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SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の現状と課題|日本の対策と私たちができること

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の現状と課題|日本の対策と私たちができること SDGs

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、単に水道を整備するだけでなく、水質管理や衛生環境、生態系の保全までを含む包括的な目標です。

結論から言えば、世界ではいまだ22億人が安全な飲み水を手に入れられず、35億人が安全に管理されたトイレを利用できていません。この問題は途上国だけの話ではなく、気候変動やインフラ老朽化が進む日本にとっても喫緊の課題です。

本記事では、最新の国連データに基づいた世界の現状と、日本が直面する課題、そして私たちが今すぐできる具体的なアクションについて解説します。

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の概要とターゲット

SDGs(持続可能な開発目標)の6番目の目標は、すべての人々が安全な水と衛生施設(トイレなど)を利用できるようにし、それを持続可能な形で管理することを目指しています。これは人間の尊厳に関わる基本的な権利であり、健康、教育、経済など他のすべての目標達成の土台となるものです。

具体的には、2030年までに達成すべき「ターゲット」として、安全で安価な飲料水の確保、下水処理の改善、水利用の効率化、水源となる生態系の保護などが掲げられています。特に重要なのは「安全に管理された(Safely Managed)」という基準です。単に水があるだけでなく、汚染されておらず、必要な時に自宅で利用できる状態を指します。

この目標達成には、インフラ整備だけでなく、水資源の統合的な管理や地域コミュニティの参加が不可欠とされています。世界的な人口増加と経済発展により水需要が高まる中、限られた資源をどう守り、分配するかが問われています。

世界の水・衛生環境の現状データ

国連の最新報告書によると、世界の水と衛生の状況は改善傾向にあるものの、2030年の目標達成にはペースを大幅に上げる必要があります。特にサハラ以南のアフリカや紛争地域では、依然として深刻な状況が続いています。

私たちが当たり前に使っている「安全な水とトイレ」が、世界でどの程度普及しているのか、最新データを整理しました。以下の表は、世界人口に対するアクセス状況を示しています。

項目現状の課題(人数)具体的な状況
飲み水約22億人が未達成自宅に水道がない、または遠くまで水を汲みに行く必要がある。水源が汚染されている場合も含む。
トイレ約35億人が未達成下水処理がされていない、または排泄物が適切に処理されず環境中に流出している。
手洗い約17億人が未達成自宅に石鹸と水が揃った手洗い場がない。感染症リスクが高い状態。
野外排泄約4億1900万人トイレがなく、道端や草むらで排泄せざるを得ない人々。
参考:The Sustainable Development Goals Report 2024(国連)

このデータから分かるように、飲み水よりもトイレ(衛生施設)の整備が遅れています。不衛生な環境はコレラや赤痢などの感染症を蔓延させ、毎日多くの子供たちの命を奪っています。

水不足と衛生問題が引き起こす深刻な影響

水とトイレの問題は、単なるインフラの不足にとどまらず、社会全体に負の連鎖を引き起こします。特に深刻なのが「健康被害」「教育の機会損失」「ジェンダー格差」の3点です。

不衛生な水は、下痢性疾患の主な原因となります。世界では毎日多くの5歳未満児が、汚れた水と不衛生な環境が原因で命を落としています。適切な手洗いができれば防げる病気も多く、水はまさに命綱といえます。また、病気になれば医療費がかさみ、家計を圧迫して貧困から抜け出せない要因にもなります。

また、水汲みは伝統的に女性や子供の役割とされる地域が多くあります。何時間もかけて水を汲みに行くために学校へ行けない子供たちが大勢います。さらに、学校に男女別の清潔なトイレがないことで、思春期の女子生徒が通学をあきらめてしまうケースも少なくありません。安全な水とトイレの確保は、教育とジェンダー平等の実現に直結しています。

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世界が直面している主な課題と背景

目標達成を阻む大きな壁として、「気候変動」「紛争」「資金不足」が挙げられます。気候変動による干ばつや洪水は、水資源の量と質の両方に悪影響を及ぼしています。

気候変動による水ストレス

地球温暖化により降雨パターンが変化し、これまで水が豊富だった地域でも水不足(水ストレス)が発生しています。一方で、激しい洪水は浄水施設や下水処理場を破壊し、水源を汚染させます。世界気象機関(WMO)によれば、世界人口の大部分が水に関連する災害のリスクに晒されています。

紛争と政情不安

紛争地域では、意図的に水道施設が攻撃されたり、メンテナンスができずに放置されたりすることがあります。難民キャンプなど人口が密集する場所では衛生環境が悪化しやすく、感染症の温床となりがちです。

資金とインフラの不足

特に開発途上国において、上下水道の整備と維持管理には莫大なコストがかかります。政府の予算だけでは足りず、民間からの投資や国際的な支援が必要です。しかし、現在の投資額は目標達成に必要な額を大きく下回っているのが現状です。

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日本における水問題とインフラ老朽化の課題

「蛇口をひねれば水が出る」日本ですが、決して無関係ではありません。日本国内でもSDGs目標6に関連する深刻な課題が浮上しています。主な問題は「インフラの老朽化」と「災害対策」です。

日本の水道管の多くは高度経済成長期に整備されており、法定耐用年数である40年を超える管が増加しています。老朽化した水道管は破裂事故や漏水のリスクを高めるだけでなく、耐震性も低いため、大地震の際に断水が長期化する原因となります。人口減少に伴う水道料金収入の減少もあり、自治体による更新作業が追いついていない地域が増えています。

また、日本は「バーチャルウォーター(仮想水)」の輸入大国でもあります。食料や衣類の多くを輸入に頼っていますが、それらの生産には現地の水が大量に使われています。海外の水不足は、日本の食卓や生活に直結する問題なのです。国内の水環境を守りつつ、世界的な水資源の保全にどう貢献するかが問われています。

参考:令和7年版 日本の水資源の現況(国土交通省)

目標達成に向けた取り組みと私たちができること

世界中で、AIを活用した漏水検知システムや、海水淡水化技術の低コスト化など、イノベーションによる解決が進められています。日本企業も、高い浄水技術や節水製品を海外に展開し、貢献しています。

私たち個人ができることも多岐にわたります。まずは「水は有限である」という意識を持つことがスタートです。

  • 節水の徹底:歯磨きやシャワーの出しっ放しを止める、節水型の家電を選ぶ。
  • 油やゴミを流さない:キッチンやトイレから汚れた水を流さないことで、下水処理の負担を減らし、川や海を守る。
  • 支援活動への参加:水支援を行っているNGOやユニセフなどの団体へ寄付を行う。
  • 認証製品を選ぶ:FSC認証(森を守る)やMSC認証(海を守る)など、環境に配慮して作られた製品を選ぶことは、間接的に水資源を守ることにつながります。

また、企業においては「ウォーター・ニュートラル(使用した水と同量の水を水源に還元する取り組み)」の考え方が広まっています。自分が所属する組織や地域で、水に関する活動がないか調べてみるのも良いでしょう。

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まとめ

SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、途上国の支援だけでなく、私たちの生活基盤を守るための目標でもあります。

  • 現状:世界で22億人が安全な水、35億人が安全なトイレを使えない。
  • 影響:健康被害、教育格差、ジェンダー不平等の原因となる。
  • 日本の課題:水道インフラの老朽化、災害リスク、バーチャルウォーター。
  • アクション:節水、排水への配慮、支援団体への寄付。

水は生命の源です。蛇口から出る水の向こう側に、世界の人々の暮らしや地球環境がつながっていることを想像し、今日からできる小さな行動を始めてみましょう。

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