リーガルテックとは、法務(Legal)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語であり、企業の法務業務を効率化するITサービスを指します。
この記事では、リーガルテックの基本概念から導入メリット、代表的な企業・サービスの一覧までを分かりやすく解説します。
法務部門のDXを推進し、業務効率化やコスト削減を目指している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
リーガルテックとは?法務業務とテクノロジーの融合
リーガルテック(LegalTech)とは、これまでアナログな作業や属人的なスキルに頼ることが多かった法務業務に、AIやクラウドなどのIT技術を活用することで、業務効率化や品質向上を目指す取り組み全般を指す言葉です。
近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や働き方改革を背景に、リーガルテック市場は急速に拡大しています。株式会社矢野経済研究所の2022年の調査によると、リーガルテックの代表格である電子契約サービスの国内市場規模は、2021年の約140億円から、2025年には約395億円にまで成長すると予測されていました。現在もこの成長傾向は続いており、市場はさらなる拡大を見せています。
リーガルテックの適用範囲は広く、契約の作成から締結、管理に至るプロセスだけでなく、社内規定の整備やコンプライアンスチェック、さらには訴訟対応の支援まで多岐にわたります。特に日本では、働き方改革関連法の施行やリモートワークの普及を契機として、法務部門のデジタル化が急務となりました。単なるITツールの導入にとどまらず、法務業務のプロセスそのものを見直し、企業価値を向上させるための戦略的な取り組みとして注目を集めています。このように、法務分野におけるテクノロジーの活用は、あらゆる企業にとって不可欠な要素となりつつあると言えるでしょう。
企業がリーガルテックを導入する3つのメリット
法務業務の効率化とコスト削減
リーガルテックを導入する最大のメリットは、定型業務の劇的な効率化です。
たとえば、契約書の作成や確認、過去の文書の検索といった作業は、これまでは多大な時間と労力を要していました。これまで法務担当者は、過去の類似案件を探し出すために膨大なファイルキャビネットを漁ったり、各部門とのメールのやり取りに追われたりしていた企業も少なくありません。
しかし、システム上で提供されるテンプレートの活用や、クラウドでの一元管理をおこなうことで、これらの作業時間を大幅に短縮できます。一部の企業では、テクノロジーの導入により契約関連の作業時間を最大80%削減できたという事例も存在します。
リーガルテックの導入によってこれらのアナログな作業が自動化・一元化されると、担当者はより創造的で戦略的な業務にリソースを集中させることができます。例えば、新規事業の法的リスクの検討や、知的財産戦略の立案など、企業の利益に直結するコア業務へ時間を割けるようになる点が大きな利点です。また、業務効率化はそのまま人件費の抑制につながるだけでなく、紙の印刷代や郵送費、保管スペースにかかるコストといった物理的な経費の削減にも直結します。
テレワークへの対応とペーパーレス化の促進
従来の法務業務では、紙の契約書に押印するためだけに出社する「ハンコ出社」が大きな課題となっていました。
リーガルテック、特に電子契約システムを導入することで、インターネット環境さえあればどこからでも契約の締結が可能になります。これにより、法務担当者や決裁者の多様な働き方を支援し、スムーズなテレワーク体制を構築できる点が魅力です。
さらに、ペーパーレス化が進むことで、物理的な保管スペースの削減は、オフィス賃料の最適化にも寄与します。また、災害時の事業継続計画(BCP)の観点からも、重要な契約データがクラウド上に安全にバックアップされることは非常に有益です。従来のように紙の書類が破損・焼失するリスクを回避できるため、企業の重要な財産である契約情報を確実に守ることができます。
場所を選ばない働き方の実現は、優秀な法務人材の確保や離職防止にもつながる重要な要素となっています。物理的な制約をなくし、環境に配慮した企業経営(SDGsへの貢献)にもつながっていくでしょう。
AI活用による契約リスクの低減とガバナンス強化
人の手による契約書のチェックでは、どうしても集中力の低下による見落としや、担当者ごとの解釈のブレが生じるリスクがあります。
そこで活躍するのが、AI(人工知能)を活用した法務文書のレビュー支援機能です。AIが過去の膨大な判例データや自社の基準に照らし合わせて、不利な条項や抜け漏れを瞬時に指摘してくれます。これにより、属人的なミスを未然に防ぎ、企業のコンプライアンスやガバナンスを強力に支援することが可能です。
また、法改正があった際にも、AIレビュー支援システムであれば自動的に最新の法令に準拠したチェックが可能です。手作業でのアップデートの手間を省きつつ、法務部門全体の知識レベルを底上げする効果も期待できます。経験の浅い若手担当者でも、AIの指摘を参考にしながら実務を通じて学ぶことができるため、人材育成のツールとしても機能する点が評価されています。担当者のスキルに依存せず、常に一定以上の品質で法的リスクを管理できることは、企業にとって非常に大きな安心材料となります。
【一覧表】代表的なリーガルテックサービスと提供企業比較
市場には多様なリーガルテックサービスが存在し、それぞれ得意とする領域が異なります。
自社の課題に合わせて適切なツールを選ぶために、代表的なサービスと提供企業を一覧表にまとめました。
| カテゴリ | サービス名 | 提供企業 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 電子契約 | クラウドサイン | 弁護士ドットコム株式会社 | 国内シェアトップクラス。日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約システム。 |
| 電子契約 | GMOサイン | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 | 導入企業数が多く、電子署名とタイムスタンプにより強固な証拠力を担保。 |
| 契約書レビュー | LegalForce | 株式会社LegalOn Technologies | 最新のAI技術と専門家の知見を組み合わせ、契約書のリスクを瞬時に洗い出す。 |
| 契約書レビュー | OLGA(旧:GVA assist) | GVA TECH株式会社 | 自社の法務基準をAIに学習させ、一貫したルールに基づく迅速な審査を実現。AI法務アシスタント、法務データ基盤、AI契約レビュー、契約管理の4つのモジュールで構成される統合型法務OS。 |
| 契約管理 | Hubble | 株式会社Hubble | 契約書の作成から締結後の管理まで、Wordと連携してバージョン管理を効率化。 |
表を見るとわかるように、契約の「締結」に特化したものから、「作成・審査」「管理」に強みを持つものまで、機能は多岐にわたります。
自社の法務部門が現在どのプロセスで課題を抱えているのかを洗い出し、最適なシステムを選択することが大切です。
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リーガルテックサービスの主な種類と機能
電子契約システム(契約締結の迅速化)
電子契約システムは、書面への押印や署名に代わって、クラウド上で電子署名をおこない契約を締結するサービスです。
従来の郵送や印紙の貼付といった手間が省けるため、契約締結までのリードタイムを数週間から数分へと劇的に短縮できます。現在、多くの企業が法務DXの第一歩として電子契約システムの導入を進めています。
また、いつ、誰が合意したのかという履歴が電子証明書やタイムスタンプとして強固に記録されるため、改ざん防止の観点からも非常に安全です。さらに、印紙税法において電子文書による契約は非課税となるため、高額な契約を頻繁に結ぶ企業にとっては、印紙代の大幅なコストカットに直結します。
契約の進捗状況もシステム上でリアルタイムに把握できるため、「現在誰の承認待ちか」が一目で分かります。これにより、相手方や社内関係者の確認待ちによる業務の停滞を防ぎ、スムーズな取引を促進することが可能です。
AI契約書レビュー支援(法務文書のチェック)
AI契約書レビュー支援システムは、アップロードした契約書のドラフトをAIが自動で解析し、リスクのある条項や修正すべきポイントを提示してくれるツールです。
「秘密保持契約」や「業務委託契約」など、頻繁にやり取りされる定型的な契約書の審査において絶大な効果を発揮します。弁護士が監修した解説や修正文のひな型がシステム内に組み込まれていることも多く、専門知識が浅い担当者でも精度の高いチェックをおこなえるのが特長です。
自社のビジネスモデルや取引条件に合わせた独自の審査基準をAIに学習させることができるシステムも登場しています。これにより、全社的に統一された基準で迅速な審査を実施できるようになります。英文契約書などの外国語文書の翻訳やチェックに対応しているサービスも多く、グローバル展開を進める企業にとって、国際法務における強力なサポートツールとなるでしょう。
契約書管理・法務プラットフォーム(ナレッジの共有)
締結済みの契約書や、これまでの交渉プロセスを一元管理するためのプラットフォームも重要なリーガルテックの一つです。
ファイルサーバーやキャビネットに散在しがちな法務関連の情報をクラウド上に集約することで、必要な文書をキーワード検索ですぐに探し出せるようになります。また、更新期限の自動通知機能によって契約の自動更新(意図しない契約延長)を防ぐなど、期限管理の面でも役立ちます。
さらに、契約の相手方や締結日、取引金額などの多様な属性データと紐付けて管理できるため、必要なときに必要な情報を瞬時に引き出すことができます。各部署からの法務相談や依頼内容を一元管理できる案件管理機能を備えたプラットフォームであれば、依頼から回答までのコミュニケーション履歴もすべて記録に残ります。これにより、法務部門の業務の透明性が高まり、他部門との連携もスムーズになるという利点があります。
リーガルテック導入時の注意点と失敗しない選び方
自社の課題と費用対効果の明確化
リーガルテックを導入する際は、いきなり高機能なシステムを導入するのではなく、まず自社の法務業務におけるボトルネックを明確にすることが重要です。
「契約書の締結に時間がかかっているのか」「レビューの品質にばらつきがあるのか」など、課題によって選ぶべきサービスは異なります。スモールスタートが可能なプランを選び、一部の部署から段階的に導入して効果を測定していく運用方法がおすすめです。
また、導入後の運用を見据え、現場の担当者が直感的に操作できる使いやすいインターフェース(UI)であるかも重要な確認事項です。どれだけ高機能なシステムであっても、現場で使われなければ意味がありません。無料トライアル期間を設けているサービスも多いため、まずは実際の画面に触れてみて、自社の業務フローに適合するかどうかを十分に検証してください。初期費用や月額料金といった導入コストと、削減できる作業時間や経費といった効果を比較検討する必要があります。
セキュリティ対策とサポート体制の確認
法務部門が扱うデータには、企業の機密情報や個人情報が多数含まれています。
そのため、導入を検討しているサービスのセキュリティ対策は念入りに確認しなければなりません。通信の暗号化やデータのバックアップ体制、国際的なセキュリティ認証(ISMSなど)を取得しているかどうかが重要な選定基準となります。
クラウドサービスを利用する性質上、情報漏洩やサイバー攻撃への備えは必須条件といえます。データの保管場所(国内サーバーか海外サーバーか)や、アクセス権限の詳細な設定が可能かどうかも事前にチェックしておくべき項目です。導入初期は操作に関する疑問やトラブルが発生しやすいため、専任の担当者がつくプランや、チャット・電話ですぐに質問できる手厚いサポート体制が整っている企業を選ぶことで、安心してシステムを定着させることができます。他システムとの連携に関するアドバイスを受けられる企業を選ぶと、スムーズな運用開始が期待できます。
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【まとめ】リーガルテックで企業の法務DXを実現しよう
リーガルテックは、単なる作業の効率化ツールにとどまらず、企業の法的リスクをコントロールし、競争力を高めるための重要なインフラ戦略です。
契約の締結から審査、管理に至るまで、テクノロジーの力で法務部門の負担を軽減することで、担当者はより高度で戦略的な業務に専念できるようになります。
これからの時代、リーガルテックの活用はもはや選択肢の一つではなく、企業が生き残るための必須条件となりつつあります。導入に向けた第一歩として、まずは現状の業務プロセスを可視化し、改善すべきポイントを洗い出すことから始めてみてはいかがでしょうか。自社の課題や目的に合致したサービスを一覧表などから比較検討し、適切なリーガルテック企業をパートナーとして選定してください。
最新のテクノロジーを味方につけ、持続可能な法務DXを実現していきましょう。

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