子どもの成長に伴ってズボンの裾が短くなったときなどに使われる「つんつるてん」という言葉。独特のユーモラスな響きがあるため、「これって自分の地元だけの方言なのかな?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、「つんつるてん」はどこか特定の地方だけで使われる方言ではなく、国語辞典にも掲載されている全国共通の言葉です。
インターネット上では「関西では別の意味になる」「九州では意味が違う」といった話も見かけます。しかし、国語辞典には地域による意味の違いは書かれておらず、東北・九州・関西のどこでも、基本の意味は「服の丈が短い」「頭が丸坊主」の2つです。
この記事では、「つんつるてん」がどこの方言なのかという疑問の答えから、東北・九州・関西での意味の違いはあるのか、そして江戸時代の「てんつるてん」にさかのぼる語源までを分かりやすく解説します。
つんつるてんはどこの方言?実は全国で通じる共通語
日常会話で何気なく使っている「つんつるてん」ですが、どこか方言のような響きがある言葉ですよね。まずは、この言葉が日本語の中でどのような位置づけにあるのかを見ていきましょう。
国語辞典にも載っている全国共通の言葉
「つんつるてん」は特定エリアの方言ではなく、日本全国で通用する言葉です。『精選版 日本国語大辞典』や『デジタル大辞泉』といった主要な国語辞典にも、方言という注記はなく、一般的な名詞・形容動詞として載っています。
辞書に記載されている意味は、次の2つです。
- 衣服の丈が短くて、手足が出ていること。また、そのさま。
- 頭がすっかりはげていること。丸坊主であること。
『精選版 日本国語大辞典』では、「つんつる」「つんつら」という言い方も同じ意味として挙げられています。文献で確認できるいちばん古い例は、明治初期の仮名垣魯文『安愚楽鍋』(1871〜72年)です。それより前の江戸時代には、ほぼ同じ意味で「てんつるてん」という形が使われていました(詳しくは語源の見出しで解説します)。
くだけた話し言葉ではありますが、地方の言葉ではなく、どこの地域でも意味が通じる共通語だと考えてよいでしょう。
参考:つんつるてん(ツンツルテン)とは? 意味や使い方 – コトバンク
なぜ「方言かもしれない」と思う人が多いのか
共通語であるにもかかわらず、多くの人が「つんつるてんはどこの方言だろう?」と検索するのには、いくつかの理由が考えられます。
1つ目は、音の響きが独特で、方言のように聞こえるからです。「つん・つる・てん」というリズミカルで少し間の抜けた語感は、いかにも地方独特の言い回しのような親しみやすさを持っています。ニュース番組やビジネス文書で使われることがほとんどないため、共通語だと意識されにくいのです。
2つ目は、家庭の中で覚える言葉だからです。学校の授業で習う言葉ではなく、子どもの頃に親や祖父母から「そのズボン、もうつんつるてんだね」と言われて覚える人が多い言葉です。地元の言葉と一緒に覚えたため、方言だと思い込んでしまうことがあります。
3つ目は、意味が2つあり、人によって思い浮かべるものが違うからです。「服の丈が短い」の意味しか知らない人が、「頭がつんつるてん」という言い方を聞くと、「地域によって意味が違うのでは?」と感じるかもしれません。実際には、どちらも辞書に載っている意味です。
現代の若い世代における使われ方
「つんつるてん」は、昔ながらの言葉という印象を持たれがちです。お下がりの服を着たり、成長期に服の買い替えが追いつかなかったりする場面で、親世代・祖父母世代がよく使ってきた言葉だからでしょう。
若い世代がどのくらいこの言葉を使っているかについて、はっきりした調査データはありません。ただ、子どもの服のサイズが合わなくなったときなどに、今でも子育て世代の会話やSNSの投稿で見かける言葉です。
また最近は、丈の短いトップス(クロップド丈)や、くるぶしが見える長さのパンツ(アンクル丈)を、おしゃれとして選ぶことも普通になりました。こうした「わざと短くした服」は、「つんつるてん」とは言いません。あくまで「体に対して服が小さくなってしまった」というニュアンスで使う言葉だと覚えておくとよいでしょう。
つんつるてんの語源と由来!江戸時代の「てんつるてん」
そもそも、なぜ衣服の丈が短いことや、頭が丸坊主であることを「つんつるてん」と呼ぶのでしょうか。はっきりした語源は辞書にも書かれていませんが、江戸時代の言葉にヒントがあります。
江戸時代には「てんつるてん」と言っていた
江戸時代には、ほぼ同じ意味で「てんつるてん」という言葉が使われていました。『デジタル大辞泉』では「てんつるてん」を近世語(江戸時代の言葉)とし、「つんつるてん」に同じ、と説明しています。
『精選版 日本国語大辞典』には、「てんつるてん」の意味と用例として次のようなものが載っています。
- 着物の丈が短く、脚がむき出しになっているさま:洒落本『傾城買談客物語』(1799年)、式亭三馬の滑稽本『浮世風呂』に用例があります。
- 無一物であるさま(すってんてん):浮世草子『好色通変歌占』(1688年)に「身躰てんつるてんとなる也」という用例があります。
- 三味線の音を表す言葉:浄瑠璃『義仲勲功記』(1756年)に「歌や三味線てんつるてん」という用例があります。
このように、江戸時代の「てんつるてん」には、着物の丈が短い意味のほかに、「何もない」「三味線の音」という意味もありました。
「てんつるてん」の用例が江戸時代から見られ、「つんつるてん」の用例が明治初期から見られることから、「てんつるてん」が形を変えて「つんつるてん」になったと考える人もいます。ただし、辞書には変化の経緯や、三味線の音とのつながりまでは書かれていません。語源ははっきりしていない、というのが正確なところです。
参考:てんつるてん(テンツルテン)とは? 意味や使い方 – コトバンク
明治から昭和にかけての文献に見る歴史
「つんつるてん」という形が文献に登場するのは、明治初期のことです。仮名垣魯文が書いた『安愚楽鍋(あぐらなべ)』(1871〜72年)に、「つんつるてんのきものをうでまくりして」という一節があります。ここでは、着物の丈が短い様子を表しています。
一方、「頭が丸坊主」という意味での用例は新しく、『精選版 日本国語大辞典』では、井上光晴の小説『地の群れ』(1963年)が挙げられています。「ああ、あの人たちもつんつるてんだ、丸坊主になったんだ」という表現です。
辞書の用例を見るかぎり、「服の丈が短い」という意味が古くからあり、「丸坊主」という意味はあとから広まったと考えられます。「つるつる」という言葉の響きと重なるため、頭の様子にも使われるようになったのかもしれません。ただし、これも辞書に書かれている説明ではなく、推測のひとつです。
東北・九州・関西で「つんつるてん」の意味の違いはある?
「つんつるてん」で検索すると、「関西ではお金がない意味になる」「九州ではツルツル滑る意味もある」など、地域ごとの違いを説明するページが多く見つかります。ここでは、辞書で確かめられることと、確かめられないことを分けて整理します。
| よく見かける意味 | 国語辞典の記載 | ポイント |
|---|---|---|
| 服の丈が短い | 載っている | 全国共通のいちばん基本の意味 |
| 頭が丸坊主・はげている | 載っている | 地域を限定する記載はない |
| お金がない(すっからかん) | 「つんつるてん」には載っていない | 江戸時代の「てんつるてん」や「すってんてん」の意味 |
| 表面がツルツルして滑る | 載っていない | 「つるつる」との混同の可能性 |
関西で「お金がない」の意味になるというのは本当?
「関西では『つんつるてん』を丸坊主や金欠の意味でよく使う」という説明を見かけることがあります。しかし、国語辞典には、関西で意味が違うという記載はありません。丸坊主の意味は、地域を限らず辞書に載っている意味です。
「お金がまったくない」という意味は、「つんつるてん」の辞書の項目には載っていません。この意味を持っていたのは、江戸時代の「てんつるてん」のほうです。また、お金を使い果たした様子は、ふつう「すってんてん」「すっからかん」と言います。
そのため、「財布がつんつるてん」という言い方は、相手によっては通じない可能性があります。お金がないことを伝えたいときは、「すってんてん」や「すっからかん」を使うほうが確実です。
九州で「ツルツル滑る」の意味があるというのは本当?
「九州では、凍った道やすり減ったタイヤなど、表面がツルツルしている様子にも使う」と説明するページもあります。しかし、この意味は国語辞典には載っておらず、方言として使われているという確かな記録も見つかりませんでした。
「つんつるてん」には「つる」という音が入っているため、「つるつる」と同じような意味だと受け取られやすいのかもしれません。もちろん、家庭や地域の中でそのような使い方をしている人がいる可能性はあります。ただ、一般的な意味ではないため、知らない人には通じにくいでしょう。
九州でも、基本的には「服の丈が短い」「頭が丸坊主」という共通語の意味で使われていると考えてよいでしょう。
東北ではどう使われている?
東北地方についても、「つんつるてん」が特別な意味で使われるという辞書の記載は見当たりません。東北でも、ほかの地域と同じく「服の丈が短い」という意味で通じる言葉です。
東北の方言には、共通語と形が少し違う言葉がたくさんあります。そのため、「つんつるてん」も地元の言葉だと思っている人がいるかもしれません。しかし、この言葉は辞書にそのまま載っている共通語なので、ほかの地域の人と話すときにもそのまま使えます。
なお、地域ごとの細かい使われ方を知りたい場合は、『日本方言大辞典』などの方言辞典や、各地の方言をまとめた資料で確かめるのが確実です。インターネット上の説明は、書き手によって内容が食い違っていることが多いため、うのみにしないよう注意しましょう。
「おっかない」は方言なのか?意味や使われる地域(東京・東北・北海道など)を徹底解説!つんつるてんが持つ2つの意味と具体的な使い方・例文
ここで改めて、「つんつるてん」が持つ2つの意味について、具体的な使い方と例文を確認しておきましょう。
意味1:衣服の袖や裾の丈が短くて手足が出ている様子
もっとも基本的な意味が、身長や体格に対して服の丈(袖丈・着丈・裾丈)が足りず、手首や足首、すねなどが出てしまっている状態です。
ウエストや肩幅がきつい(横幅が足りない)ときよりも、「縦の長さが足りない」という見た目のアンバランスさを表すときに使われます。子どもの成長で服が小さくなったときのほか、洗濯で服が縮んでしまったときにもぴったりの表現です。
衣服の丈に関する例文
- 「春になって久しぶりに去年のズボンをはかせたら、足首が出るほどつんつるてんになっていて、子どもの成長を感じた」
- 「お気に入りのニットを間違えて乾燥機にかけてしまい、袖がつんつるてんに縮んでしまった」
- 「旅館の浴衣を着てみたけれど、背が高いせいか裾がつんつるてんで少し恥ずかしい」
意味2:髪の毛がなくて頭が丸坊主である様子
2つ目は、髪の毛をきれいに剃り上げた頭や、短く刈り込んだ丸坊主、髪がすっかりなくなった頭を指す意味です。
相手を少しからかったり、自分の頭を冗談めかして話したりする場面で使われます。ただし、薄毛を気にしている人に対して使うと失礼にあたるため、親しい間柄での冗談にとどめておく配慮が必要です。
頭髪の状態に関する例文
- 「夏の大会の前に気合を入れて、部員全員で頭をつんつるてんに丸めてきた」
- 「久しぶりに会った叔父が、つんつるてんのスキンヘッドにしていて驚いた」
- 「床屋さんで『短めに』と頼んだら、思った以上につんつるてんにされてしまった」
「つんつるてん」と似ている言葉・類語との意味の違い
日本語には、「つんつるてん」と響きや意味がよく似た言葉がいくつもあります。特に混同しやすい「ちんちくりん」や「すってんてん」との違い、そして改まった場面で使える言い換え表現を整理しておきましょう。
| 言葉 | 主な対象 | 意味とニュアンスの違い |
|---|---|---|
| つんつるてん | 衣服の丈・頭髪 | 袖や裾の長さが足りず手足が出ている状態。または丸坊主。 |
| ちんちくりん | 人の背丈・衣服 | 背が低いこと。また、背丈に比べて衣服が短すぎること。 |
| すってんてん | お金・財産・持ち物 | お金や持ち物をすべて失って何もない状態(服の丈には使わない)。 |
| 寸足らず(すんたらず) | 衣服・カーテンなど | 必要な長さ(寸法)に足りていないこと。 |
「ちんちくりん」との違いは服を見るか人を見るか
「つんつるてん」ともっともよく混同される言葉が「ちんちくりん」です。辞書を引くと、ちんちくりんにも「背丈に比べて衣服が短すぎること」という意味が載っているため、同じ意味だと思っている人も少なくありません。
違いは、「服(の丈)」に注目しているのか、「人(の背丈)」に注目しているのかという点にあります。
- つんつるてん:「服の袖や裾が短い状態」そのものを指す。(例:背が伸びてズボンがつんつるてんになる)
- ちんちくりん:主に「背が低いこと」を指し、背丈に比べて服が短い様子にも使う。(例:ちんちくりんな体格)
たとえば、背の高い人が小さい服を着て手足が出ている場合は「つんつるてん」がしっくりきます。反対に、人の背の低さそのものを言うときは「ちんちくりん」を使い、「あの人は背がつんつるてんだ」とは言いません。なお、ちんちくりんを漢字で「珍竹林」と書くことがありますが、これは当て字です。
参考:ちんちくりん(チンチクリン)とは? 意味や使い方 – コトバンク
つんつるてんの意味と語源は?ちんちくりんとの違いや死語かも解説「すってんてん」「すっからかん」とのニュアンスの違い
「すってんてん」は、ギャンブルや買い物などでお金をすべて使い果たし、何もなくなった状態を表す言葉です。江戸時代の「てんつるてん」にもこの意味がありましたが、現代の「つんつるてん」にはこの意味はありません。
「すっからかん」は、財布の中身だけでなく、部屋の荷物やお店の在庫など、「中にあるはずのものがすっかりなくなって空っぽの状態」を広く表す言葉です。お金がないことや中身が空っぽなことを伝えたい場合は、「つんつるてん」ではなく「すってんてん」や「すっからかん」を使いましょう。
音が似ているため混同しやすいですが、「つんつるてん」は服の丈や頭、「すってんてん」「すっからかん」はお金や中身、と覚えておくと使い分けやすくなります。
改まった場面で使える言い換え表現
「つんつるてん」は親しみやすく便利な言葉ですが、あくまで日常会話向けのくだけた表現です。お店での接客やスーツの採寸、目上の人との会話などでは、別の言い方を選ぶほうが無難です。
改まった場面で「服の丈が短いこと」を伝えたい場合は、次のような言葉に言い換えるとよいでしょう。
- 丈が短い・袖丈(裾丈)が足りない:もっとも客観的で丁寧な表現です。「お子様が成長されて、制服の袖丈が足りなくなってきましたね」のように使えば、誰に対しても失礼になりません。
- 寸足らず:必要な寸法に足りていないこと。カーテンやズボンの裾など、物に対して使うのが一般的です。
- サイズアウトした:主に子ども服などで、成長に伴ってサイズが合わなくなったことを表す表現です。
まとめ:つんつるてんの方言・地域差と語源のおさらい
今回は、「つんつるてん」はどこの方言なのかという疑問から、東北・九州・関西での意味の違い、そして江戸時代の「てんつるてん」にさかのぼる語源までを解説しました。最後に、ポイントをおさらいしましょう。
- 方言ではなく共通語:「つんつるてん」は特定の地方の方言ではなく、国語辞典に載っている全国共通の言葉。
- 意味は2つ:「衣服の丈が短くて手足が出ている」と「頭が丸坊主」。
- 地域による意味の違い:東北・九州・関西で意味が違うという辞書の記載はない。「お金がない」「ツルツル滑る」は「つんつるてん」の辞書の意味には含まれない。
- 語源:江戸時代には同じ意味で「てんつるてん」と言っていた。「つんつるてん」の形は明治初期の『安愚楽鍋』から確認できるが、はっきりした語源は分かっていない。
- 類語との使い分け:服の丈が短いなら「つんつるてん」、背が低いなら「ちんちくりん」、お金がないなら「すってんてん」。
方言のような響きを持つ「つんつるてん」ですが、実はどこでも通じる共通語です。地域や家庭によって思い浮かべるイメージに違いがあるかもしれないので、身近な人と「どんなときに使う?」と話してみるのも楽しいですね。
