「あれ、今見かけた鳥、なんだろう?スズメよりは大きいけど、カラスほどじゃない。ムクドリに似てるけど、本当にそうかな?」
公園の木々や電線、お家の庭先で、そんな風に思ったことはありませんか。
実は私たちの身の回りには、ムクドリとよく似た鳥が意外とたくさん暮らしています。ぱっと見ただけでは見分けるのが難しいかもしれません。
この記事では、そんな「ムクドリに似た鳥」たちにスポットを当て、それぞれの特徴やムクドリとの決定的な違いを、比較表も交えながら分かりやすく解説していきます。見分けるポイントさえ押さえれば、いつもの散歩道がもっと楽しくなるはずです。
スズメより大きい鳥、もしかしてムクドリ?まずは基本をおさらい
見分け方の話をする前に、まずは比較の基準となる「ムクドリ」がどんな鳥なのか、基本情報をおさらいしておきましょう。特徴を知ることで、他の鳥との違いがより明確になります。
ムクドリの大きさは全長約24cm。身近な鳥でいうと、スズメ(約15cm)より大きく、ハト(約33cm)よりは小さいサイズ感です。全体的には灰褐色や黒褐色の落ち着いた色合いをしていますが、よく見ると頭部は黒く、頬に白い模様が入っているのがおしゃれ。そして、なんといっても一番の特徴は、オレンジがかった黄色いくちばしと足です。この配色は他の鳥にはあまり見られない、ムクドリのトレードマークといえるでしょう。
彼らは雑食性で、木の実や花の蜜から昆虫、ミミズまで何でも食べます。特に桜の季節には、花の蜜を吸いにやってくる姿をよく見かけますね。繁殖期以外は大きな群れで行動することが多く、夕方になると電線にびっしりと集まって、けたたましい声で鳴き交わす様子は、一度は見たことがあるのではないでしょうか。市街地や農耕地など、人の生活圏のすぐそばでたくましく暮らす、私たちにとって非常に身近な鳥の一つです。
ムクドリと似ている鳥はどれ?見分けが一目でわかる比較表
「ムクドリの特徴はわかったけど、やっぱり他の鳥と並べて比べたい!」という方のために、代表的な5種類の鳥との違いを一覧表にまとめました。
まずはこの表で、全体像をざっくりと掴んでみてください。注目すべきポイントは、大きさ、体の色、そしてくちばしと足の色です。
種類 | 大きさ(全長) | 体の色(オス) | くちばし・足の色 | 季節 | 主な鳴き声 |
---|---|---|---|---|---|
ムクドリ | 約24cm | 全体的に灰褐色、頭は黒く頬に白斑 | くちばし・足ともに黄色 | 留鳥 | ギャーギャー、キュルキュル |
ヒヨドリ | 約28cm | 全体的に灰色、冠羽が立つ | くちばし・足ともに黒っぽい | 留鳥 | ヒーヨ、ヒーヨ |
ツグミ | 約24cm | 背は茶色、胸に黒い斑点 | くちばしは黒っぽく根元が黄色、足は肌色 | 冬鳥 | クワッ、クワッ |
コムクドリ | 約19cm | 頭がクリーム色、羽は紫色の光沢 | くちばし・足ともに黒っぽい | 夏鳥 | ギュルギュル、チー |
ホシムクドリ | 約22cm | 光沢のある黒、冬羽に白い斑点 | 冬は黒、夏は黄色 | 冬鳥 | ジャー、キュルキュル |
イソヒヨドリ | 約25cm | 頭から胸が青色、腹がオレンジ色 | くちばし・足ともに黒 | 留鳥 | ピュルリ、ヒッ |
※留鳥(りゅうちょう):一年を通して同じ地域に生息する鳥。
※冬鳥(ふゆどり):秋に渡ってきて冬を越し、春に去る鳥。
※夏鳥(なつどり):春に渡ってきて繁殖し、秋に去る鳥。
【ムクドリに似た鳥①】都市部でもよく見る「ヒヨドリ」との違い
ムクドリと同じくらい市街地でよく見かけるのがヒヨドリです。大きさも似ていますが、見分けるのは比較的簡単ですよ。
一番のポイントは、鳴き声です。「ヒーヨ、ヒーヨ!」あるいは「ピーヨ!」と、甲高く騒がしい声で鳴くのがヒヨドリ。この特徴的な声が聞こえたら、まずヒヨドリだと思って間違いありません。ムクドリもにぎやかですが、声質が「ギャーギャー」という濁った声なので、慣れるとすぐに聞き分けられます。
見た目の違いも明確です。ヒヨドリはムクドリよりも尾が長く、全体的にシュッとしたスマートな体型をしています。また、頭の羽が逆立ってボサボサに見えるのも特徴で、これを「冠羽(かんう)」と呼びます。ムクドリの頭はつるんとしているので、シルエットだけでも区別がつくでしょう。色は全体的に地味な灰色ですが、よく見ると頬の部分が赤茶色になっています。くちばしや足は黒っぽく、ムクドリの鮮やかな黄色とは全く異なります。花の蜜が大好きで、特に冬から春にかけては、ツバキやサザンカ、桜の木によく集まっています。
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【ムクドリに似た鳥②】冬に見かける「ツグミ」との違い
冬の公園や河川敷の芝生で、ちょこちょこと歩いている鳥を見かけたら、それはツグミかもしれません。ツグミは冬鳥として日本にやってくる渡り鳥で、ムクドリとほぼ同じ大きさです。
ツグミを見分ける最大のポイントは、胸にある黒い斑点模様。白いお腹に黒い斑点が散らばっているのが特徴で、ムクドリにはこの模様がありません。また、地面での行動もユニークです。数歩歩いてはピタッと止まり、胸を張って周りを見渡す、という動作を繰り返します。その様子が「だるまさんがころんだ」をしているように見えることも。ムクドリも地面を歩きますが、ツグミほど特徴的な動きはしません。
全体的な色合いは、背中側がオリーブ褐色で、翼にオレンジ色の部分が見えるのがおしゃれなポイント。くちばしは黒く、根元だけが少しオレンジ色をしていますが、ムクドリのように全体が鮮やかな黄色ではありません。足はピンクがかった肌色です。「口をつぐんでいるように鳴かないからツグミ」という俗説がありますが、実際には「クワッ、クワッ」と鳴きます。冬の静かな公園で、地面をせわしなく歩く鳥がいたら、ぜひ胸の模様を観察してみてください。
【ムクドリに似た鳥③】実はムクドリの仲間「コムクドリ」との違い
名前が示す通り、コムクドリはムクドリ科の鳥で、親戚のような存在です。しかし、見た目や日本で見られる季節は大きく異なります。
まず、コムクドリはムクドリよりも一回り小さいのが特徴です。大きさは全長約19cmで、スズメとムクドリの中間くらい。そして何より、オスの成鳥は息をのむほど美しい姿をしています。頭部はクリーム色で、頬から喉にかけては赤紫色。翼や背中は金属光沢のある紫色で、光の当たり方によってキラキラと輝きます。ムクドリのシックな色合いとは全く違う、華やかな見た目をしていますね。
また、コムクドリは夏鳥で、春に東南アジアから渡ってきて日本で繁殖し、秋には南へ帰っていきます。そのため、冬にコムクドリを見ることはありません。ムクドリは一年中見られる留鳥なので、観察した季節が見分ける大きなヒントになるでしょう。主に樹上で生活し、昆虫や木の実を食べます。もし夏場に、ムクノキやサクラの木などで、ムクドリより少し小さい、頭の白い鳥を見かけたら、それはコムクドリのオスかもしれません。
【ムクドリに似た鳥④】星空のような斑点を持つ「ホシムクドリ」
冬の季節、ムクドリの群れに交じって、少し変わった模様の鳥がいることがあります。それがホシムクドリです。名前の通り、体に星のような白い斑点がたくさんあるのが最大の特徴。
ホシムクドリは冬鳥としてユーラシア大陸から渡ってきます。大きさはムクドリより少し小さい約22cm。冬羽は全体的に黒っぽく、緑や紫の美しい光沢があり、そこに白い斑点が散らばっています。この姿がまるで星空のようだということから、「星椋鳥(ホシムクドリ)」と名付けられました。この斑点は夏になると消えていくため、日本では斑点のある姿で観察されることがほとんどです。
くちばしの色も季節によって変化し、冬の間は黒っぽいですが、春の渡りの時期が近づくとムクドリのような黄色に変わります。この時期は少し紛らわしいかもしれませんが、体にある斑点の有無で簡単に見分けられます。鳴き声も多彩で、他の鳥の鳴き真似がうまいことでも知られています。普段はムクドリの群れに数羽が紛れていることが多いので、冬にムクドリの群れを見つけたら、ぜひ星空模様の鳥がいないか探してみてください。
【ムクドリに似た鳥⑤】幸せの青い鳥?「イソヒヨドリ」との違い
最後にご紹介するのは、鮮やかな見た目が美しいイソヒヨドリです。もともとは名前の通り、海岸の岩場(磯)に生息していましたが、近年では内陸部の市街地にも進出し、ビルの屋上や住宅街でも見かけるようになりました。
イソヒヨドリのオスは、一度見たら忘れられないほど印象的な色をしています。頭から背中、胸にかけては美しい青色で、お腹はレンガのようなオレンジ色。この配色は他の鳥にはなく、ムクドリと見間違えることはないでしょう。ただし、メスは全体的に灰褐色で地味な色合いをしているため、一見するとムクドリやヒヨドリと似ていると感じるかもしれません。しかし、メスもよく見るとお腹にうろこ状の模様があり、くちばしや足は黒いので区別できます。
大きさはムクドリとほぼ同じ約25cmですが、ヒヨドリのように尾が長く、よりスリムな体型です。そして、イソヒヨドリは鳴き声が非常に美しいことでも知られています。澄んだ高い声で「ピュルリ、チュルリ♪」と複雑にさえずる声は、聞いているだけで心地よくなります。建物のてっぺんや手すりなど、見晴らしの良い場所でさえずっていることが多いので、美しい鳴き声が聞こえたら、ぜひ青い鳥の姿を探してみてください。
もう迷わない!ムクドリと似た鳥を見分ける4つの観察ポイント
これまで5種類の鳥を紹介してきましたが、いざ野外で見かけると焦ってしまうかもしれません。そんな時は、以下の4つのポイントに注目して観察してみてください。
- 大きさや体型をじっくり見る
まずは落ち着いて、全体の大きさとシルエットを確認しましょう。スズメより大きいか、ハトより小さいか。尾は長いか短いか、体型はずんぐりしているか、スリムか。これだけで候補をかなり絞り込めます。 - くちばしや足の色に注目する
双眼鏡があればベストですが、なくてもスマートフォンのカメラでズームしてみると意外と見えます。くちばしと足が両方とも鮮やかな黄色なら、それはムクドリです。黒っぽかったり、色が違ったりすれば、他の鳥の可能性が高いでしょう。 - 季節と場所をヒントにする
その鳥を見かけたのはいつ、どこでしたか?冬の芝生ならツグミ、夏の木の上ならコムクドリかもしれません。海岸やビルの上ならイソヒヨドリの可能性が高まります。季節と環境は、鳥の種類を特定する上で非常に重要な手がかりとなります。 - 鳴き声に耳をすませる
姿が見えなくても、声だけで鳥の種類がわかることもよくあります。「ヒーヨ!」と聞こえればヒヨドリ、「ピュルリ♪」と美しい声ならイソヒヨドリです。最近はスマートフォンのアプリで鳴き声を検索することもできますので、活用してみるのも良いでしょう。
まとめ:身近な鳥を観察してバードウォッチングを楽しもう
今回は、ムクドリと間違えやすい5種類の鳥たちをご紹介しました。
- ヒヨドリ:甲高い鳴き声とボサボサの冠羽
- ツグミ:冬に見られ、胸に斑点模様がある
- コムクドリ:夏に見られ、オスは頭がクリーム色で美しい
- ホシムクドリ:冬に見られ、体に星のような白い斑点がある
- イソヒヨドリ:オスは青とオレンジの鮮やかな配色
最初は見分けるのが難しくても、今回ご紹介したポイントを意識して観察を続ければ、だんだんと違いがわかるようになってきます。
名前がわかると、その鳥の生態や渡りのルートなど、さらに奥深い世界に興味が湧いてくるかもしれません。いつもの景色の中に隠れている、小さな隣人たちの暮らしに、少しだけ目を向けてみませんか。
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