SDGs(持続可能な開発目標)の目標10「人や国の不平等をなくそう」は、決して開発途上国だけの問題ではありません。先進国を含めた世界全体で拡大している「格差」を是正し、誰もがチャンスを得られる公正な社会を目指すための目標です。
この記事では、国内外で深刻化する不平等の現状を最新データとともに解説し、私たちが日常生活で実践できる具体的なアクションについて提案します。まずは、この目標が求められている背景と現状から見ていきましょう。
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」が目指す社会
SDGsの目標10は、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位などにかかわらず、すべての人が能力を高め、社会的・経済的・政治的に取り残されない社会の実現を目指しています。これは、SDGs全体の誓いである「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」を象徴する中心的な課題といえます。
具体的には、各国の所得下位40%の人々の所得成長率を国家平均より高めることや、差別的な法律や慣行を撤廃することなどがターゲットとして設定されました。不平等は単に「お金がない」という経済的な問題にとどまりません。教育や医療へのアクセス、政治参加の機会、そして個人の尊厳に関わる深刻な人権問題へとつながっています。
不平等が存在する社会では、貧困の連鎖が断ち切れず、犯罪率の上昇や社会不安を引き起こすリスクが高まります。持続可能な経済成長のためにも、公正さの確保は不可欠な土台となるのです。
世界と日本で深刻化する「格差」の現状データ
不平等の現状を正しく理解するために、世界と日本それぞれのデータを整理しました。以下の表は、主な不平等の種類と現状の課題を比較したものです。
| 不平等の種類 | 主な課題と現状 | 影響 |
|---|---|---|
| 国家間の格差 | 先進国と後発開発途上国の経済力の差 | 医療・教育インフラの未整備、平均寿命の乖離 |
| 国内の所得格差 | 富裕層への富の集中と貧困層の固定化 | 社会的分断、経済成長の鈍化 |
| ジェンダー格差 | 賃金格差、意思決定の場への女性参加不足 | 女性の貧困化、労働力不足 |
| 機会の不平等 | 家庭環境による教育・就職機会の差 | 「親ガチャ」による貧困の連鎖 |
世界の富の偏在と経済格差
世界では一部の富裕層に富が集中する一方で、多くの人々が貧困に苦しむ状況が続いています。世界不平等研究所(World Inequality Lab)の報告によれば、世界で最も裕福な10%の人々が世界の総所得の約52%を占めているのに対し、下位50%の人々が得ているのはわずか8.5%に過ぎません。
また、生まれた国によって受けられる医療や教育の質が大きく異なる「機会の不平等」も深刻です。開発途上国では、基本的なインフラが整っていないために、感染症や自然災害に対して極めて脆弱な状態に置かれています。こうした国家間の格差を是正するためには、先進国による一方的な支援だけでなく、途上国が自立して経済発展できるような公正な貿易システムの構築が求められます。
参考:World Inequality Report 2022(World Inequality Lab)
日本における「相対的貧困」とジェンダーギャップ
日本は裕福な国だと思われがちですが、実は先進国の中でも貧困率が高い国の一つです。厚生労働省の調査によると、日本の「相対的貧困率」は15.4%となっており、およそ6人に1人が貧困ライン以下での生活を余儀なくされています。特にひとり親世帯の貧困率は高く、子どもの教育格差や将来の選択肢の狭まりにつながっています。
さらに、男女間の不平等も大きな課題です。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」において、日本は146か国中118位という低い順位にとどまりました。政治参加や経済分野における女性の登用が進んでいないことが主な要因であり、同一労働同一賃金の徹底や、固定的性別役割分担意識の解消が急務となっています。
参考:2022年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)
参考:Global Gender Gap Report 2024(World Economic Forum)
不平等を是正するための社会的な仕組みづくり
不平等の解消には、個人の努力だけでは限界があります。国や企業が主導して、構造的な問題を解決するための仕組みを整える必要があります。
社会保障制度の充実と税制の再分配機能
所得格差を是正する最も直接的な手段は、税制と社会保障による富の再分配です。高所得者への適切な課税を行い、その税収を財源として、医療、介護、保育などの社会サービスを充実させることが求められます。これにより、低所得者層の生活コストを下げ、実質的な可処分所得を増やすことができます。
また、最低賃金の引き上げや、非正規雇用労働者の待遇改善も重要です。働く人々が人間らしい生活を送れる「生活賃金」を保障することは、企業の社会的責任(CSR)としても注目されています。不安定な雇用形態を減らし、誰もが安心して働ける労働環境を整備することが、中間層の厚みを増し、経済全体の安定につながります。
テクノロジー活用による機会の平等化
近年では、テクノロジーを活用して格差を埋める動きが加速しています。例えば、オンライン教育の普及により、居住地や経済状況に関わらず、質の高い教育コンテンツにアクセスできるようになりました。これは、地方と都市の教育格差や、途上国の教育不足を解消する強力なツールとなり得ます。
また、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)の分野では、スマートフォンを使ったモバイル送金サービスが普及し、銀行口座を持てなかった人々が金融サービスを利用できるようになっています。AIを活用して採用選考時のバイアス(偏見)を取り除く試みなど、技術の適切な利用は公平な社会の実現を後押しします。
私たちが日常生活でできる具体的なアクション
国の政策や企業の取り組みを待つだけでなく、私たち消費者や市民一人ひとりの行動が社会を変える力になります。明日から始められるアクションを紹介します。
エシカル消費とフェアトレードの選択
日々の買い物は、企業への「投票」と同じ意味を持ちます。安さだけを基準にするのではなく、その商品が作られた背景に思いを馳せてみましょう。開発途上国の生産者に正当な対価が支払われる「フェアトレード認証」の商品を選ぶことは、国家間の不平等を是正する直接的な支援になります。
また、障害者の就労支援施設で作られた製品を購入したり、人権や環境に配慮している企業の商品を積極的に選んだりする「エシカル消費」も効果的です。消費者が公正な商品を求めるようになれば、企業もサプライチェーン全体での人権配慮を強化せざるを得なくなります。
アンコンシャス・バイアスへの気づき
自分の中にある「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」に気づくことも重要です。「女性はリーダーに向かない」「外国人は〇〇だ」「高齢者はITが苦手だ」といった決めつけは、知らず知らずのうちに差別を生み出し、誰かの機会を奪っているかもしれません。
職場や地域社会で、多様な背景を持つ人々の意見に耳を傾け、相手の立場を尊重する姿勢を持つことが、包摂的な(インクルーシブな)社会への第一歩です。差別的な発言や構造に対して、勇気を持って「おかしい」と声を上げることも、平等を守るための大切な行動です。
まとめ:公正な未来のために一歩を踏み出そう
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」は、私たち自身の生活の安定や幸福と密接に関わっています。格差の拡大は社会の分断を招きますが、公正な社会は誰にとっても生きやすい環境をもたらします。
世界の現状を知り、フェアトレード商品を選んだり、自身の偏見を見直したりすることから始めてみてください。小さな行動の積み重ねが、誰もが尊厳を持って生きられる社会の実現へとつながっていきます。

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