「ヴェルファイアのリセールが崩壊している」という噂を聞いて、不安になっていませんか?
結論から言うと、「リセール崩壊」は一部の事実ですが、すべてのオーナーに当てはまるわけではありません。
具体的には、投機的な「バブル価格」が弾けただけであり、一般的な車と比較すれば依然としてリセールバリューは優秀です。しかし、年式やグレード選びを間違えると、予想以上に値下がりするリスクがあるのも事実です。
この記事では、なぜ今「崩壊」と騒がれているのか、その裏にある輸出事情やアルファードとの格差、そして損をしないための売却タイミングについて、プロの視点で分かりやすく解説します。
ヴェルファイアのリセール崩壊と言われる2つの理由
SNSやネットニュースで「ヴェルファイアのリセールが終わった」と囁かれるのには、明確な理由があります。これは単に人気がなくなったという単純な話ではなく、中古車市場特有のカラクリが関係しています。
主に、40系(新型)のバブル崩壊と、30系(旧型)の経年劣化による輸出対象からの除外という2つの側面から解説します。
新型40系の「即出しバブル」が終了した
2023年に登場した40系ヴェルファイアは、発売直後に異常なほどの高値がつきました。新車価格を数百万円も上回る「プレミア価格」で取引されていた時期があったのです。これは、海外富裕層への輸出需要と、国内の納期遅れによる「すぐに乗りたい」という需要が重なったためです。
しかし、2025年に入り、生産・納車が順調に進んだことで市場への供給量が増加しました。その結果、異常だった相場が「適正価格」に戻りつつあります。
これを「暴落」「崩壊」と表現する人もいますが、冷静に見れば「異常値から正常値に戻っただけ」とも言えます。とはいえ、転売目的で購入した層にとっては、計算が狂う「崩壊」であることは間違いありません。
30系の輸出規制と経年劣化の壁
もう一つの要因は、先代モデルである30系ヴェルファイアの事情です。ヴェルファイアの高リセールを支えているのは、マレーシアを中心とした海外輸出です。しかし、多くの国には輸入規制(年式規制)が存在します。
例えば、マレーシアへの輸出は「登録から1年以上5年未満」という厳しいルールが一般的です。つまり、5年(60ヶ月)を経過した車両は、最も高く売れる輸出ルートに乗せられなくなります。
「8年落ち」「10年落ち」になると、国内需要または規制の緩い国への輸出に限られるため、価格はガクンと下がります。これが、長期保有ユーザーが感じる「リセール崩壊」の正体です。
【最新版】ヴェルファイアとアルファードのリセール比較
よく比較される兄弟車、アルファード。正直なところ、リセール面だけで見るとアルファードの方に分があるのが現状です。
ここでは、ヴェルファイアとアルファードの残価率(新車価格に対してどれくらいの価値が残っているか)の傾向を比較表で見てみましょう。
リセールバリュー比較表(目安)
以下の表は、市場の一般的な動向をまとめたものです。
| 経過年数 | ヴェルファイア(残価率) | アルファード(残価率) | 傾向と対策 |
|---|---|---|---|
| 1年落ち | 110% 〜 130% | 120% 〜 150% | 新型はまだプレ値がつく場合も。即出し需要は減少傾向。 |
| 3年落ち | 85% 〜 95% | 90% 〜 105% | 初回車検前。輸出対象として最も脂が乗っている時期。 |
| 5年落ち | 75% 〜 85% | 80% 〜 90% | ここが分岐点。 輸出規制にかかる前に売却するのが鉄則。 |
| 7年落ち | 50% 〜 60% | 55% 〜 65% | 国内需要がメインに。状態や走行距離で価格差が開く。 |
| 10年落ち | 20% 〜 30% | 25% 〜 35% | 過走行だと値段がつきにくい。海外の規制次第で底値は堅い。 |
※数値はあくまで過去のデータに基づく目安です。市場相場は日々変動するため、売買の際は必ず最新の査定情報を確認してください。
なぜアルファードの方が強いのか
アルファードの方がリセールが良い理由は、圧倒的な「知名度」と「海外需要の総量」です。海外のバイヤーにとって、アルファードは「高級ミニバンの代名詞」としてブランド化されています。
一方、ヴェルファイアは日本国内や一部の国では熱狂的なファンがいますが、グローバルな視点で見るとアルファードの陰に隠れがちです。そのため、輸出業者の買い付け競争がアルファードほど過熱せず、結果として買取相場もやや低めに落ち着く傾向があります。
ただし、ヴェルファイアには「ターボモデル」やスポーティな外観という独自の強みがあります。特定の国や若い富裕層には刺さるため、グレード選びさえ間違えなければ、アルファードに肉薄するリセールを叩き出すことも可能です。
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値崩れを防ぐ!リセールに強いグレードと装備
もしこれからヴェルファイアを購入する、あるいは売却を検討しているのであれば、「何がついているか」が査定額を左右します。
数年後の売却額に数十万円、場合によっては100万円以上の差がつく重要なポイントを、40系(新型)と30系(旧型)に分けて解説します。
【40系(新型)】鉄板は「ハイブリッド Z Premier」
40系に関して言えば、リセール最強候補は「ハイブリッド Z Premier」です。
世界的な電動化の流れもあり、ハイブリッドモデルの需要は底堅いです。また、今回の40系から設定された2.4Lターボエンジンの「Z Premier」も、走りを楽しみたい層や、ハイブリッドの輸出関税が高い国向けに一定の人気があります。
40系ではV6エンジンが廃止され、2.5Lハイブリッドと2.4Lターボの2本立てとなっていますが、現時点ではどちらを選んでも高いリセールが期待できます。
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【30系(旧型)】3.5L V6エンジンは要注意
30系の場合は、「2.5Z Gエディション」や「ゴールデンアイズ」などの2.5Lガソリンモデル、またはハイブリッドが依然として強いです。
一方で注意が必要なのが、30系に設定されていた3.5L V6エンジンモデルです。
大排気量エンジンは、自動車税の高さや燃費の悪さから国内の中古車市場では敬遠されがちで、リセール率は2.5Lモデルに比べて低くなる傾向にあります。30系の中古車を購入・売却する際は、排気量の違いが価格に大きく影響することを覚えておきましょう。
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色とオプションで決まる「加点評価」
ボディカラーは、「プラチナホワイトパールマイカ」か「ブラック」の2択です。これ以外の色を選ぶと、売却時に数十万円のマイナス査定を覚悟しなければなりません。海外バイヤーは、再販しやすいこの2色を圧倒的に好むからです。
また、装備(オプション)に関しては以下があると強みになります。
- サンルーフ(パノラマルーフ): 輸出必須アイテム。これがないと輸出対象から外れることも。
- デジタルインナーミラー: 後方視界確保だけでなく、先進装備として評価が高い。
- スペアタイヤ: 意外かもしれませんが、道路事情の悪い国へ輸出される際、スペアタイヤの有無が査定に響くことがあります。
「自分が欲しい装備」だけでなく、「次の買い手が欲しがる装備」を意識することが、リセール維持の秘訣です。
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ヴェルファイアを高く売るためのタイミング
ヴェルファイアのリセールを最大化するためには、「いつ売るか」が最も重要です。車の状態が良くても、タイミングを間違えると相場が暴落している時期に売ることになってしまいます。
特に意識すべき「3つのデッドライン」について解説します。
「1年・5年」の輸出の壁を意識する
先ほども少し触れましたが、マレーシアなどの主要輸出先には「年式規制」があります。
- 登録から1年経過後: マレーシアへの輸出解禁。ここから需要が一気に高まります。
- 登録から5年経過直前: マレーシア行きの最終便。ここを過ぎると、輸出先がパキスタンやバングラデシュ、ケニアなどに変わり、相場が一段下がります。
最も高く売れるのは「新車登録から1年以上、5年未満」の間です。特に車検のタイミングである「3年目」や、輸出期限ギリギリの「4年半」あたりでの売却は、非常に賢い選択と言えます。
円安のタイミングを逃さない
ヴェルファイアの相場は、為替レートに大きく連動します。海外バイヤーが円を持って買い付けに来るため、「円安」の時期は買取価格が跳ね上がります。
逆に「円高」になると、海外勢の購買力が落ち、相場全体が冷え込みます。「リセール崩壊」と言われる時期は、往々にして急激な円高進行と重なっていることが多いです。
ニュースで「円安が進んでいる」と聞いたら、愛車の今の価値を確認してみるチャンスです。逆に円高局面では、焦って売らずに相場の回復を待つという判断も必要になります。
参考:トヨタ認定中古車
ヴェルファイアの中古車が安いのはなぜ? 理由と後悔しない賢い選び方
まとめ:リセール崩壊は「売り時」を見極めれば怖くない
ヴェルファイアのリセール崩壊という噂について、その真偽と対策を解説してきました。
記事のポイントをまとめます。
- 「崩壊」の正体は、新型のバブル終了と旧型の輸出規制落ち。
- 全グレードが暴落しているわけではなく、適切な時期なら依然として高リセール。
- アルファードよりは弱含みだが、ハイブリッドや黒・白ボディなら十分戦える。
- 「登録後5年以内」に手放すのが、高値を維持する最大の防衛策。
ヴェルファイアは、ミニバンの中でもトップクラスの資産価値を持つ車であることに変わりはありません。
重要なのは、市場の動向(特に輸出と為替)を定期的にチェックすることです。漠然とした不安に流されず、賢いタイミングで乗り継いでいくことが、カーライフを豊かにするコツです。

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