ニュースや役所の書類で目にする「出生」という言葉。ふと声に出して読むとき、「しゅっせい」と言えばいいのか、「しゅっしょう」が正しいのか、迷った経験はありませんか?
結論から言うと、「しゅっせい」と「しゅっしょう」、どちらで読んでも正解です。
しかし、実は「本来の正しい読み方」と「広く使われている読み方」には明確な違いがあり、シチュエーションによって使い分けるのが大人のマナーとされています。この記事では、2つの読み方が生まれた背景や、履歴書・公的な場での使い分けについて分かりやすく解説します。
「出生」の読み方は「しゅっせい」と「しゅっしょう」どっちも正解
冒頭でもお伝えした通り、現代の日本語において「出生」はどちらの読み方でも間違いではありません。辞書を引いてみると、多くの広辞苑やデジタル大辞泉などでは両方の読み方が記載されています。
では、なぜ2通りの読み方が存在しているのでしょうか。その鍵は「言葉の歴史」と「言いやすさ」にあります。
本来の読み方は「しゅっしょう」だった
言葉の成り立ちから厳密に正誤を問うならば、本来の正しい読み方は「しゅっしょう」となります。
「生」という漢字は、仏教用語や古い言葉の響きとして「ショウ」と読むのが伝統的でした。「一生(いっしょう)」や「殺生(せっしょう)」と読むのと同じルールです。古くからある言葉としての重みを重視する場合は、現在でも「しゅっしょう」が使われます。
現代で一般的なのは「しゅっせい」
一方で、現代の日常会話において圧倒的に多く使われているのは「しゅっせい」です。
これは「慣用音(かんようおん)」と呼ばれるもので、多くの人が言いやすいように読み方を変えて定着した結果、正しい読み方として認められたパターンです。「生」を「セイ」と読む単語(生活、生命など)が多いため、自然と「しゅっせい」という読み方が広まりました。
言葉は時代とともに変化する生き物ですので、今では「しゅっせい」と読んでも全く恥ずかしくありません。
【比較表】シーン別「しゅっせい」と「しゅっしょう」の使い分け
どちらも正解とはいえ、TPO(時と所と場合)に合わせた使い分けができるとスマートです。特に公的な書類やニュースに関わる場面では、一定の傾向があります。
主な使い分けの基準を表にまとめました。
| シーン・単語 | おすすめの読み方 | 備考・ニュアンス |
|---|---|---|
| 役所・公的書類 (出生届・出生証明書) | しゅっしょう | 法律用語や公的な手続きでは、伝統的な読み方が好まれる傾向にあります。「しゅっしょうとどけ」と読むのが正式とされます。 |
| 医療現場 (出生体重・出生児) | しゅっしょう | 学会や医療従事者の間では、定義を明確にするため「しゅっしょう」を使うことが多いです。 |
| ニュース・統計 (合計特殊出生率など) | どちらも可 (しゅっしょう推奨) | アナウンサーは基本的に「しゅっしょう」と読みますが、近年は一般への伝わりやすさを重視し「しゅっせい」も許容されています。 |
| 日常・ビジネス (履歴書の出生地など) | しゅっせい | 一般的な会話や面接などで「出生地(しゅっせいち)」と読むのは自然であり、違和感はありません。 |
なぜ役所やニュースでは「しゅっしょう」が使われるのか
日常会話では「しゅっせい」が一般的なのに、なぜ役所の窓口やテレビのニュースでは、あえて言いにくい「しゅっしょう」を使うのでしょうか。これには明確な理由があります。
「出征(しゅっせい)」との混同を避けるため
もっとも大きな理由は、同音異義語である「出征」との聞き間違いを防ぐためです。
「出征」とは、戦争に行くことを意味します。現代では日常的に使われる言葉ではありませんが、かつては「出生(命が生まれる)」と「出征(戦地へ行く)」で意味が正反対になってしまうため、明確に区別する必要がありました。
特に音声で情報を伝える放送業界や、正確さが求められる公的な場では、その名残として現在も区別しやすい「しゅっしょう」が好まれています。
NHK放送文化研究所の見解
NHKなどの放送機関でも、基本的には伝統的な読み方である「しゅっしょう」を優先する傾向があります。
ただし、近年の「ことばのゆれ」に関する調査では、一般の人々の9割近くが「しゅっせい」と読んでいるというデータもあります。そのため、最近ではそこまで厳密ではなく、文脈に応じて視聴者に伝わりやすい方を選ぶケースも増えているようです。
それでも、「出生届」を役所の窓口で出す際などは、「しゅっしょうとどけ」と言う方が担当者にはスムーズに伝わります。
他にもある!読み方が2つある漢字の豆知識
「出生」のように、本来の読み方と慣用音が混在している漢字は他にもたくさんあります。間違えやすいものをいくつかピックアップしました。
依存(いそん・いぞん)
本来は「いそん」ですが、現在は「いぞん」と読むのが一般的です。「存じる(ぞんじる)」や「共存(きょうぞん)」のように「存」を「ぞん」と読む言葉が多いため、自然と濁って読まれるようになったと言われています。
情緒(じょうしょ・じょうちょ)
本来は「じょうしょ」です。しかし、「緒」という漢字には慣用的に「ちょ」と読む傾向が生まれ、現在では「じょうちょ」という読み方も広く定着しています。今では「情緒不安定」などは「じょうちょ」と読む人の方が多いかもしれません。
早急(さっきゅう・そうきゅう)
本来は「さっきゅう」です。しかし、「早期(そうき)」などのイメージから「そうきゅう」と読む人が増え、現在ではどちらも正解とされています。
早急の読み方は「そうきゅう」「さっきゅう」どっち?正しい意味と使い分け
まとめ
「出生」の読み方について解説しました。
- 本来の読み方は「しゅっしょう」。
- 現代で一般的なのは「しゅっせい」。
- 役所や医療現場、ニュースでは伝統や誤解回避のために「しゅっしょう」が使われる。
- 日常会話や履歴書の話題などでは「しゅっせい」で問題ない。
結論として、日常生活で使う分には「しゅっせい」で全く問題ありません。ただ、役所で書類を提出するときや、改まった場でのスピーチなどでは、あえて「しゅっしょう」を使うことで、「言葉をよく知っている人だな」という印象を与えられるかもしれません。
場面に応じてスマートに使い分けてみてくださいね。

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