
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」とは?世界と日本の課題・企業や個人ができること・取り組み
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、母子保健から感染症、メンタルヘルス、気候変動までを含む重要な目標です。
この記事では、世界と日本の現状、そして企業や私たち一人ひとりができるアクションをわかりやすく解説します。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」とは?
SDGs(持続可能な開発目標)の17課題のうち、目標3は「すべての人に健康と福祉を」。
2030年までに出生時から高齢期までの健康格差を縮小し、誰一人取り残さない医療・福祉体制を目指します。
13のターゲットには母子保健、感染症対策、非感染性疾患(NCD)の削減、メンタルヘルス促進など幅広いテーマが含まれ、〈健康=経済成長の基盤〉というWHOのメッセージも反映されています。
政府、企業、市民の協働なくして達成は困難——だからこそ私たち一人ひとりの行動が問われます。
また、気候変動によって熱中症やデング熱などの健康被害が拡大しており、異常気象への備えや保健医療体制の強靭化も目標3の重要な柱となっています。
世界と日本の健康課題──出生から高齢期まで
世界の5歳未満児死亡率は1990年比で61%減少し、1000出生あたり37人となりました。それでも2023年は1日あたり約1.3万人が命を落としている現実があります。
一方、日本の平均寿命は男性81.09歳・女性87.14歳で世界トップクラスですが、健康寿命との差(約9〜12年)が課題です。要介護期間の短縮やメンタルヘルス支援など、国内外で世代横断的な対策が求められています。
SDGs目標3のターゲットを深掘り
母子保健の改善:安全な出産と新生児の未来
2000〜2023年に世界の妊産婦死亡率(MMR)は40%減少し、10万人あたり197人まで低下しました。
ただし約70%はサハラ以南アフリカに集中し、依然として1日約720人の母親が命を落としています。
日本でも地方の産科医不足は深刻で、テレメディシンや助産師オンライン相談などICT活用の拡大がカギです。
参考:UNICEF Trends in Maternal Mortality
感染症対策:HIV・マラリア・結核の現在地
2023年、新規HIV感染者は世界で約130万人と前年比ほぼ横ばい。地域別にみるとサハラ以南アフリカが依然として高水準ですが、東欧や中東はむしろ増加傾向です。
マラリアは同年推計2億6,300万件、死者約59万7,000人で、94%がアフリカ地域に集中し増加傾向に転じました。
結核は世界全体でやや減少するものの、多剤耐性菌の拡大が課題です。ワクチン開発とアクセス改善、保健システム強化が急務と言えます。
参考:UNAIDS Global HIV & AIDS statistics、WHO Malaria Fact Sheet 2024
非感染性疾患(NCD)の減少:生活習慣病と向き合う
NCDは2021年に4,300万人の命を奪い、全死亡の約75%を占めました。心疾患・脳卒中・糖尿病・がんが主因で、低中所得国に集中しています。
日本でも高血圧や肥満が増加。メタボリックシンドローム予備軍(内臓脂肪が多く生活習慣病リスクが高い状態)は20〜30代でも無視できず、職場や自治体での減塩・運動プログラムが効果的です。
参考:WHO Non-communicable diseases Factsheet
メンタルヘルス:心の健康を守る社会基盤
2023年に発表されたThe Lancet Psychiatryの大規模調査によると、75歳までに2人に1人が何らかの精神疾患を経験する可能性があります。
パンデミックでうつ・不安障害の有病率は25%上昇し、日本では若年層の自殺が深刻です。学校でのセルフケア教育、オンラインカウンセリング普及、偏見解消が不可欠です。
参考:The Lancet Psychiatry Study
交通安全:命を守る移動インフラ
2023年、道路交通事故による死者は約119万人で、5〜29歳の主要死因。歩行者・自転車・二輪車が過半数を占め、低中所得国に集中します。
日本では死者数が過去最少圏ながら、高齢歩行者と夜間事故が依然課題。スピード管理、飲酒運転ゼロ、歩行者優先の都市設計が求められます。
企業・自治体・個人ができるアクション
企業:健康経営で生産性とブランド価値を高める
経済産業省の「健康経営優良法人」認定は2,500社超に拡大。禁煙支援、ストレスチェック、フレックスタイム制などが投資家からのESG評価向上や離職率低下に寄与します。社員のウェルビーイングに投資することが競争力を生む時代です。
自治体:地域包括ケアと保健サービスの底上げ
地域包括ケアシステムは医療・介護・住まい・生活支援を一体提供し、高齢者の自立を支えます。
データヘルス計画(健康保険組合がレセプト等を活用し健康施策を立案する仕組み)で住民の健康指標を可視化し、エビデンスに基づく政策を実装する動きも進んでいます。
個人:毎日の生活習慣でSDGsに参加
歩数を増やす、減塩、定期健診、ストレスケア——シンプルな生活改善が社会全体の医療負荷軽減につながります。献血や臓器提供の意思表示も目標3を後押しする有効なアクションです。
40代から始める健康習慣|中高年の食事・運動・睡眠セルフケア術
テクノロジーとイノベーションが拓く未来の医療
AI診断支援、遠隔医療、ウェアラブル端末によるモニタリングは医療アクセス格差を縮小します。
5G通信で離島でも専門医がリモート診療可能になり、バイオプリンティングやゲノム編集は難病治療の可能性を拡大。倫理と公平なアクセスを両立する枠組みが不可欠です。
成功事例:日本発の取り組みから学ぶ
健康経営優良法人制度
認定企業は社内運動アプリや減塩メニュー開発、オンライン禁煙プログラムなど多様な施策を実践。採用力強化やブランド価値向上など目に見える成果が報告されています。
遠隔医療の普及
内閣府規制改革推進会議資料によれば、オンライン診療実施回数は2023年に2019年比400倍以上に達しました。
慢性疾患の定期フォローやメンタルヘルス相談で活用が進み、通院負担を減らして治療継続率を高めています。
データ連携とプライバシー保護を両立するガイドライン整備が次の課題です。
まとめ:あなたの一歩がSDGs目標3を前進させる
目標3の達成は国家規模の大事業に聞こえますが、実は日常の小さな選択が大きな波及効果を生みます。
今日の食事、移動方法、睡眠、周囲への気遣い——それら全部が〈健康と福祉〉の推進力です。企業・自治体・個人が補完し合い、持続可能な医療と福祉の仕組みを築いていきましょう。
あなたの行動が、すべての人の健やかな未来をつくります。
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