「この案件、如何致しましょうか?」
上司や取引先に対して、このように問いかけた経験はありませんか。
結論からお伝えすると、「如何致しましょうか(いかがいたしましょうか)」は正しい敬語表現です。しかし、使う相手やシチュエーションを間違えると、失礼にあたる可能性もゼロではありません。
特に間違いやすいのが「如何なさいますか」との混同です。この2つは「誰が行動するのか(主語)」によって明確に使い分ける必要があります。
この記事では、迷いやすい「如何致しましょうか」の正しい意味と、「如何なさいますか」との決定的な違い、そしてビジネスメールや会話ですぐに使える実践的なフレーズを解説します。曖昧なまま使っていた敬語を、今日から自信を持って使える武器に変えていきましょう。
「如何致しましょうか」の正しい意味と敬語の仕組み
「如何致しましょうか」という言葉を聞いて、「少し堅苦しいかな?」「二重敬語ではないか?」と不安に感じる方もいるかもしれません。まずは、この言葉の成り立ちと基本的な意味を整理しておきましょう。
このフレーズは、以下の3つの要素で構成されています。
- 如何(いかが): 「どう」を改まった場面で使う丁寧な表現
- 致し(いたし): 「する」の謙譲語
- ましょうか: 丁寧な勧誘・提案
つまり、「私がどのように対応すればよいですか?」と、相手に指示や判断を仰ぐ際に使われる謙譲語(自分を下げて相手を立てる敬語)です。二重敬語のような誤りではなく、文法的にも正しい表現ですので安心してください。
ビジネスシーンにおいては、自分の判断だけで進めるのが不安な場合や、相手の意向を最優先したい場合に非常に重宝します。「私の行動」について相手の許可や指示を求めている点がポイントです。
また、表記についてですが、漢字で「如何致しましょうか」と書くと少し堅い印象や、威圧感を与えることがあります。メールやチャットなどでは「いかがいたしましょうか」とひらがなで表記するほうが、柔らかく読みやすい印象になるためおすすめです。
【比較表あり】「如何致しましょうか」と「如何なさいますか」の決定的な違い
ここが最も重要なポイントです。「如何致しましょうか」と似た言葉に「如何なさいますか(いかがなさいますか)」があります。響きは似ていますが、意味は全く異なります。
最大の違いは「動作の主語(誰がするのか)」です。
- 如何致しましょうか: 行動するのは「私(自分)」
- 如何なさいますか: 行動するのは「あなた(相手)」
混同して使うと、自分がやるべきことを相手に押し付けたり、逆に相手がやるべきことに口を出したりすることになりかねません。以下の比較表で整理しましょう。
| 表現 | 動作の主語 | 敬語の種類 | 使用シーンの例 |
|---|---|---|---|
| 如何致しましょうか | 私(自分・自社) | 謙譲語+丁寧語 | 荷物を持ちましょうか? スケジュールの調整はどうしましょうか?(私が調整します) |
| 如何なさいますか | あなた(相手) | 尊敬語+丁寧語 | ご注文は何にしますか? 食後のお飲み物はどうしますか? |
例えば、レストランでお客様に「ご注文は如何致しましょうか?」と聞くのは誤りです。注文するという行為はお客様がするものなので、「ご注文は如何なさいますか(何になさいますか)」が正解となります。
逆に、トラブル対応などで「(私共で)どのように対応すればご納得いただけますか」と聞く場合は、「如何致しましょうか」を使います。主語が「自分」なのか「相手」なのかを常に意識すれば、迷うことはありません。
ビジネスシーン別「如何致しましょうか」の実践的な使い方
意味を理解したところで、実際のビジネス現場でどのように使えばスマートか、具体的なシチュエーション別の例文を見ていきましょう。そのまま使えるフレーズですので、場面に合わせて調整してみてください。
上司やクライアントに指示を仰ぐ場合
プロジェクトの進行や次のアクションについて、相手の判断を求めるときに最も頻繁に使われます。「どうしますか?」と聞くよりも、はるかに丁寧で、相手の顔を立てることができます。
- 「次回の会議の日程ですが、如何致しましょうか。候補日をお出ししましょうか?」
- 「資料のデザイン案が2つございますが、どちらで進めるか如何致しましょうか」
このように、単に「どうしましょう」と丸投げするのではなく、「候補を出しましょうか」などの提案とセットで使うと、より「仕事ができる人」という印象を与えられます。
お客様への対応・提案をする場合
接客業や営業職において、相手のために自分が動くことを申し出る際にも使えます。この場合、「私が~しましょうか?」という奉仕のニュアンスが含まれます。
- 「お荷物が重そうですね。お部屋までお運びするのは如何致しましょうか」
- 「ギフト用のラッピングも可能ですが、如何致しましょうか」
ここでは、相手が「頼む」か「断る」かを選択しやすいように問いかけるのがコツです。押し付けがましくならず、さりげない気遣いとして響くでしょう。
トラブル対応や謝罪の場面
クレーム対応などで、相手の怒りを鎮め、具体的な解決策を提示したい場合にも有効です。相手の要望を最優先する姿勢を示せます。
- 「ご不便をおかけし申し訳ございません。代替品の手配については如何致しましょうか」
ただし、丸投げしすぎると「自分で考えろ」とさらなるお叱りを受ける場合もあります。「私はA案が良いと思いますが、如何致しましょうか」と、自分の考えを添えるバランス感覚が大切です。
「如何致しましょうか」の言い換えと使い分けテクニック
「如何致しましょうか」は便利な言葉ですが、毎回こればかり使っていると、会話が単調になったり、慇懃無礼(丁寧すぎて逆に失礼)に感じられたりすることもあります。
相手との関係性や状況に合わせて、以下のような言い換え表現を持っておくと便利です。
より柔らかく伝えたい場合:「いかがしましょうか」
親しい先輩や、毎日のように顔を合わせる直属の上司に対して「如何致しましょうか」は少し堅すぎる場合があります。その際は、「致し」を抜いて丁寧語だけにした形が使えます。
- 「部長、ランチの予約はいかがしましょうか?」
これなら、敬意を保ちつつも親しみやすさが出ます。関係性に応じて使い分けてください。
⚠️注意点
「いかがしましょうか」には謙譲語の「致す」が含まれていないため、敬意の度合いは下がります。取引先や、そこまで親しくない目上の方、フォーマルな場では使用を避けたほうが無難です。
より具体的に聞きたい場合:「どのようになさいますか」
相手の意向を聞く際、「Yes/No」ではなく具体的な方法論を知りたい場合は、「どのように」を使うとスムーズです。ただし、これは相手の行動を聞く場合(尊敬語)の言い換えになることが多いので注意が必要です。
自分の行動について聞く場合は、「どのような対応をご希望でしょうか」と聞くのが良いでしょう。「如何致しましょうか」よりも具体的で、相手も答えやすくなります。
メールでの表記について
冒頭でも触れましたが、メールやチャットツールでは視認性が重要です。「如何致しましょうか」と漢字が続くと、黒々として読みにくい印象を与えます。
- ×:今後の対応につきまして、如何致しましょうか。
- ○:今後の対応につきまして、いかがいたしましょうか。
ひらがなに開くことで、文章全体に余白が生まれ、相手に対して柔らかい印象を与えることができます。Webライティングやビジネスメールの基本テクニックとして覚えておきましょう。
まとめ
「如何致しましょうか」は、相手に指示を仰ぎ、自分の行動を決めるための非常に便利な敬語です。正しい使い方をマスターすれば、相手を立てつつ、スムーズに仕事を進めることができます。
最後に、今回のポイントを簡潔に振り返ります。
- 「如何致しましょうか」は正しい敬語(謙譲語+丁寧語)。
- 主語は「私(自分)」。「私がどうすればいいですか?」と聞く時に使う。
- 主語が「相手」の場合は「如何なさいますか」を使う。
- 漢字で書くと堅いので、メールでは「いかがいたしましょうか」とひらがな表記がおすすめ。
言葉遣いは、ビジネスにおける信頼関係の土台です。正しい敬語を自然に使いこなすことで、「この人になら安心して仕事を任せられる」という評価に繋がります。ぜひ、明日のメールや会話から意識して使ってみてください。

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