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拝啓・敬具の正しい使い方|ビジネスメールと手紙での基本マナー・書き方を解説【例文付】

拝啓・敬具の正しい使い方|ビジネスメールと手紙での基本マナー・書き方を解説【例文付】 仕事・ビジネス

「拝啓」や「敬具」という言葉、なんとなく知ってはいるけれど、いざ自分が使うとなると自信がない……そんな経験はありませんか?

特にビジネスシーンでは、メールや手紙での言葉遣いが、そのままあなたの「信頼度」に直結します。「メールでも拝啓って書くべき?」「敬具のあとには何を書くの?」といった疑問は、今のうちに解消しておきましょう。

この記事では、拝啓・敬具の正しい組み合わせから、ビジネスメールでの扱い、恥をかかない配置ルールまで、今日から使えるマナーを分かりやすく解説します。

結論から言うと、一般的なビジネスメールで「拝啓・敬具」は使いません。

しかし、例外や「知っておくべき大人のマナー」は存在します。相手に「しっかりしているな」と思われるためのポイントを、一緒に確認していきましょう。

結論:ビジネスメールで「拝啓・敬具」は原則不要

ビジネスパーソンが最も迷うポイントが、「日常のメールで頭語(拝啓など)と結語(敬具など)を使うべきか」という点です。冒頭でもお伝えした通り、基本的には不要と考えて問題ありません。

理由は明確で、メールというツール自体が「迅速さ」や「簡潔さ」を重視するコミュニケーション手段だからです。件名で用件を伝え、本文ですぐに本題に入ることが、相手の時間を奪わないための配慮とされています。

しかし、すべてのメールで不要かというと、そうではありません。相手との関係性やシーンによっては、メールであっても形式を重んじるケースが存在します。

メールでも「拝啓・敬具」を使ったほうが良い例外ケース

例外として、以下のような場面ではメール本文であっても「拝啓・敬具」を用いたほうが、より丁寧で誠実な印象を与えられます。

  • 初めて連絡を取る相手(特に格式高い業界や年配の方)
  • お詫びや謝罪をする場合
  • 式典の案内や、正式な依頼をする場合
  • 契約書などの重要書類をPDFで送付する場合の送付状

これらのケースでは、単なる業務連絡ではなく「手紙に近い重み」を持たせる必要があるため、あえて形式的な書き方を選びます。迷ったときは、「これを紙の手紙で送るとしたらどう書くか?」を基準に判断すると良いでしょう。

通常業務のチャットやメールでは「お世話になっております」で始め、「よろしくお願いいたします」で締めるのが、現代のビジネスにおける最適解です。

【一覧表】拝啓・敬具の正しい組み合わせと使い分け

「拝啓」と書いたら必ず「敬具」で結ぶ。これはセットで使うのが絶対のルールです。片方だけを使ったり、組み合わせを間違えたりするのはマナー違反となります。

実は、この「頭語(とうご)」と「結語(けつご)」には、相手との関係性や緊急度によっていくつかの種類があります。ビジネスで頻出する組み合わせを以下の表にまとめました。

種類頭語(書き出し)結語(締め)使用シーン・相手特徴
一般的拝啓(はいけい)敬具(けいぐ)一般的な手紙、ビジネス文書最も基本の形。迷ったらこれを使う。
より丁寧謹啓(きんけい)謹白(きんぱく)
敬白(けいはく)
目上の方、お客様、初めての挨拶最大級の敬意を表す。「拝啓」より改まった場面で。
省略・急用前略(ぜんりゃく)草々(そうそう)親しい間柄、取り急ぎの用件時候の挨拶を省いてすぐに本題に入る時に使う。目上には避ける。
緊急のお詫び急啓(きゅうけい)草々(そうそう)
敬具(けいぐ)
至急の謝罪、トラブル報告「急いで申し上げます」の意。時候の挨拶を省き、即座に謝罪に入る場合に使う。
返信拝復(はいふく)敬具(けいぐ)手紙への返信いただいた手紙への返事を書く時専用。

「前略・草々」を使う際の注意点

「前略」は「時候の挨拶(○○の候~など)を省略します」という意味を持っています。そのため、前略を使っているのに時候の挨拶を書いてしまうと、意味が重複しておかしな文章になってしまいます。

また、いくら急ぎの用件であっても、謝罪文やお礼状で「前略」を使うのはNGです。相手への敬意を省略していると受け取られかねないため、丁寧なシーンでは必ず「拝啓」か「謹啓」を選んでください。

恥をかかない「正しい書き方」と文章構成の位置

言葉の選び方が分かっても、紙面の「どこに」配置すればいいのか迷うことは意外と多いものです。縦書き(便箋)と横書き(ビジネス文書・メール)では視線の流れが異なりますが、基本的なルールは共通しています。

正しい構成順序は以下の通りです。

  1. 頭語(拝啓):1行目の行頭(上寄せ)
  2. 時候の挨拶:頭語から1文字空けるか、改行して書き始める
  3. 相手を気遣う言葉:「貴社におかれましては~」など
  4. 本文(主文):「さて、」「このたびは、」などの転語で始める
  5. 結びの挨拶:「末筆ながら~」「今後とも~」など
  6. 結語(敬具):本文の最後から改行し、行末(下寄せ)
  7. 日付
  8. 署名(差出人名)
  9. 宛名

横書きビジネス文書でのポイント

Wordなどで作成する横書きの「送付状」や「案内状」の場合、「拝啓」は左上に配置し、「敬具」は右下に配置します。

よくあるミスとして、本文と同じ左揃えのまま「敬具」と書いてしまうケースが見受けられます。Wordの機能で「右揃え」にするだけで、文書全体のバランスがグッと引き締まり、プロフェッショナルな印象になります。

また、縦書きの便箋を使う場合は、行頭に「拝啓」、最後の行の下部に「敬具」が来るように調整しましょう。この際、敬具が行の一番上に来てしまわないよう、改行のタイミングを調整するのが美しい手紙を書くコツです。

「拝啓」のあとに続く「時候の挨拶」の選び方

「拝啓」と書いた直後に必要となるのが、「時候の挨拶」です。季節感を表すこの言葉は、日本ならではの美しい文化ですが、月ごとに変わるため「何を書けばいいの?」と悩みやすいポイントでもあります。

ビジネスシーンで使いやすい、代表的な挨拶をピックアップしました。

月別の代表的な時候の挨拶(書き出し)

  • 1月:新春の候、厳寒の候
  • 4月:陽春の候、桜花の候
  • 7月:盛夏の候、猛暑の候
  • 10月:秋色の候、紅葉の候

これらは「~の候(こう)」や「~のみぎり」と繋げ、「貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます」といった定型句に続けます。

「年末の候」はいつからいつまで?正しい使用時期とビジネス例文・マナー

季節を問わずに使える「万能フレーズ」

季節の変わり目で言葉選びに迷う場合や、通年で使える表現を知りたい場合は、以下のフレーズが便利です。

  • 「時下(じか)、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。」

「時下」には「このところ」「現在」という意味があり、季節を問わず使用できます。ビジネス文書テンプレートなどでよく見かけるのは、この汎用性の高さが理由です。ただし、情緒には欠けるため、大切なお客様への手紙などでは、やはり季節に合わせた言葉を選ぶほうが好印象です。

シーン別!そのまま使える例文テンプレート

ここでは、コピー&ペーストして一部を書き換えるだけで使える、実践的な例文をご紹介します。

お礼状・挨拶状(スタンダード)

もっとも汎用性が高い、基本の形です。

拝啓

陽春の候、貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、このたびは(件名)につきまして、多大なるご協力をいただき誠にありがとうございました。
おかげさまで、無事にプロジェクトを完了することができました。

今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
末筆ながら、貴社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。

敬具

お詫び状(丁寧・フォーマル)

トラブルのお詫びなど、誠意を見せる必要がある場合は「謹啓・謹白」の使用をおすすめします。

謹啓

時下、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は多大なるご厚情を賜り、厚く感謝申し上げます。

さて、このたびは弊社の不手際により、貴社に多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
(原因や今後の対策などを簡潔に記載)

今後はこのような事態を二度と起こさぬよう、管理体制の強化に努めてまいる所存です。
何卒、ご容赦賜りますよう伏してお願い申し上げます。

略儀ながら書中をもちまして、お詫び申し上げます。

謹白

※緊急のお詫びをする場合

重大なトラブルなど、一刻を争う場合は、悠長に時候の挨拶をしている場合ではありません。その際は「急啓(きゅうけい)」を使い、時候の挨拶を省いてすぐに謝罪に入ります。

急啓

このたびは、弊社の配送ミスにより多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。(本文へ続く)

草々

「形式(謹啓)をとるか」「スピード(急啓)をとるか」は、トラブルの緊急度に合わせて判断しましょう。

拝啓・敬具に関するよくある質問(FAQ)

最後に、多くの方が疑問に感じる細かいポイントについて回答します。

Q
女性は「かしこ」を使うべきですか?
A

ビジネス文書では使いません。

「かしこ」は、女性がプライベートな手紙を書く際に使う結語(頭語は不要、または前略など)です。親しい間柄であれば柔らかい印象になりますが、公式なビジネス文書では「拝啓・敬具」を使うのが基本マナーです。

Q
年賀状や暑中見舞いにも必要ですか?
A

基本的には不要です。

年賀状には「謹賀新年」などの賀詞があるため、頭語は使いません。暑中見舞いや残暑見舞いも、季節の挨拶がメインとなるため、拝啓・敬具は省略するのが一般的です。

Q
メールでPDFの文書を送る場合、本文にも拝啓は必要?
A

PDFの中に記載があれば、メール本文には不要です。

例えば、請求書や正式な案内状をPDF添付する場合、PDF内の文書には「拝啓・敬具」を用いて正式な書式にします。その代わり、メール本文(カバーレター)は「お世話になっております」から始まる通常のビジネスメール形式にし、「添付の書類をご確認ください」と案内するのがスマートです。

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まとめ

「拝啓」や「敬具」は、単なる形式的なルールではありません。その根底にあるのは、「相手に対する敬意」と「距離感への配慮」です。

  • 一般的なビジネスメールでは原則不要。
  • 手紙や改まった文書では「拝啓・敬具」が基本セット。
  • 目上の方やお詫びでは「謹啓・謹白」で最大級の敬意を。
  • 配置や組み合わせを間違えないことが、信頼への第一歩。

デジタル化が進む現代だからこそ、ここぞという場面で正しい作法の手紙が届くと、相手の心に強く残ります。

形式にとらわれすぎて内容が疎かになってはいけませんが、マナーを守ることは、あなたの言葉を相手に正しく届けるための「助け」になります。ぜひ、今回のポイントを参考に、自信を持って筆を執ってみてください。

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