「体力や気力が落ちて、片付けがおっくうになってきた」「親の家が物で溢れていて心配」
高齢世帯の片付けにおいて、若者世代と同じやり方は通用しません。体力的な負担を減らし、何よりも「転倒などの事故を防ぐこと」が最優先課題だからです。
本記事では、これからの人生を安全かつ軽やかに過ごすための、高齢者向けの片付け術と、家族がサポートする際の心構えを解説します。
高齢者の片付け、最大の目的は「安全確保」
高齢期の整理整頓は、「見た目の美しさ」よりも「生活の安全性」を重視すべきです。『高齢社会白書』や消費者庁のデータによると、高齢者の転倒事故の多くは、住み慣れた自宅内で発生しています。
「床置き」は命取りになる
わずかな段差や、床に置かれた新聞紙、電気コードなどでつまずき、骨折してしまうケースが後を絶ちません。骨折が入院や寝たきりのきっかけになることも多いため、「床には絶対に物を置かない」を鉄則にしましょう。
「探し物」の混乱を防ぎ、自立生活を守る
「あれ、どこに置いたっけ?」と探し回る行為や、見つからない焦りは、日々の生活の質(QOL)を下げる大きな要因になります。常用薬や眼鏡、補聴器など、生活必需品の定位置を決めることは、混乱を防ぎ、自立した生活を長く続けるための鍵となります。
「防災」の観点から家具を見直す
筋力が低下すると、地震で倒れた家具の下敷きになった際、自力で脱出するのが困難になります。背の高い家具を減らし、避難経路を確保することが命を守ることにつながります。
体力を使わない「1日15分・1か所」ルール
一気に片付けようとすると、疲労で体調を崩してしまいます。高齢者の片付けは「頑張りすぎない」ことが継続のコツです。
- タイマーをセット: 「今日は15分だけ」と決め、タイマーが鳴ったら途中でも終了します。
- 範囲を限定: 「今日は薬箱の中だけ」「今日は財布の中だけ」と、座ったままできる小さな範囲から始めます。
- 保留ボックスの活用: 「要る・要らない」の判断に迷ったら、無理に決めずに「保留ボックス」へ入れます。判断による脳の疲れを防ぎます。
場所別・安全対策を最優先した片付けテクニック
家の中で特に事故が起きやすい場所を中心に、具体的な改善策を紹介します。
廊下・玄関:動線を確保し、つまずきを防ぐ
- 玄関マット・ラグの撤去: マットの端がめくれ上がっていると、つまずきの原因になります。思い切って撤去するか、滑り止めテープで完全に固定します。
- 靴の出しっ放し禁止: 玄関に出しておく靴は「今日履く1足」だけにします。靴を履く際に座れる椅子を置く場合は、動線を塞がないよう配置に注意しましょう。
キッチン・ダイニング:賞味期限と薬の管理
- 冷蔵庫の「手前」だけ使う: 奥に詰め込むと取り出しにくく、賞味期限切れの温床になります。手が届きやすい手前のスペースだけを使い、奥は空けておく「7割収納」を徹底します。
- テーブルの上は「薬とリモコン」だけ: ダイニングテーブルは物置になりがちです。食事をするスペースを確保し、それ以外は「薬」や「リモコン」など、定位置を決めたカゴにまとめます。
寝室・リビング:地震対策とゴールデンゾーン
- 背の高い家具を減らす: 寝ている場所に家具が倒れてこないよう配置を変えるか、背の低い家具に買い替えます。
- ゴールデンゾーン(腰〜目線の高さ)の活用: よく使う物は、かがんだり背伸びしたりせずに取れる高さに集めます。踏み台を使わないと取れない天袋などの収納は、原則として「使わない物」置き場にします。
「捨てられない」思い出の品との付き合い方
高齢の方にとって、長く連れ添った物は自分の歴史そのものです。「捨ててください」という言葉は、自分自身を否定されたように感じてしまいます。
「宝箱」をひとつ用意する
無理に捨てる必要はありません。「思い出ボックス」という名の宝箱をひとつ用意し、本当に大切な手紙や写真はそこに収まる分だけ残します。入り切らなくなったら、再度見直して厳選します。
「誰かに使ってもらう」なら手放せる
「捨てる」のは忍びなくても、「寄付する」「リサイクルに出す」「親戚に譲る」なら抵抗感が薄れる場合があります。「まだ使えるからもったいない」という気持ちを、「誰かの役に立つ」というポジティブな感情に変換しましょう。
生前整理は「家族への思いやり」
「もし自分に何かあった時、子供たちが困らないように」という視点を持つことも大切です。膨大な遺品整理は家族にとって大きな負担となります。「これからの人生を身軽に楽しむため」という前向きな生前整理を少しずつ進めましょう。
【ご家族へ】親の家の片付けをサポートする心構え

子供世代が実家の片付けを手伝う際、衝突してしまうことがよくあります。スムーズに進めるためのポイントを押さえておきましょう。
- 「捨てる」と言わない: 「安全のために片付けよう」「使いやすく移動しよう」と、ポジティブな言葉に言い換えます。
- 親の価値観を否定しない: 「こんなガラクタ」と言いたくなってもグッと我慢。「大切にしていたんだね」と一度共感してから、「でも、つまづくと危ないから」と提案します。
- 判断を急かさない: 親のペースを尊重し、イライラせずに見守ります。どうしても進まない時は、プロの整理収納アドバイザーの手を借りるのも一つの手です。
まとめ
高齢世帯の片付けは、これからの暮らしを安全で快適なものにするための「前向きな準備」です。
- 最優先は安全: 床置きをなくし、転倒リスクを減らす。
- 無理は禁物: 1日15分、小さな範囲からコツコツと。
- 家族の協力: 否定せず、安全確保を共通の目的にする。
思い出を大切にしながら、身軽で安全な住環境を整え、安心して毎日を過ごしましょう。

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