでなく、私たちの食料供給、気候変動対策、そして経済活動の基盤を守ることと同義です。
この記事では、世界で進行している森林減少や砂漠化の現状を最新データに基づいて解説し、企業や私たちが日常生活で取り組める具体的なアクションについて紹介します。
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」が目指す世界
SDGsの目標15は、陸上の生態系を保護・回復し、持続可能な利用を推進することを掲げています。具体的には、森林の管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止、そして生物多様性の損失を止めることがターゲットです。
地球上の陸地は全体の約30%に過ぎませんが、そこは多様な野生生物の生息地であり、複雑で豊かな生態系が形成されています。森林は酸素を供給し、二酸化炭素を吸収する「地球の肺」としての役割を果たすだけでなく、多くの人々の生計を支える重要な資源です。
しかし、人間活動の拡大により、これらの自然資本は急速に失われつつあります。目標15は、自然を消費するだけの経済から、自然を回復させながら発展する「ネイチャーポジティブ(自然再興)」な社会への転換を求めているのです。
私たちが住む日本も、国土の約3分の2が森林で覆われた森林大国です。国内の里山保全や、輸入木材による海外の森林破壊への関与など、日本にとっても極めて関連性の高い目標と言えるでしょう。
世界の森林減少と生物多様性の危機的な現状
私たちが便利に暮らす裏側で、世界の森林や野生生物はかつてないスピードで失われています。ここでは、数値データを用いてその深刻な現状を紐解きます。
止まらない森林破壊のスピード
世界の森林面積は減少の一途をたどっています。国連食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2020」によると、1990年から2020年までの30年間で、農地への転用などにより失われた森林の総面積(deforestation)は、推定で4億2,000万haに上ります。
これは日本の国土面積の約11倍に相当する広さです。植林や自然拡張による森林増加分を差し引いても、依然として1億7,800万haもの森林が純減しており、再生のスピードが破壊に追いついていないのが現状です。
特に深刻なのが、南米アマゾンや東南アジア、アフリカの熱帯雨林です。主な原因は、農地への転換です。大豆生産、パーム油の原料となるアブラヤシ農園の拡大、畜産のための牧草地確保などが、大規模な森林伐採を引き起こしています。
森林が減ることは、野生生物の住処がなくなるだけでなく、温室効果ガスの吸収源が減ることを意味し、気候変動をさらに加速させる要因となります。
4万6,000種以上が絶滅の危機に瀕している
森林破壊や環境汚染、乱獲により、多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。国際自然保護連合(IUCN)が作成する「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」の2024年版(2024-2)によると、評価された16万6,061種のうち、4万6,337種が絶滅危惧種として指定されています。
これは、両生類の約41%、哺乳類の約26%、鳥類の約12%が地球上から姿を消す可能性があることを示しています。生物多様性が失われると、生態系のバランスが崩れ、受粉を昆虫に頼る農業への打撃や、未知の感染症の発生リスクが高まるなど、人間社会にも甚大な影響が及びます。
砂漠化と土地の劣化が招く食料・貧困問題
森林減少と並んで深刻なのが、砂漠化と土地の劣化です。これらは単なる環境問題にとどまらず、貧困や紛争の引き金となる社会問題でもあります。
国連砂漠化対処条約(UNCCD)によると、地球上の土地の最大40%がすでに劣化しており、それが世界人口の約40%にあたる32億人以上に悪影響を及ぼしているとされています。土地が劣化すると、作物が育たなくなり、水資源が枯渇します。これにより、農業で生計を立てていた人々は貧困に陥り、住む場所を追われることになります。
特に乾燥地帯では、過度な放牧や不適切な灌漑、気候変動による干ばつが砂漠化を加速させています。土壌の回復には長い年月がかかるため、劣化を未然に防ぐ持続可能な土地管理(SLM)の導入が急務となっています。
一度失われた表土(植物が育つ土の層)を自然の力だけで再生するには、数百年から数千年かかるとも言われています。私たちが輸入している食料の多くも、こうした土地劣化のリスクがある地域で生産されている可能性があることを忘れてはいけません。
生態系保全に向けた企業と国際社会の取り組み
深刻化する状況に対し、国際社会や企業も対策を強化しています。ここでは、ビジネスと環境保全を両立させるための主要な動きを紹介します。
FSCなどの国際的な森林認証制度
森林保全と経済活動を両立させる仕組みとして普及しているのが「森林認証制度」です。これは、環境や地域社会に配慮して適切に管理された森林から生産された木材や製品に、認証マークを付与する制度です。
代表的なものに、FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)やPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)があります。企業はこれらの認証材を調達することで、違法伐採に関与していないことを証明でき、消費者はマーク付きの商品を選ぶことで間接的に森林保全に貢献できます。
近年では、紙製品や家具だけでなく、パーム油(RSPO認証)やカカオなど、様々な農産物にも同様のサステナブル認証が広がっています。
TNFDと企業の自然資本経営
近年、企業の評価基準として急速に注目されているのが「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」です。これは、企業活動が自然環境や生物多様性にどのような影響を与え、逆に自然の変化からどのようなリスクを受けるかを開示する枠組みです。
これまでは気候変動(炭素排出量など)への対応が中心でしたが、今後は「自然資本(水、土壌、生物など)を守っているか」が投資家や取引先から厳しく問われるようになります。欧州を中心に、サプライチェーン全体での森林破壊ゼロ(デフォレステーション・フリー)を義務付ける法規制も進んでいます。
企業にとって、生態系保全はもはやボランティア活動(CSR)ではなく、経営存続に関わる重要な戦略の一部となっているのです。
私たち一人ひとりができるアクション
陸の豊かさを守るために、私たち消費者が日常生活でできることは数多くあります。特別な活動に参加しなくても、買い物の選び方を変えるだけで大きな力になります。
環境に配慮した認証マーク製品を選ぶ
最も手軽で効果的なアクションは、環境保全に配慮された認証マークのついた商品を選ぶ「エシカル消費」です。スーパーやコンビニで商品を選ぶ際、以下のマークを探してみましょう。
| 認証マーク名称 | 対象商品例 | 保全されるもの |
|---|---|---|
| FSC認証 | ノート、ティッシュ、紙パック、家具 | 適切な管理下の森林・生物多様性 |
| RSPO認証 | スナック菓子、洗剤、インスタント麺 | 熱帯雨林(パーム油の生産地) |
| レインフォレスト・アライアンス | コーヒー、紅茶、バナナ、チョコレート | 農園の生態系と労働環境 |
| MSC / ASC認証 | 水産物(魚介類) | 水産資源(※海の豊かさに関連) |
これらの製品を選ぶことは、環境に配慮した生産を行う企業を応援し、逆に環境破壊を行う企業の商品を買わないという意思表示になります。
食品ロスを減らし地産地消を心がける
食品ロス(まだ食べられるのに捨てられる食品)を減らすことも、陸の豊かさを守ることに直結します。なぜなら、無駄になった食品を作るために使われた広大な農地、水、肥料、そして輸送にかかったエネルギーもすべて無駄になるからです。
また、地元で採れた食材を食べる「地産地消」は、輸送に伴うCO2排出を削減できるだけでなく、地域の農地や里山の手入れを続ける農家を支えることにつながります。放棄された農地は荒廃し、害獣被害の原因にもなるため、地域の農業を支えることは日本の生態系を守ることでもあるのです。
アグリテックが切り開く未来の農業革命:技術革新がもたらす持続可能な食料生産
まとめ:日々の選択が陸の未来を変える
SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」は、森林破壊や生物多様性の喪失という地球規模の課題に立ち向かうための目標です。現状は決して楽観できるものではありませんが、国際的な枠組みや企業の意識も「ネイチャーポジティブ」へと大きく変わり始めています。
私たちができることは、無力さを嘆くことではなく、賢い消費者になることです。認証ラベルのついた商品を選び、食品ロスを減らし、自然の価値を理解する。そうした日々の小さな選択の積み重ねが、企業を動かし、やがて世界の陸域生態系を守る大きな力となります。
次世代に緑豊かな地球を引き継ぐために、今日のお買い物から意識を変えてみませんか。

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