動物園で見かける、つぶらな瞳と長いまつ毛が可愛らしいダチョウ。
しかし、ネットやテレビの特集などで「ダチョウはアホで頭が悪い」という噂を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、ダチョウには人間の常識では測れない、少しマヌケで「アホ」と呼ばれてしまうような愛すべき生態があります。
脳みそが目玉より小さいと言われ、ダチョウ研究の第一人者から見ても「家族の顔すら忘れているのではないか?」と思えるほど、不思議な行動をとるのです。
しかし、ただ頭が悪いだけのマヌケな鳥ではありません。
実はそのマイペースな「アホさ」と引き換えに手に入れた驚異の免疫力で、私たち人類を救うかもしれない、とんでもなく凄い能力を秘めているのです。
この記事では、思わずクスッと笑ってしまうダチョウの「アホなエピソード」から、医療現場でも大注目の「ダチョウ抗体」の最新事情まで、分かりやすく解説していきます。
ダチョウは本当にアホで頭が悪い?驚きのエピソード
ダチョウの生態を長年研究している塚本康浩教授(京都府立大学学長)の著書などでも、ダチョウの「アホさ加減」は愛情たっぷりに語られています。
ここでは、人間の目から見ると「本当に何も考えていないのでは?」と疑いたくなるような、驚愕のエピソードをいくつかご紹介しましょう。
脳みそが目玉より小さいって本当?
「ダチョウは脳みそが小さいからアホなのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は、ダチョウの脳のサイズについては、昔からよく知られている興味深いトリビアがあります。
一般的に、ダチョウの大きな目玉は1つあたり約60グラムあると言われています。
それに対して、脳みその重さはたったの約40グラムほど。
つまり、自分の目玉1つ分よりも脳みその方が軽いという、非常にアンバランスな計算になります。
体長2メートルを超える巨大な体を持っているにもかかわらず、脳みそはスズメの涙ほど。
物事を深く考えるための大脳が極端に小さいため、本能のままに行動しているように見え、それが後述する「アホ」と呼ばれる所以に繋がっていると考えられています。
家族の顔を忘れる?記憶力ゼロの悲劇
ダチョウの記憶力については、塚本教授の著書でも「自分の家族の顔すら覚えられないレベル」とユーモアを交えて語られています。
毎日エサをあげて、一生懸命お世話をしてくれる飼育員さんの顔も、翌日にはすっかり忘れて「あんた誰?」とでも言いたげな不思議そうな顔をするといいます。
野生の群れでパニックになって走り出し、別の群れと混ざってしまっても、自分のパートナーや子どもが入れ替わったことにすら気づかないのだとか。
本当にすっかり忘れているのか、それとも単に他者に興味がないだけなのかは分かりませんが、せっかくお世話をしている人間からすると少し寂しい気もします。
しかし、過去を引きずらずに前を向いて生きていけるという意味では、過酷な自然界を生き抜くための一つの才能と言えるかもしれませんね。
みんなで走れば怖くない?行き当たりばったりの行動
ダチョウの行動は常に行き当たりばったりで、人間の目には「先のことなど何も考えていない」ように映ります。
たとえば、群れの中の1羽がなんとなく気まぐれで走り出すと、周りのダチョウたちも「なんだか分からないけど走らなきゃ!」とばかりに、理由もなく一斉についていきます。
先頭を走っているのが群れのリーダーというわけでもなく、ただつられて走っているだけです。
「3歩走れば走っている理由を忘れる」と例えられるほど目的なく全力疾走し、群れごとよく遭難してしまうのもダチョウならではのエピソードです。
常に「今この瞬間」だけを本能で生きている、ある意味で潔い鳥なのです。
ケガしても平気?痛みに鈍感すぎる生態
一般的に鳥類は清潔好きで知られていますが、ダチョウは自身のメンテナンスをあまりしません。
体に泥や自分のフンがついたまま、平気な顔をして走り回っています。
さらに驚くべきは、痛みにものすごく鈍感に見える点です。
塚本教授の観察によると、お尻に大きなケガをしてカラスにつっつかれて血が出ていても、痛がるどころか、むしゃむしゃとエサを食べ続けていたそうです。
鳥類にも痛覚はあるはずですが、普通なら命に関わるような状況でも気にしないのは、神経が太いのか、それとも痛みを気にしないほど食欲が勝っているのか。
見ている人間の方がハラハラして「カラスを追い払わんかい!」とツッコミを入れたくなってしまいます。
参考:残念でない生き物:ダチョウに学ぶ(日本食品ペプチド研究所)
悪魔の儀式?不思議な求愛ダンスと子育て
ダチョウの「アホっぽさ」は、恋の季節や子育ての場面でも存分に発揮されます。
鳥類の求愛といえば、美しい鳴き声や華麗なダンスを想像しますが、ダチョウは鳴くことができません。
オスはメスの前で首をくねくねさせながら座り込み、羽を広げてバサバサと踊り出します。
それに対してメスは、地面にへばりついて首をヌーッと伸ばし、口をパクパクさせるだけ。
塚本教授いわく、その様子はまるで「悪魔を呼び寄せる儀式」か「妖怪」のようで、見ていると何とも言えない気持ちになるそうです。
また、子育てのシステムも非常に変わっています。
1羽のオスに対して複数のメスがつき、1つの巣にみんなで卵を産み落とします。
メスたちは自分の産んだ卵を細かく区別することなく、みんなで適当に温めて、孵ったヒナを群れ全体で育てるという、非常に大雑把で平和な子育てを行っています。
アホだけどすごい!ダチョウの基本スペック
ここまで人間目線でのアホなエピソードばかりを紹介してきましたが、生き物としてのスペックは鳥類の中でも群を抜いています。
現在地球上に生きている鳥の中では最大サイズを誇り、身体能力はまさに規格外と呼ぶにふさわしいものです。
他の鳥類とは次元が違う生態
ダチョウの基本的な生態を分かりやすく表にまとめました。
改めて数字で見てみると、いかに特殊でポテンシャルの高い鳥であるかが分かります。
| 項目 | ダチョウのスペック詳細 |
| 体長(身長) | オス:約210〜275cm / メス:約175〜190cm |
| 体重 | 約100〜140kg(鳥類最大) |
| 走る速度 | 最高時速 約60〜70km(2足歩行の動物で最速) |
| 脳の重さ | 約40g(一般的に言われている目安) |
| 目玉の重さ | 約60g(1個あたりの目安) |
| 寿命 | 約40〜60年 |
体が大きすぎて空を飛ぶことはできませんが、その代わりに敵から逃げるための強靭な脚力を手に入れました。
時速70キロ近いスピードで走り続けることができる驚異的なスタミナと、60年近く生きる長寿っぷり。
行き当たりばったりな性格でありながら過酷なサバンナで生き残ってこられたのは、この圧倒的なフィジカルのおかげなのかもしれません。
鈍感でアホなダチョウが人類を救う?ダチョウ抗体の秘密
痛みに鈍感でマイペースなダチョウですが、実はその性質こそが、人類を救うかもしれない「究極の武器」を生み出すカギになっていました。
近年、テレビ番組「情熱大陸」や「激レアさんを連れてきた。」などでも大きく取り上げられ、世界的にも注目を集めているのが「ダチョウ抗体」です。
驚異の免疫力!病気で死ぬことがほぼない
ダチョウは、どれだけ不潔な環境で暮らしていても、大ケガをして傷口がぱっくり開いていても、感染症などで死ぬことがほとんどありません。
細胞の働きが非常に活発で、傷口が信じられないスピードで治っていくのです。
この「驚異的な免疫力」と「病気への圧倒的な強さ」に目をつけたのが、ダチョウ研究の第一人者である塚本康浩教授でした。
教授は長年の研究の末、ダチョウが体内で作り出す「抗体(病原体を退治する物質)」の能力が、他の動物と比べてズバ抜けて高いことを発見したのです。
ダチョウの体は、強力なウイルスや細菌が入ってきても、即座にそれを無力化するシステムを備えていました。
ダチョウ抗体マスクなど医療や美容への応用
塚本教授のチームは、ダチョウに無害化した病原体(抗原)を注射し、体内で作られた抗体を「ダチョウが産んだ卵」から抽出する技術を確立しました。
ダチョウ本体から血液を抜いて命を奪うことなく、大きくてたくさん産まれる卵の黄身の部分から、質の高い抗体を安価で大量に取り出せるようになった画期的な発明です。
現在、この「ダチョウ抗体」は私たちの身近な様々な分野で実用化されています。
スギ花粉やインフルエンザウイルス、さらには新型コロナウイルスの働きを抑える「ダチョウ抗体マスク」や「抗菌スプレー」は、ドラッグストアなどでもよく見かけるようになりました。
さらに、アトピー性皮膚炎の原因菌を抑える化粧品や、虫歯菌へのアプローチ、がんの予防研究など、ダチョウの力は医療・美容業界で無限の可能性を秘めています。
ダチョウ愛にあふれる塚本康浩教授の著書紹介
「もっとダチョウのアホな生態を知りたい!」「ダチョウ抗体の秘密を詳しく読みたい!」と興味を持たれた方には、塚本康浩教授が執筆した書籍がおすすめです。
関西弁の柔らかな語り口で書かれており、ゲラゲラ笑いながらも本格的な科学の知識を学べます。
『ダチョウはアホだが役に立つ』をはじめとする名著
特におすすめなのが、タイトルからして惹きつけられる『ダチョウはアホだが役に立つ』(幻冬舎)です。
ダチョウの規格外のエピソードと、研究開発の裏側にある苦労、そして塚本教授の底知れぬ「ダチョウ愛」がたっぷりと詰まった一冊です。
他にも『ダチョウの卵で、人類を救います』(小学館)や『ダチョウ力』(朝日新聞出版)など、ダチョウパワーの秘密に迫る数々の著書が出版されています。
図書館のペットコーナーや動物コーナーに置かれていることも多いので、ぜひ一度手に取って読んでみてください。
読み終える頃には、きっとあなたもダチョウのことが愛おしくてたまらなくなるはずです。
まとめ
ダチョウが「アホで頭が悪い」と呼ばれるのには、ちゃんとした理由(?)があったようです。
脳みそのサイズが小さく、忘れっぽく、痛みに鈍感に見えるほどマイペースで、常に行き当たりばったりな日々を送っています。
しかし、そのストレスフリーな性格がゆえに発達した「最強の免疫力」は、ダチョウ抗体としていま私たちの健康を守る強力な武器に生まれ変わっています。
「アホアホ」とバカにされながら日陰の道を歩んできた鳥が、実は世界の人類を救う力を持っていたというストーリーは、なんともロマンがありますよね。
次に動物園でダチョウを見かけたときは、「アホやなぁ」と笑いながらも、心の中で「いつも健康を守ってくれてありがとう」と感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。
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