「フライトレーダーを見てはいけない」と言われる理由と背景【危険性・プライバシー・セキュリティ・正確性】
スマートフォンやパソコンを使って、世界中を飛ぶ航空機の位置や高度、速度をほぼリアルタイムで追跡できる「フライトレーダー」。航空や旅行が好きな人にとっては夢のようなサービスですが、一部では「フライトレーダーを見てはいけない」との声もあります。
ここで言う「見てはいけない」は“違法”という意味ではなく、以下のような懸念を背景とするものです。
- プライバシーの問題
特定の個人やプライベートジェットの移動が公になるリスク。 - セキュリティ上の懸念
要人や軍用機の動きが確認されることで、犯罪やテロに悪用されるおそれ。 - 情報の正確性の問題
受信障害やシステム不具合による誤表示、軍用機の非公開設定など。 - 心理的な影響
航空機の動きに過剰に依存することで不安やストレスを増幅させる可能性。
この記事では、これらのリスクを踏まえつつ、フライトレーダーを安全かつ有意義に楽しむためのポイントをご紹介します。
フライトレーダーの3つの主なリスクと補足情報
プライバシーに関する問題
フライトレーダーは、民間航空機や一部のプライベートジェット・ビジネスジェットの位置情報も表示するため、著名人や企業経営者の移動が推測される恐れがあります。さらにSNS上でその情報が拡散されると、プライバシー侵害につながりかねません。
- 企業秘密の漏洩
経営者や重要人物の動向が分かると、機密情報が外部に察知されるリスクも否定できません。
セキュリティ上の懸念
テロリズムや犯罪への悪用
軍事機や要人が利用するチャーター機などを追跡することで、潜在的に犯罪に利用されるのではという懸念があります。もっとも、多くの軍用機はADS-B（自動的に送信される依存型監視情報）をオフにしている、またはフライトレーダー側で表示しないようにフィルタリングされているため、一般のユーザーが簡単に詳細な軍用機の位置を把握するのは難しいのが現状です。
- 事例：2022年のペロシ元米下院議長訪台時の注目
軍用機・政府専用機の動きが追跡サイトで大きく話題になり、数百万人がアクセスしました。直接的にテロや犯罪に利用された報告はありませんが、要人の動向が可視化されることで、政治的・軍事的な緊張を高める一因になったと指摘する声もあります。
ADS-B（Automatic Dependent Surveillance-Broadcast）のセキュリティリスク
フライトレーダーに表示される情報は、原則として各航空機が送信するADS-B信号を受信し、インターネット上に集約して提供されています。しかし、ADS-Bは暗号化されておらず、理論上は偽の飛行機情報を送信したり、データを妨害・改ざんしたりするリスクが指摘されています。現時点で大きな被害事例は報告されていないものの、将来的な懸念として認識しておく必要があります。
情報の正確性に関する問題
フライトレーダーの情報は多くの場合かなり精度が高いのですが、以下のようなケースでは必ずしも正確ではありません。
- 軍用機・政府専用機が非公開
軍事機や要人輸送機の多くはADS-Bを送信していない、あるいは表示されない設定になっているため、そもそも追跡できない場合があります。 - 国や地域によるフィルタリング
イスラエルやサウジアラビアなど、一部の国では機体情報を意図的に非公開とする仕組みがあります。 - 地上付近や障害物の多いエリアで受信精度が低下
山岳地帯や海上を飛ぶ航空機は受信局が少ないため、位置情報の更新が遅れたり、欠落したりすることがあります。 - 悪天候や混雑空域での遅延
気象条件や電波干渉などにより、リアルタイムで表示される情報に数分程度の遅延が生じることも珍しくありません。
こうした要因によってフライトレーダーの表示が実際の飛行と多少ずれるケースもあるため、過剰に信用しすぎるのは危険です。
フライトレーダーが心理面に及ぼす影響
- 大切な人のフライトを監視し続ける
悪天候や遅延があると、それを追ってどんどん不安が募ることがあります。 - 依存状態に陥る
世界中のフライトを眺めることが楽しく、つい長時間見続けてしまう人も。日常生活に支障が出るほどハマり込まないよう注意が必要です。 - 災害や事故時の過度な情報依存
航空機事故や大規模災害が発生した際、フライトレーダーを使って状況を確認しようとする人が急増します。しかし、SNSでは誤情報が拡散されることも多く、フライトレーダーのデータもリアルタイムではないことを理解することが重要です。航空会社や政府機関の公式発表と照らし合わせながら、正確な情報を得るように心がけましょう。
フライトレーダーを安全・快適に使う5つのポイント
- プライバシーに配慮する
他人のフライト情報をSNSで執拗に拡散するのはプライバシー侵害にもつながります。追跡対象の選択や情報共有には十分注意しましょう。 - 公式情報や空港のアナウンスと併用する
フライトレーダーだけでなく、航空会社や空港の公式サイト情報もチェックすると、より正確な状況把握が可能です。 - 利用時間を決める
「1日30分まで」など、自分ルールを設定して過度な利用を防ぎましょう。 - 教育目的や趣味としての利用を心がける
世界の地理や空港の配置、航空機の種類などを学ぶツールとして使うことで、より有意義に楽しめます。 - 利用規約をよく読む
無料版と有料版で機能が異なる場合もあります。データの扱いや取り扱いルールについて確認し、サービスの正しい使い方を理解しましょう。
フライトレーダーの楽しみ方・活用アイデア
- 自宅や職場付近を通る航空機をチェック
「どの航空会社がどこへ向かう飛行機を飛ばしているのか？」を調べると、身近な空に世界とのつながりを感じられます。 - 海外主要空港の混雑度やピークを観察
ヒースロー空港（ロンドン）、ドバイ国際空港、ロサンゼルス国際空港など、大規模ハブのピーク時間帯を眺めていると、国際航空網のダイナミズムが伝わってきます。 - 機体や航空会社の違いを学ぶ
ボーイングとエアバス、国内LCCと外資系航空会社など、さまざまな機体や運航会社を比較すると奥深い世界が広がります。 - 旅行計画やフライトの遅延確認に活用
家族や友人が乗る便の到着予測を把握できるほか、自分の搭乗予定の便が遅延・欠航していないか手軽にチェックできるのは大きなメリットです。 - 世界を疑似旅行気分で楽しむ
「今この時間、欧州から北米に行く飛行機はこんなルートなんだ」など、地理や大陸間のつながりを実感してみると、新しい発見があります。
まとめ：リスクと正確性の限界を理解し、上手にフライトレーダーを楽しもう
フライトレーダーは、航空機や空の動きをリアルタイムで把握できる魅力的なツールです。その一方で、プライバシーの懸念やセキュリティリスク、情報の精度に限界があること、さらには利用者自身の心理的負担など、注意すべき点も多く存在します。
- 軍用機・政府専用機は一部非公開
- ADS-Bのセキュリティが万全ではない
- 地理や気象条件による受信精度のばらつき
- 過度な利用による依存や不安の増大
フライトレーダーは、適切に使えば航空の魅力をより深く知ることができる素晴らしいツールです。これらのポイントを意識しながら、楽しんでみてください！
コメント