「今しがたメールを送りました」
「今しがたお電話いただいた件ですが……」
ビジネスシーンで、このような表現を耳にしたことはありませんか?
なんとなく「さっき」という意味で使っているものの、実は「先ほど」や「たった今」とどう違うのか、正確なニュアンスや使い分けに自信がないという方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、「今しがた」は「ほんの少し前」を指す言葉で、非常に上品で丁寧な印象を相手に与えることができる便利な表現です。
この記事では、「今しがた」の正確な意味や、ビジネスでの正しい使い方、類似表現との細かな違いを、例文を交えて分かりやすく解説します。
言葉の引き出しを増やして、ワンランク上のコミュニケーションを目指しましょう。
「今しがた」の意味とは?漢字表記やニュアンスも解説
「今しがた」とは、現在からほんの少し前、ついさっき経過したばかりの過去を表す言葉です。
時間的な感覚としては「数分前」から「直前」を指すことが多く、出来事の余韻がまだ残っているような場面で使われます。
漢字では「今し方」と書くこともあります。「方(かた)」は時分や頃合いを意味しており、古くから使われている表現です。
ただ、ビジネスメールやチャットにおいては、漢字にすると少し堅苦しい印象を与えたり、読みづらく感じられたりする場合があるため、ひらがなで「今しがた」と表記するのが一般的です。
「さっき」や「先ほど」と同じ意味合いを持ちますが、「今しがた」にはより改まった、雅(みやび)で上品な響きが含まれています。
そのため、日常会話で友人に使うというよりは、目上の方や取引先、あるいは公式な場での発言など、礼儀正しさを求められるシーンで重宝する言葉といえるでしょう。
ビジネスシーンでの正しい使い方とタイミング
ビジネスの現場において、「今しがた」は非常に使い勝手の良い言葉です。
特に、相手に対して「急いで対応した」「直前まで動いていた」というライブ感を、失礼にならずに伝えたい時に効果を発揮します。
たとえば、不在着信が入っていたことに気づき、すぐに折り返す場面を想像してみてください。
「さっき電話くれた?」では失礼ですし、「先ほどお電話を……」でも間違いではありませんが、「今しがた」を使うことで「着信に気づいて、すぐに(間を置かずに)折り返しました」という誠意や迅速さを、言葉のニュアンスだけで伝えることができます。
また、来客対応や会議の冒頭などで、「今しがた到着いたしました」のように使うことも可能です。
ただし、あくまでも「直前」を指す言葉であるため、1時間以上前の出来事に使うと、相手に「えっ、そんなに前のこと?」と違和感を与えてしまうリスクがあります。
使用する際は、「体感として数分〜10分以内」程度の出来事に限定するのが無難です。
「今しがた・先ほど・たった今」の違い【比較表あり】
日本語には「過去」を表す言葉がたくさんあり、どれを使えばいいのか迷うこともありますよね。
ここでは、ビジネスで頻出する「先ほど」「たった今」「さっき」と「今しがた」の違いを、一覧表で整理しました。
それぞれの言葉が持つ「時間の幅」と「丁寧さ」に注目してみましょう。
| 表現 | 丁寧度・フォーマル度 | 時間の幅(目安) | 適したシーン・特徴 |
|---|---|---|---|
| 今しがた | 高(上品・改まった表現) | 数分前〜直前 | 目上の人への報告、謝罪、折り返し電話など。緊急性と丁寧さを両立したい時。 |
| 先ほど | 中〜高(標準的) | 数分前〜数時間前 | 最も汎用性が高い。迷ったらこれを使えば間違いなし。時間の許容範囲が広い。 |
| たった今 | 中(強調表現) | 数秒前〜直前 | 完了した直後を強調したい時。「今しがた」より切迫感がある。 |
| さっき | 低(カジュアル) | 数分前〜数時間前 | 同僚や親しい間柄のみ。ビジネスの公式な場では避けるべき。 |
表を見るとわかるとおり、「今しがた」は「たった今」と同じくらいの「直近感」を持ちながら、「先ほど」以上の「上品さ」を兼ね備えています。
「先ほど」は数時間前のことにも使えますが、「今しがた」は使えません。この時間の感覚のズレには注意が必要です。
そのまま使える!「今しがた」のビジネス例文集
では、具体的にどのような文脈で使えば自然なのか、シチュエーション別の例文をご紹介します。
メールや電話対応のテンプレートとして活用してみてください。
電話対応・折り返し連絡の場面
もっとも使用頻度が高いのが電話対応です。
相手の行動(着信)と自分の行動(折り返し)の間隔が短いことを強調できます。
- 「今しがたお電話をいただきましたでしょうか。お待たせして申し訳ございません」
- 「今しがた担当の者が戻りましたので、すぐに代わらせていただきます」
メールやチャットでの報告
メールを送った直後、あるいはメールを確認した直後のリアクションとして使います。
「すぐに確認しました」というアピールにも繋がります。
- 「今しがた資料をお送りしました。お手すきの際にご確認いただけますと幸いです」
- 「今しがたメールを拝見しました。迅速なご対応、ありがとうございます」
- 「今しがた、クライアントより修正依頼の連絡が入りました」
訪問・対面での挨拶
到着した直後や、すれ違いざまの報告などに使えます。
- 「今しがた到着いたしました。本日はよろしくお願いいたします」
- 「〇〇部長でしたら、今しがた会議室へ向かわれましたよ」
使用時の注意点:こんな時は「先ほど」と言い換えよう
上品で便利な「今しがた」ですが、万能ではありません。
誤った使い方をすると、かえってコミュニケーションに齟齬(そご)が生まれる可能性があります。
最大の注意点は、やはり「時間の経過」です。
たとえば、午前中の出来事を午後に話す際に「今しがた」を使うのは不自然です。
相手は「え?ついさっきのこと?」と勘違いしてしまい、話が噛み合わなくなる恐れがあります。
30分以上経過している場合や、時間の感覚が曖昧な場合は、無理をせず「先ほど」を使用したほうが無難でしょう。
また、使いすぎにも注意が必要です。
「今しがたメールしました」「今しがた戻りました」「今しがた確認しました」と連呼すると、くどい印象を与えてしまいます。
ここぞという場面で使うからこそ、その「上品さ」や「直近感」が際立つのです。
まもなくとはどれくらい?何分?間もなくの意味やビジネスでの使い方を徹底解説
まとめ
「今しがた」は、直前の出来事を上品に伝えることができる、大人のビジネス表現です。
最後にポイントを整理します。
- 意味は「ほんの少し前」「ついさっき」。
- 「先ほど」よりも時間が短く、「たった今」よりも上品なニュアンス。
- 数分前〜10分前程度の「直近の出来事」に使うのがベスト。
- 時間が経っている場合は「先ほど」と言い換える。
普段何気なく「先ほど」と言っている場面で、タイミングが合えばぜひ「今しがた」を使ってみてください。
それだけで、相手に「丁寧な人だな」「対応が早いな」というポジティブな印象を与えられるかもしれません。

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