お正月や春の風物詩である凧(たこ)。子供に「凧ってどうやって数えるの?」と聞かれたり、書き言葉として記す際に迷ったりしたことはないでしょうか。
結論からお伝えすると、凧の最も一般的な数え方は「枚(まい)」です。
しかし、凧の形状や状況によっては「枚」以外の数え方が適切な場合もあります。日本語には美しい使い分けが存在するため、これらを知っておくと教養として役立ちます。
この記事では、4種類の凧の数え方とその使い分け、意外と知らない「イカ」から「タコ」への名称変化の歴史、そして現代における凧の種類について分かりやすく解説します。
凧の数え方は主に4種類!形状と場面による正しい使い分け
普段何気なく使っている「枚」以外にも、凧にはいくつかの助数詞(物を数える単位)が使われます。それぞれの単位が持つ意味と、どのような場面で使うのが適切かを見ていきましょう。
まずは、4つの数え方の違いをまとめた比較表をご覧ください。
| 数え方 (単位) | 読み方 | 主な対象・使用シーン | 特徴・理由 |
|---|---|---|---|
| 枚 | まい | 一般的な凧全般 | 平面的な形状をしているため |
| 張 | はり | 和凧、職人が作った凧 | 竹や木枠に紙・布が「張って」あるため |
| 連 | れん | 連凧(連なってる凧) | 糸で複数がつながっているため |
| 個 | こ | 立体凧、購入時の品数 | 形状を問わず事務的に数える場合 |
最も一般的で無難な数え方は「枚(まい)」
日常生活において最も頻繁に使われるのが「枚」です。凧は骨組みに紙やビニールを貼り付けた「平面的な形状」をしているため、紙類や皿、シャツなどと同じく「枚」で数えるのが基本です。
ニュースや天気予報、日常会話で使う分には、この「枚」を使っておけば間違いありません。和凧であれ洋凧(カイト)であれ、広く適用できる便利な単位です。
職人の技や構造を強調する「張(はり)」
少し格式高い表現や、伝統的な和凧に対して使われるのが「張」です。「張」は、弓や琴、太鼓、テントなど「枠に何かを強く張り詰めたもの」を数える際に用いられます。
凧も竹ひごなどの骨組みに和紙をピンと張り詰めて作ることから、この数え方が定着しました。伝統工芸品としての側面を強調したい場合や、愛好家の間では「自慢の凧を1張作り上げた」といったように使われることが多く、粋な表現と言えます。
複数の凧がつながっている場合は「連(れん)」
数多くの凧が一本の糸でつながっている「連凧(れんだこ)」の場合は、「連」を用います。
この場合、つながった全体を指して「1連、2連」と数えます。一方で、その連凧を構成している一つひとつの凧を指す場合は「枚」を使って数えます。「50枚の凧がつながった1連の連凧」という使い分けをすると、より正確に伝わります。
形状に関わらず使える事務的な「個(こ)」
近年の凧には、伝統的な平面の形をしていないものも増えています。例えば、空気を入れて膨らませるタイプや、複雑な立体構造を持つものです。
「枚」や「張」で数えるには違和感がある形状の場合や、商品の在庫数として扱う場合には「個」が使われます。特に決まりを気にせず、シンプルに物として数えたい場合に便利な単位です。
日本における凧の歴史と「タコ」と呼ばれるようになった由来
現在では当たり前のように「凧(たこ)」と呼んでいますが、かつては全く別の名前で呼ばれていました。なぜ名前が変わったのか、その背景には江戸時代の興味深い事情があります。
平安時代の「紙鳶」から江戸時代の「イカのぼり」へ
凧の起源は古代中国にあり、当時は通信手段や軍事目的で使われていた「紙鳶(しえん)」が日本に伝わったとされています。平安時代には貴族の遊びとして親しまれました。
その後、時代が進むにつれて庶民にも普及し、形がイカに似ており足(尾)を垂らして飛ぶ姿から、江戸時代前期には「イカのぼり」または単に「イカ」と呼ばれていました。
禁止令を回避するための江戸っ子のとんち
江戸時代中期になると「イカのぼり」は大ブームとなりました。しかし、あまりに流行しすぎて喧嘩が起きたり、落下した凧が参勤交代の列を妨害したり、屋根を壊したりする事故が多発しました。
これを受け、幕府はたびたび「イカのぼり禁止令」を出しました。しかし、遊びを諦めきれない江戸っ子たちは、「これはイカではない、タコだ!」と言い逃れをするようになったと言われています(諸説あり)。
この屁理屈とも言えるとんちが広まり、関西では依然として「イカ」と呼ばれることが多かったものの、関東を中心に「タコ」という名称が定着していったのです。ちなみに「凧」という漢字は、「風(かぜ)」と「巾(ぬの)」を組み合わせて日本で作られた「国字」です。
なぜお正月に凧揚げをするのか?込められた3つの願い
現代ではお正月の遊びというイメージが強い凧揚げですが、本来は季節を問わず楽しまれていました。お正月に定着した背景には、いくつかの縁起の良い理由があります。
立春の健康祈願と厄払いの意味
昔から「立春の季に空に向くは養生のひとつ」と言われ、春の初めに空を見上げることは健康に良いとされていました。
また、凧糸を切って空高く飛ばすことで、その年の厄災を一緒に飛ばしてしまう「厄払い」の意味もあります。願い事を書いた凧を天に届けるという宗教的な側面も持ち合わせていました。
子供の健やかな成長を願う風習
江戸時代には、男の子が生まれた家でその子の成長を祝い、将来の出世を願って凧を揚げる風習が広まりました。
天高く舞い上がる凧のように、子供が元気に育ってほしいという親心が込められています。現在でも地域によっては、初節句に家紋や名前を入れた大凧を揚げる行事が残っています。
【種類別】伝統的な和凧から最新のスポーツカイトまで
「凧」と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。ここでは、代表的な4つの種類について、その特徴と楽しみ方を解説します。
日本の伝統と地域性を感じる「和凧(角凧・奴凧)」
竹の骨組みに和紙を貼った、日本古来の凧です。長方形の「角凧(かくたこ)」や、人の姿をした「奴凧(やっこだこ)」が有名です。
浮世絵や武者絵、縁起の良い文字が描かれていることが多く、芸術性が高いのが特徴です。揚げるには適度な風と技術が必要ですが、風に乗った時の安定感と美しさは格別です。
昭和世代には懐かしい「ゲイラカイト(三角形の凧)」
1970年代に日本で爆発的なブームとなったのが、アメリカ・ゲイラ社が発売した「ゲイラカイト」です。三角形の翼を持ち、ビニール製で非常に軽く、NASAの前身であるNACAの元技術者が開発したことから「NASAの技術を応用」という触れ込みで人気を博しました。
現在では「デルタカイト(三角凧)」とも呼ばれますが、弱い風でも簡単に揚がるため、子供や初心者に最もおすすめのタイプです。
操作性を楽しむ「スポーツカイト(スタントカイト)」
2本以上の糸(ライン)を使って操作するタイプの凧です。ただ揚げるだけでなく、左右に旋回させたり、急降下させたりと、自在にコントロールできるのが最大の魅力です。
ある程度の練習が必要ですが、思うように動かせた時の爽快感は他の凧にはないものです。大人の趣味としても人気があります。
組み立て不要で壊れにくい「軟体凧(ソフトカイト)」
骨組み(フレーム)がなく、布製の袋状の構造に風を受けて膨らむことで揚がる凧です。パラグライダーのような仕組みから「パラフォイルカイト」とも呼ばれます。
最大の特徴は、骨組みがないため折れる心配がなく、コンパクトに折りたたんで持ち運べる点です。タコや海洋生物を模したユニークなデザインのものも多く販売されています。
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まとめ
凧の数え方は、平らな形状からくる「枚」が基本ですが、伝統的な文脈では「張」、連なっているものは「連」、形状を問わない場合は「個」と使い分けることができます。
また、かつて「イカ」と呼ばれていたものが、幕府の禁止令を回避するために「タコ」へと呼び名が変わったという歴史的背景も、凧揚げの際のちょっとした話題になるはずです。
お正月には、子供の成長や健康への願いを込めて、ぜひ空を見上げてみてください。伝統的な和凧から扱いやすいソフトカイトまで、自分に合った凧を選んで、爽やかな風を感じてみてはいかがでしょうか。

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