「このPCはWindows 11のシステム要件を満たしていません」
更新画面でこの冷酷なメッセージが表示され、ガッカリした経験はありませんか?
特にCPUが第7世代Intel Core以前、またはAMD Ryzen 1000番台以前のパソコンをお使いの方は、性能的にはまだ使えるのに、なぜOSのアップデートができないのか納得がいかないはずです。
最大の壁となっているのが「CPUの世代」と「セキュリティ要件」です。
結論から言うと、公式非対応のCPUであっても、Windows 11をインストールする方法は存在します。
しかし、そこにはリスクも伴います。
この記事では、なぜあなたのCPUが弾かれるのかという理由から、メーカーの制限を回避してインストールする「裏技」、そして安全に使い続けるための現実的な選択肢までを分かりやすく解説します。
本記事はこんな方におすすめ:
- CPUが第7世代以前で「非対応」と診断された方
- 2017年以前に購入したPCをお使いの方
- 古いCPUでWindows 11を動かすリスクを知りたい方
なお、「このPCはWindows 11を実行できません」というエラーが出た場合で、CPUは比較的新しいがTPMやセキュアブートが原因の場合は、こちらの記事で正規の解決法を詳しく解説しています。
Windows11の厳しいCPU要件と「非対応」と判定される理由
Windows 11は、歴代のWindowsの中でも特にハードウェア要件が厳しく設定されています。
「動作速度(スペック)」の問題だけではなく、「セキュリティ」の観点で足切りされているのが大きな特徴です。まずは、なぜ多くのパソコンがアップグレードできないのか、その背景を整理しましょう。
公式にサポートされているCPUの境界線と詳細リスト
Microsoftが定めているWindows 11の対応CPUは、基本的に以下の世代以降です。
Intel Coreプロセッサ
対応:第8世代(Coffee Lake)以降
| 世代 | 発売年 | 代表的なモデル | Windows 11対応 |
|---|---|---|---|
| 第6世代 | 2015年 | Core i7-6700 | ❌ 非対応 |
| 第7世代 | 2016年 | Core i7-7700 | ❌ 非対応 |
| 第8世代 | 2017年 | Core i7-8700 | ✅ 対応 |
| 第9世代以降 | 2018年~ | Core i7-9700以降 | ✅ 対応 |
AMD Ryzenプロセッサ
対応:2000シリーズ(Zen+)以降
| シリーズ | アーキテクチャ | 発売年 | Windows 11対応 |
|---|---|---|---|
| Ryzen 1000 | Zen | 2017年 | ❌ 非対応 |
| Ryzen 2000 | Zen+ | 2018年 | ✅ 対応 |
| Ryzen 3000以降 | Zen 2~ | 2019年~ | ✅ 対応 |
注意: Ryzen 2000シリーズでも、末尾が「G」のAPU(Ryzen 5 2400G、Ryzen 3 2200Gなど)は第1世代(Zen)アーキテクチャのため非対応です。
つまり、2017年以前に発売されたパソコンの多くは、性能がどれだけ高くても「非対応」と判定されます。
例えば、第7世代のCore i7-7700(高性能)よりも、第8世代のCore i3-8100(普及機)の方が、Windows 11への適性があると判断されるのです。これは処理能力の差ではなく、後述するセキュリティ機能への対応状況が影響しています。
なぜMicrosoftは古いCPUを切り捨てたのか
これほど厳しい制限を設けた主な理由は「セキュリティの強化」です。
昨今のサイバー攻撃は高度化しており、OS(ソフトウェア)だけの対策では防ぎきれないケースが増えています。そこで、CPU(ハードウェア)レベルでの防御機能が必須となりました。
特に重要なのが「VBS(仮想化ベースのセキュリティ)」や「HVCI」といった機能です。
第7世代以前のCPUでもこれらの機能を使うことは可能ですが、処理が重くなり、パソコンの動作が極端に遅くなる可能性があります。
「安全、かつ快適に動くこと」を保証できるラインとして、第8世代以降という基準が設けられました。
参考:Windows 11 の仕様とシステム要件(Microsoft公式サイト)
自分のCPU世代を一瞬で見分ける方法と確認ツール
「自分のパソコンが第何世代なのか分からない」という方も多いでしょう。
専用ツールを使うのが確実ですが、型番を見るだけでも簡単に見分けることができます。ここでは、確実にCPUの対応状況をチェックする手順をご紹介します。
Intel CPUの型番の見方
キーボードの「Windowsキー」+「X」を押し、「システム」を選ぶとプロセッサ名が表示されます。
ここにある数字の並びに注目してください。
- Core i7-8700 → 「8」から始まるので第8世代(対応)
- Core i5-7200U → 「7」から始まるので第7世代(非対応)
- Core i7-6700 → 「6」から始まるので第6世代(非対応)
ハイフンの直後の数字が世代を表しています。「8000番台以降ならOK」と覚えておけば間違いありません。ただし、CeleronやPentiumの場合は命名規則が異なるため、公式サイトのリストと照らし合わせる必要があります。
公式「PC正常性チェックアプリ」での最終確認
目視での確認に自信がない場合は、Microsoftが配布している「PC正常性チェックアプリ」使いましょう。
このツールを使えば、CPUだけでなく、メモリやストレージ、TPM 2.0といった他の要件も一括で診断してくれます。
参考:PC 正常性チェック アプリの使用方法(Microsoft サポート)
手順:
- Microsoft公式サイトからアプリをダウンロードしてインストール。
- アプリを起動し、「今すぐチェック」ボタンをクリック。
- 非対応の場合は「このPCはWindows 11の要件を満たしていません」と表示され、具体的な原因(CPUモデルやTPMなど)が指摘されます。
もしここで「TPM 2.0」だけがNGで、CPUはOKだった場合は、BIOS設定を変更するだけで解決する可能性があります。
CPUは対応していてもTPMやセキュアブートが原因の場合
PC正常性チェックで「TPM 2.0」や「セキュアブート」だけが引っかかっている場合は、BIOS設定を変更するだけで解決する可能性があります。
簡易チェック:CPUは対応しているか?
- Intel Core 第8世代以降(8000番台~)→ 対応している
- AMD Ryzen 2000番台以降 → 対応している
もしCPUは対応しているのにエラーが出る場合は、まず以下を試してください。
- PCの電源を入れ、メーカーロゴ表示中にF2またはDeleteキーを連打してBIOSに入る
- 「Security」タブで「TPM」または「PTT」(Intel) / 「fTPM」(AMD)を探す
- 「Disabled」になっていれば「Enabled」に変更
- 同じく「Secure Boot」も「Enabled」に変更
- F10で保存して再起動
この設定変更だけでWindows 11の要件を満たせる場合があります。
より詳しいBIOS設定方法は、「このPCはWindows 11を実行できません」エラー解決ガイドをご覧ください。
ここから先は、CPUが第7世代以前で完全に非対応の場合の対処法を解説します。
非対応CPUのPCにWindows11をインストールする「回避策」
公式には「非対応」とされたCPUでも、実はWindows 11をインストールする方法がいくつか存在します。
ここでは、一般的に知られているレジストリ編集による方法と、便利なツールを使った方法を紹介します。
※実行は自己責任となります。必ずデータのバックアップを取ってから行ってください。
方法1:レジストリ編集でチェックを回避(※注意あり)
【2025年12月時点の重要な更新】
この方法は以前Microsoft公式ドキュメントで紹介されていましたが、Windows 11 バージョン24H2以降、公式記述は削除されました。
現時点でも多くのPCで機能していますが、
- ✅ 現在でも使える可能性が高い
- ⚠️ 将来のアップデートで無効化されるリスクあり
- ❌ Microsoftの公式サポート対象外
- ❌ セキュリティ更新の提供保証なし
より安全な方法: TPMとセキュアブートだけが問題の場合は、BIOS設定で正規に解決する方法を強く推奨します。
それでも実行する場合は、以下の手順を自己責任で行ってください。
手順の概要:
- 「Win + R」キーを押し、「regedit」と入力してレジストリエディタを起動。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\MoSetupへ移動。- 右クリックで「新規」→「DWORD (32ビット) 値」を作成。
- 名前を
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUに変更。 - 作成した値をダブルクリックし、値を「1」に設定して再起動。
この設定を行った後、Windows 11のインストールメディア(ISOファイル等)を使ってセットアップを行えば、CPU非対応の警告を無視してアップグレードが進められる可能性があります。
方法2:フリーソフト「Rufus」でインストールUSBを作成
コマンド操作やレジストリ操作が怖いという方には、「Rufus(ルーファス)」という無料ツールがおすすめです。
このツールを使うと、Windows 11のインストール用USBメモリを作成する際に、自動的に「要件チェックの回避」設定を組み込んでくれます。
Rufusのメリット:
- 「TPM 2.0」「セキュアブート」「RAM要件」のチェックをチェックボックス一つで解除可能。
- Microsoftアカウントへの強制ログインを回避し、ローカルアカウントを作成する設定も可能。
クリーンインストール(初期化してインストール)を行う場合は、このRufusを使って作成したUSBメモリから起動するのが最も手軽で確実な方法と言えるでしょう。
参考:Windows 11 のダウンロード(Microsoft公式サイト)
無理やりアップグレードする場合の重大なリスクと注意点
「裏技で入れられるなら、それでいいじゃないか」と思うかもしれません。
しかし、非対応CPUのマシンでWindows 11を運用することには、将来的なデメリットが存在します。単に「使える」ことと「安全に使い続けられる」ことは別問題です。
大型アップデートが配信されない可能性
最大の懸念点は「Windows Update」です。
Microsoftは、要件を満たさないPCに対して、セキュリティ更新プログラムや大型アップデート(機能更新)の提供を保証していません。
現時点では、多くの非対応PCでも更新プログラムが届いていますが、ある日突然「このPCには最新のセキュリティパッチを適用できません」となる可能性があります。
セキュリティの穴を塞げない状態でインターネットに接続するのは、ウイルス感染のリスクを高める行為です。
動作の不安定さと透かし表示
無理にインストールした場合、以下のような現象が報告されています。
- 動作の重さ: 最適化されていないため、Windows 10の時よりも動作が緩慢になることがある。
- ブルースクリーン: 古いドライバーとの競合により、システムがクラッシュする頻度が上がる可能性がある。
- デスクトップの透かし: 画面の右下に「システム要件を満たしていません」という半透明の警告メッセージが常時表示される場合がある。
あくまで「動く」というだけで、快適なパソコンライフが約束されるわけではないことを理解しておきましょう。
第7世代Intel Coreユーザーへの特別アドバイス
第7世代Intel Core(i5-7200U、i7-7700など)は2016~2017年発売で、性能的にはまだ十分現役です。しかしWindows 11の対象外となっています。
このCPUの特徴
- ✅ 日常使用には十分な性能
- ✅ Windows 10では快適に動作
- ❌ Windows 11の公式サポート外
- ❌ VBS/HVCIを有効化すると大幅にパフォーマンス低下
推奨する選択肢
- 2026年まで使う予定なら:裏技でWindows 11化(短期的にはリスク低)
- 3年以上使う予定なら:新PC購入を検討(長期的には安全)
- オフライン用途なら:Windows 10継続(ネット接続しないなら可)
特にモバイルノートPC(UltraBookなど)の第7世代は、バッテリー駆動時間や軽量性で今でも優秀です。Windows 11化して延命する価値は十分あります。
それでも解決しない場合の選択肢とまとめ
リスクを負ってまでWindows 11にするべきか、迷うところだと思います。
最後に、非対応PCユーザーが取るべき現実的な3つの選択肢を比較してまとめました。Windows 10のサポートが終了した今、早急な決断が必要です。
選択肢の比較まとめ
| 選択肢 | メリット | デメリット | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 1. Windows 10を継続 | 使い慣れた環境 | ❌ サポート終了済み | ⚠️ 非推奨 |
| 2. 裏技でWindows 11化 | ✅ 追加費用0円 | ⚠️ リスクあり | △ 短期なら可 |
| 3. PCの買い替え | ✅ 安全・快適 | 💰 費用がかかる | ✅ 推奨 |
【2025最新】PC購入ガイド|用途別おすすめスペック&選び方を徹底解説
まとめ:Windows 10のサポートは終了済み!早急な対応を
「もう少しWindows 10で様子を見よう」というのは、もう通用しません。
Windows 10のサポートは2025年10月14日をもって終了しました。
現在、サポート切れのOSをインターネットに接続して使い続けることは、家の鍵を開けっ放しにして出かけるのと同じくらい危険です。ウイルス感染や個人情報漏洩のリスクが非常に高くなっています。
CPUが非対応のあなたが今すぐ取るべき行動
ステップ1:まず確認
- PC正常性チェックで本当にCPUが原因か確認
- TPMやセキュアブートだけならBIOS設定で解決
ステップ2:決断する
- 【安全重視】新しいPC購入を検討(推奨)
- 【コスト重視】裏技でWindows 11化(リスク承知で)
- 【非推奨】Windows 10継続(セキュリティリスク極大)
ステップ3:実行する
- データバックアップは必須
- 不安なら専門家に相談
まだWindows 11への移行が済んでいない方は、リスクを承知で「裏技」を使ってアップグレードするか、安全のために「新しいPCへ買い替える」か、極力早く決断してください。あなたのデータを守るためにも、今日から対策を始めましょう。
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