出生前診断とは?安全性や倫理的問題について
出生前診断は、胎児の健康状態を調べるための検査です。近年、技術の進歩により、より早期に、より詳細に胎児の状態を知ることができるようになりました。一方で、出生前診断をめぐっては、安全性や倫理的な問題も指摘されています。本記事では、出生前診断の種類や目的、リスク、倫理的問題について詳しく解説します。
出生前診断の種類と目的
出生前診断には、大きく分けて2つの種類があります。
1. 非侵襲的出生前診断(NIPT)
NIPTは、母体血を採取し、胎児のDNAを分析することで、胎児の染色体異常を調べる検査です。主に、ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなどのリスクを評価します。NIPTは、妊娠10週以降に実施可能で、染色体異常の可能性を90%以上の確率で発見できるとされています。ただし、確定診断ではないため、陽性結果が出た場合は、羊水検査などの確定診断が必要です。
2. 侵襲的出生前診断
侵襲的出生前診断は、胎児や胎盤の一部を直接採取して行う検査です。主な方法として、羊水検査と絨毛検査があります。いずれも、染色体異常や遺伝子異常を高い精度で診断できますが、流産のリスクを伴います。
- 羊水検査:妊娠15週以降に実施。羊水を採取し、胎児の染色体や遺伝子を分析。流産リスクは0.1~0.5%程度。
- 絨毛検査:妊娠11週以降に実施。胎盤の一部(絨毛)を採取し、分析。流産リスクは0.5~1%程度。
出生前診断の主な目的は、胎児の健康状態を確認し、異常がある場合に備えることです。早期に診断することで、治療方針の決定や、出産方法の選択、育児の準備などに役立てることができます。
出生前診断のリスクと限界
出生前診断には、一定のリスクと限界があります。
1. 検査自体のリスク
NIPTは、母体血を採取するだけなので、胎児へのリスクはほとんどありません。一方、羊水検査や絨毛検査は、流産のリスクを伴います。
2. 偽陽性・偽陰性の可能性
出生前診断は、100%の精度ではありません。偽陽性(異常なしと判定されたにも関わらず、実際は異常がある)や偽陰性(異常ありと判定されたが、実際は異常がない)の可能性があります。
3. 診断できる疾患の限界
出生前診断で調べられる疾患は限られています。すべての先天性疾患や遺伝子疾患を診断できるわけではありません。
出生前診断の倫理的問題
出生前診断をめぐっては、倫理的な問題が指摘されています。
1. 障がいを持つ子どもの選別
出生前診断で胎児の異常が見つかった場合、中絶を選択する夫婦が多いのが現状です。これは、障がいを持つ子どもの命を選別しているのではないかという批判につながっています。
2. 受診者への心理的負担
出生前診断の結果によっては、受診者に大きな心理的負担がかかります。特に、中絶をめぐる意思決定は、倫理的・心理的に重大な問題です。
3. 優生思想につながる恐れ
出生前診断が普及することで、「望ましい子ども」だけを選ぶような優生思想につながる恐れがあると指摘されています。
まとめ
出生前診断は、胎児の健康状態を知るための重要な検査ですが、リスクや倫理的問題もはらんでいます。検査を受けるかどうかは、医療関係者から十分な情報提供を受けた上で、夫婦で慎重に判断する必要があります。
出生前診断について理解を深め、自分ならどうするか、社会としてどう向き合うべきかを考えるきっかけになれば幸いです。
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