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SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や2025年最新の進捗、企業の取り組み事例をわかりやすく解説

SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や2025年最新の進捗、企業の取り組み事例をわかりやすく解説 SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための、世界共通の17の目標です。

2025年現在、折り返し地点を過ぎましたが、目標達成のペースは遅れており、特に気候変動や格差の問題が深刻化しています。本記事では、SDGsの基礎知識から最新の進捗状況、日本固有の課題である少子高齢化、そして企業や私たちが取り組むべき具体的なアクションについて解説します。

SDGs(持続可能な開発目標)の基礎知識と3つの側面

SDGs(エスディージーズ)は「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。2016年から2030年までの15年間で達成することを目指しており、先進国・途上国を問わず、すべての国が取り組むべき普遍的な課題として位置づけられています。

SDGsの最大の特徴は「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」という理念です。これは、一部の先進国や富裕層だけでなく、弱い立場にある人々も含めたすべての人が恩恵を受けられる社会を目指すことを意味します。前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)が主に途上国の支援を中心としていたのに対し、SDGsは経済、社会、環境の3つの側面を統合的に解決しようとする点が画期的です。

これら3つの側面は「ウェディングケーキモデル」として表現されることがよくあります。環境(生物圏)を土台とし、その上に社会があり、さらにその上で経済活動が成り立つという構造です。

例えば、気候変動で農作物が育たなければ(環境の悪化)、食料価格が高騰して経済が混乱し(経済への打撃)、飢餓や貧困が増大する(社会不安)というように、土台である環境が崩れれば、その上の社会や経済も維持できないという考え方が根底にあります。

参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

【一覧表】SDGs17の目標とカテゴリー別解説

SDGsは17の大きな目標と、それを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。これら17の目標はバラバラに存在するのではなく、互いに深く関連し合っています。理解を深めるために、目標を「社会」「環境」「経済」などのカテゴリーに関連付けて整理した一覧表を確認しましょう。

No.目標タイトル主なカテゴリー・概要
1貧困をなくそう【社会】あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困を終わらせる
2飢餓をゼロに【社会】食料安定確保と栄養改善、持続可能な農業の推進
3すべての人に健康と福祉を【社会】あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保
4質の高い教育をみんなに【社会】包摂的で公平な質の高い教育を提供し、生涯学習を促進
5ジェンダー平等を実現しよう【社会】ジェンダー平等を達成し、すべての女性・女児のエンパワーメントを図る
6安全な水とトイレを世界中に【環境】水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保
7エネルギーをみんなに そしてクリーンに【経済・環境】安価で信頼できる持続可能なエネルギーへのアクセス確保
8働きがいも経済成長も【経済】包摂的かつ持続可能な経済成長とディーセント・ワークの促進
9産業と技術革新の基盤をつくろう【経済】強靭なインフラ構築、包摂的な産業化とイノベーションの推進
10人や国の不平等をなくそう【社会】国内および国家間の格差を是正する
11住み続けられるまちづくりを【社会】包摂的で安全、強靭かつ持続可能な都市の実現
12つくる責任 つかう責任【経済・環境】持続可能な消費と生産のパターンを確保
13気候変動に具体的な対策を【環境】気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
14海の豊かさを守ろう【環境】海洋と海洋資源を持続可能な形で利用・保全する
15陸の豊かさも守ろう【環境】陸域生態系の保護・回復、森林の持続可能な管理
16平和と公正をすべての人に【社会】平和で包摂的な社会を促進し、司法へのアクセスを提供
17パートナーシップで目標を達成しよう【実施手段】持続可能な開発のための実施手段を強化し、パートナーシップを活性化

目標1〜6:人間らしい生活の基盤(社会)

最初の6つの目標は、貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー、水といった、人間が人間らしく生きるための基本的な権利(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)に関連しています。これらは途上国だけの問題と思われがちですが、日本国内においても「子どもの貧困」や「ジェンダーギャップ指数」の低さが課題となっており、決して他人事ではありません。

目標7〜12:豊かさと持続可能性の両立(経済)

続く目標群は、経済成長と働きがい、インフラ整備、不平等の是正、そして持続可能な生産・消費に関するものです。ここでは、資源を浪費する従来の経済モデルから、廃棄物を減らし資源を循環させる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への転換が求められています。

目標13〜15:地球環境の保全(環境)

気候変動対策、海洋・陸上資源の保護に関する目標です。近年頻発する異常気象や自然災害は、経済活動にも甚大な被害を与えています。環境保全はコストではなく、未来への投資であり、生存基盤を守るための必須条件といえます。

2025年時点でのSDGs進捗状況と課題

2025年時点でのSDGs進捗状況と課題

2015年の採択から10年が経過し、目標達成期限の2030年まで残り5年となりました。しかし、国連の最新報告によると、全体の進捗は「危機的状況」にあるとされています。ターゲットのうち、順調に進んでいるものは全体の約17%程度にとどまり、半数近くは進捗が不十分、あるいは後退しているのが現状です。

世界的な遅れと要因

進捗が遅れている主な要因として、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、世界各地で続く紛争、そして気候変動による災害の激甚化が挙げられます。これらが複合的に作用し、特に途上国における貧困撲滅や飢餓対策が停滞、あるいは悪化しています。また、世界的なインフレや債務危機も、SDGsへの資金配分を困難にしています。

日本における達成状況と具体的課題

「Sustainable Development Report 2024」によると、日本の達成度ランキングは世界18位(前年からランクダウン)となっています。「質の高い教育」や「産業と技術革新」などの項目で高い評価を得ている一方、以下の項目では深刻な課題(赤信号)が点灯しており、国際的にも改善が求められています。

深刻な少子高齢化と人口減少(目標3, 8, 11)

日本が世界に先駆けて直面している最大の課題が「少子高齢化」です。これは単なる人口動態の変化にとどまらず、SDGsの複数の目標達成を阻む要因となっています。

  • 経済成長の維持(目標8):生産年齢人口の減少により、深刻な人手不足が発生しています。これは企業の成長力を削ぎ、社会保障制度の維持を困難にしています。
  • 健康と福祉(目標3):高齢者の増加に伴い、医療・介護費の増大やケア人材の不足が深刻化しています。すべての人が適切な医療を受けられる体制(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の維持が危ぶまれています。
  • 持続可能なまちづくり(目標11):地方では人口減少により公共交通機関の維持が難しくなり、免許を返納した高齢者の移動手段が失われる「買い物難民」などの問題が発生しています。

これに対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上や、シニア・女性の活躍推進、外国人材との共生社会の実現といった対策が急務となっています。

ジェンダー平等(目標5)

世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数において、日本は先進国の中で最下位レベルが続いています。政治参画や経済分野における女性の管理職比率の低さが主な要因であり、早急な構造改革が必要です。
(ただし、このジェンダー・ギャップ指数の算出方法への疑義も指摘されており、より正確な数字が求められます)

気候変動対策(目標13)

2050年カーボンニュートラルを宣言していますが、再生可能エネルギーの導入比率や温室効果ガスの削減ペースにおいては、欧州諸国と比較して遅れをとっているとの指摘があります。

つくる責任 つかう責任(目標12)

食品ロス(フードロス)の多さやプラスチックごみの排出量の多さが課題です。大量生産・大量消費のライフスタイルからの脱却が求められています。
参考:The Sustainable Development Goals Report 2024 (United Nations)

企業経営におけるSDGsの重要性と事例

企業経営におけるSDGsの重要性と事例

SDGsは単なる社会貢献活動(CSR)ではなく、企業の生存戦略そのものになっています。投資家が環境・社会・ガバナンスを重視して投資先を選別する「ESG投資」が主流となり、サプライチェーン全体でのサステナビリティが求められるようになったからです。

トヨタ自動車の事例:モビリティカンパニーへの変革

トヨタは「幸せの量産」をミッションに掲げ、水素エンジンや電気自動車(BEV)の開発を通じて脱炭素化を推進しています。単に車を売るだけでなく、移動の自由を提供し、環境負荷を低減する技術革新(目標9、13)に取り組んでいます。また、生産工場でのCO2排出ゼロを目指す「工場カーボンニュートラル」も加速させています。

ユニリーバの事例:サステナブルな暮らしの普及

グローバル企業のユニリーバは、早期からサステナビリティを経営の中核に据えています。プラスチック使用量の削減や、原材料の持続可能な調達、開発途上国の小規模農家支援などを通じて、ビジネスの成長と環境負荷の半減を同時に目指す「ユニリーバ・コンパス」を展開しています。

「SDGsウォッシュ」への注意と対策

SDGsへの関心が高まる一方で、実態が伴っていないのに見せかけだけSDGsに取り組んでいるように装う「SDGsウォッシュ」が問題視されています。例えば、環境配慮を謳いながら実態は環境破壊につながる製造工程を続けているケースなどが該当します。企業は透明性のある情報開示を行い、消費者はその真偽を見極めるリテラシーを持つことが重要です。

SDGsの「闇」と本質的な課題:持続可能な開発目標の矛盾、利権、SDGsウォッシュを徹底解説

私たちが今日からできるSDGsのアクション

SDGsの達成には、政府や企業の力だけでなく、私たち一人ひとりの行動変容が不可欠です。日常生活の中で意識できる具体的なアクションを紹介します。

エシカル消費の実践(目標12)

買い物の際、価格や品質だけでなく「誰が、どこで、どのように作ったか」を意識してみましょう。フェアトレード商品や環境配慮型の商品(FSC認証の紙製品やMSC認証の海産物など)を選ぶことは、持続可能な生産者を応援する直接的な投票行為になります。
参考:エシカルとは?意味をわかりやすく解説!サステナブルとの違いや身近な取り組みも紹介(おやそく!)

食品ロスの削減(目標2、12)

日本国内の食品ロスは年間数百万トンに及びます。家庭では「買いすぎない」「使い切る」「食べ切る」を徹底し、外食時は食べきれる量を注文する、あるいはドギーバッグ(持ち帰り)を活用するなどの工夫が有効です。

省エネと脱炭素アクション(目標7、13)

エアコンの設定温度を適切にする、使わない家電のコンセントを抜くといった基本に加え、自宅の電力を再生可能エネルギー由来のプランに切り替えることも大きなインパクトがあります。また、移動において公共交通機関や自転車を利用することも、CO2削減に貢献します。

SDGs達成するためにできることとは?個人・企業の具体的な取り組み17選

SDGsに関するよくある質問(Q&A)

Q
個人の小さな行動で、本当に世界が変わるのでしょうか?
A

はい、大きな影響力があります。「バタフライエフェクト」のように、一人の行動変容は周囲に伝播します。また、消費者がエシカルな商品を選ぶようになれば、企業も売れる商品を作るために持続可能な生産方法へとシフトせざるを得なくなります。個人の選択が企業のあり方を変え、社会を変える原動力になります。

Q
SDGsは「意味がない」「きれいごと」という批判もありますが?
A

確かに、すべての目標が完璧に機能しているわけではなく、矛盾を指摘する声もあります。しかし、世界共通の「言語」として、異なる国や文化、企業と市民が同じ方向を向くための指針としての役割は非常に大きいです。批判的な視点を持ちつつも、理想に向けて少しでも前進しようとする姿勢が建設的です。

Q
2030年を過ぎたらSDGsはどうなるのですか?
A

2030年で課題がすべて解決するわけではありません。おそらく「ポストSDGs」と呼ばれる新たな目標が設定され、取り組みは継続されるでしょう。期限があることで、今やるべきことに集中し、スピード感を持って行動することが求められています。

まとめ:2030年の未来に向けて

SDGsは、私たちがこれからも地球で住み続け、豊かな社会を次世代に引き継ぐための羅針盤です。2025年現在、進捗には遅れが見られますが、技術革新や若者世代の意識変化など、希望の兆しも確実に存在します。

重要なのは、目標を「他人事」ではなく「自分事」として捉えることです。日々の買い物、働き方、選挙での投票など、私たちの小さな選択の積み重ねが、世界の大きな流れを変えていきます。まずは自分が関心のある目標を一つ見つけ、今日からできるアクションを始めてみましょう。

参考:UNDP(国連開発計画)「UNDP Annual Report 2024」、日本政府「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」(PDF)

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