高級腕時計はいらない？バカバカしいと言われる理由と本当の価値

ロレックスやパテックフィリップに憧れた時代から一転し、「高級時計はいらない」「正直バカバカしい」と感じる声がネットで急増しています。

スマートフォンやスマートウォッチがあれば時間確認は事足りる今、数百万円の機械式時計に価値を認めるかどうかは揺れ動くテーマです。

本記事では、高級時計が時代遅れと呼ばれる理由と、それでも愛好家が手放さない背景を多角的に整理します。

なぜ「高級時計はいらない」と言われるのか

価格と機能のギャップが生むバカバカしさ

100円ショップのデジタル時計でも時刻は狂わず、スマホなら正秒単位で自動補正されます。一方で機械式高級時計は月差が生じ、3〜5年ごとのオーバーホールも必要です。

機能面の差がこれほど開いているのに、価格は雲泥の差。「そこに数百万円を払うなんてバカバカしい」と感じるのは自然な反応でしょう。

スマートフォン時代の実用性低下

国内スマートフォン普及率は2024年時点で97％に達し、ほぼ誰もが常時携帯しています。
参考：モバイル社会研究所「2024年調査 スマートフォン比率97%」

ポケットやバッグから取り出せば一瞬で正確な時刻が確認でき、通知・決済・健康管理までこなすスマホと比べると、時刻表示専用の高級時計は実用性が際立って低下しました。

結果として「腕時計はアクセサリーに過ぎない」という認識が強まりつつあります。

維持コストと盗難リスク

ロレックスサブマリーナのオーバーホールは正規店で10万円前後、加えて傷防止のためのポリッシュや保管用ワインダーなど、年間コストは想像以上です。

さらに都心のカフェや海外旅行で付けていれば、ひったくり・置き引きのリスクが常に付きまとう──心理的コストも無視できません。この二重負担が「もういらない」と決断する背中を押してしまいます。

「時代遅れ」とされる背景を探る

スマートウォッチの台頭とテクノロジー格差

2024年の世界スマートウォッチ市場は約390億ドル、2032年には760億ドル超へ倍増が見込まれています。

心拍計測やSuica決済、転倒検知までこなすウェアラブル端末の進化はもはや時計というより“手首のミニPC”。

対して機械式時計は19世紀の技術を色濃く残すアナログ機構です。若年層ほど「ハイテクと比べると時代遅れ」と感じやすいのは当然でしょう。

サステナビリティ志向の高まり

気候危機が叫ばれるなか、再生エネルギーで充電するスマートウォッチと違い、高級機械式時計は希少金属・レザーを大量に使用し、製造過程のCO₂排出も大きいと指摘されています。

グリーン消費を意識する層には「資源を浪費する贅沢品」と映り、時代と逆行している印象を強めています。

若年層の価値観シフト

Z世代は“所有より体験”を重視する傾向が強いと言われます。高級時計より推し活や旅行に投資し、Instagramに思い出を残す方がリターンが大きい──そんな消費行動の変化が「高級時計＝時代遅れ」という評価につながっています。

本当にバカバカしい？──無駄遣いと感じる瞬間

ステータスシンボルのズレ

昭和〜平成初期は「良い時計＝出来る男」の図式が確かに存在しました。しかしリモートワークが常態化し、服装もカジュアル化。

画面越しの商談では腕時計がそもそも映らず、見せびらかす場が激減しました。シンボルとしての効力が薄れた瞬間、人は出費を無駄と感じやすくなります。

費用対効果（ROI）の低さ

新品定価150万円の時計を5年後に売却しても、人気モデルでなければ半値以下になることはざらです。メンテナンス費と合わせた総コストを考えると、株式や投資信託より利回りが低いケースが大半。

「投資になる」という触れ込みが実はハードルの高いギャンブルである点も“バカバカしさ”を助長しています。

所有より体験を重視する消費トレンド

サブスク音楽・動画、カーシェアなど非所有型サービスが広まるなか、「モノを増やしたくない」というミニマリズムが浸透しました。

高級時計は保管場所や保険も必要で、ミニマル志向とは相容れません。結果として“身につける金融資産”より“身軽さ”が優先される傾向にあります。

それでも高級時計に惹かれる人がいる理由

職人技と文化的価値

ゼンマイ1本で数百個の歯車を正確に動かすムーブメントは、まさに“手首の機械遺産”。熟練職人がルーペ越しに仕上げるコート・ド・ジュネーブ模様やブレゲ針は、見る者の心を掴みます。

最新ガジェットでは味わえないアナログの美こそ、高級時計が持つ最大の魅力かもしれません。

資産価値とリセールの可能性

スイス高級時計輸出額は2024年に2.8％減少しましたが、人気モデルの中古相場は依然として堅調です。
参考：スイス時計協会 FH「Swiss Watch Exports 2024 年次統計」

特に限定生産やヴィンテージは供給が絞られるため、インフレヘッジとして一定の需要があります。ただし銘柄選びを誤ると資産どころか負債化するリスクもあり、“当てる”には深い知識が不可欠です。

コミュニティと趣味の世界

時計愛好家のオフ会やSNSコミュニティには、ブランドを超えた専門的な会話が飛び交います。共通言語をもつ仲間が全国・海外に増えることで、人生の楽しみが広がるのも事実。

ただの時間計測器を超え、人と人を繋ぐツールへ昇華する点はデジタルガジェットにはない醍醐味です。

結論──「いらない」と断じる前に考えたいこと

高級時計が時代遅れと呼ばれる要因は、テクノロジーの進化・維持コスト・価値観の変化など多岐にわたります。スマホで十分と感じる人にとっては確かに不要で、むしろリスクや負担が勝るでしょう。

しかし、職人技や文化を味わい、コミュニティで繋がりたい人にとっては唯一無二の喜びを提供する存在でもあります。

大切なのは「自分にとっての価値」を冷静に見極めること。見栄や周囲の目ではなく、納得できる理由があるなら、高級時計は決してバカバカしい買い物ではありません。