「お客様を駅でむかえる」「新年をむかえる」のように、日常でよく使う「むかえる」という言葉。しかし、「駅までお客様を迎えに行く」と「駅でお客様を迎える」、どちらを使えば良いか迷った経験はありませんか?
この2つの表現は似ているようで、行動がまったく異なります。また、まれに「向かえる」という言葉を見聞きすることもありますが、これは正しい日本語なのでしょうか。この記事では、多くの人が混同しがちな「迎える」と「迎えに行く」の決定的な違いと、「向かえる」という言葉の注意点について分かりやすく解説します。
【結論】「迎える」と「迎えに行く」の決定的な違い
早速結論からお伝えすると、2つの言葉の違いは「自分(主体)がその場で待つか、移動するか」にあります。
- 迎える:相手が自分のいる場所へ来るのを「待ち受ける」(受け身)
- 迎えに行く:相手がいる場所へ自分が「移動して連れてくる」(能動)
一目で分かる!「迎える」と「迎えに行く」の比較表
2つの言葉の違いを、さらに分かりやすく表にまとめました。
迎える | 迎えに行く | |
---|---|---|
意味 | 人や物事の到来を待ち受ける | ある場所へ移動して、人を連れてくる |
行動 | その場で待つ | 移動する |
主体の動き | 受け身(動かない) | 能動(動く) |
言い換え | 歓迎する、待ち受ける | お迎えに行く、出向く |
「迎える」の正しい使い方と意味
「迎える」は、人や物、特定の時が自分のいる場所へやって来るのを待ち受ける、という意味で使われる言葉です。ビジネスシーンから日常会話まで、幅広く使われます。
人や物を待ち受ける「迎える」
最も一般的な使い方が、人や物を待ち受けるケースです。「歓迎」の「迎」という漢字からも分かるように、相手の到来をポジティブな気持ちで受け入れるニュアンスが含まれます。
【例文】
- 玄関で来客を迎える。
- 空港の到着ロビーで、留学していた娘を迎えた。
- 万全の体制で視察団を迎える準備をする。
特定の時や節目に使う「迎える」
「迎える」のもう一つの重要な使い方が、新年や誕生日、記念日といった特定の時や人生の節目が訪れることを表現するケースです。この用法は「迎えに行く」にはありません。
【例文】
- 家族そろって、穏やかな新年を迎えた。
- 来月、会社は創立50周年を迎えます。
- 物語は、いよいよ最終回を迎える。
「迎えに行く」の使い方と「向かえる」という言葉の注意点
能動的な移動を表す「迎えに行く」
「迎えに行く」は、相手がいる場所まで自分が出向いて、こちらへ連れてくるという意味です。相手を気遣う気持ちが込められた、積極的な行動を表します。
【例文】
- 雨が降ってきたので、駅まで子どもを迎えに行く。
- お客様を車で空港まで迎えに行きます。
- 「荷物が多いから、迎えに行くよ」と友人に伝えた。
注意:「向かえる」は不自然な日本語
「向かえる」という言葉は、一般的に使われない不自然な表現です。
文法的には「向かう」の可能形(向かうことができる)ですが、実際の会話や文章で「駅へ友人を向かえる」のように使うことは、ほぼありません。これは誤用と捉えられる可能性が高いでしょう。
もし「行くことができる」と伝えたい場合は、「今から向かうことができます」や「お伺いできます」のように、別の言葉で表現するのが自然です。口頭で「むかえる」と言うと、「迎える」と聞こえてしまい誤解を招く原因にもなります。この場合「向かえる」という言葉の使用は避けましょう。
※ただし、「困難に立ち向かえる」のように使われるケースもあります。文脈や状況に応じて使い分けましょう。
まとめ:待ち受けるなら「迎える」、移動するなら「迎えに行く」
「迎える」と「迎えに行く」の違いを最後にもう一度おさらいしましょう。
- 迎える:自分の場所で、来る人や時を待ち受ける(受け身)
- 迎えに行く:相手のいる場所へ、自分から移動する(能動)
- 向かえる:不自然な表現なので、使わないのが無難
このポイントさえ押さえておけば、もう迷うことはありません。「お客様を『迎える』準備」は社内での準備、「お客様を『迎えに行く』準備」は車を出す準備、というように、言葉一つで状況が明確になります。ぜひ明日から、自信を持って使い分けてみてくださいね。
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