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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」徹底解説【持続可能な未来への道筋】

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」徹底解説【持続可能な未来への道筋】 SDGs

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、災害に強いインフラを整備し、誰もが取り残されない持続可能な産業化とイノベーションを推進することを目的としています。私たちの生活基盤である電気や水道、インターネット環境、そして経済成長に不可欠な技術革新。これらが欠如していると、貧困や格差の解消は困難です。本記事では、目標9の具体的なターゲットや現状の課題、そして企業や私たちができるアクションについて分かりやすく解説します。

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の3つの柱

この目標は、単に工場を建てたり道路を作ったりすることだけを指しているわけではありません。目標のタイトルに含まれる「インフラ」「産業」「技術革新(イノベーション)」という3つの要素は、相互に深く関係し合っています。それぞれの要素がなぜ重要なのか、その本質を紐解いていきましょう。

強靭(レジリエント)なインフラの構築

「強靭(レジリエント)」とは、災害やショックに対する回復力が高い状態を指します。地震や台風などの自然災害が発生した際、道路が寸断されたり、電力が長期間停止したりすると、人々の命と経済活動が危険に晒されます。

途上国においては基本的な生活インフラの整備が急務ですが、先進国においても老朽化したインフラの更新や、気候変動による激甚災害に耐えうる「防災・減災」の視点を取り入れた再整備が求められています。持続可能な経済発展のためには、物流網や通信網を含めた盤石な土台が必要です。

包摂的で持続可能な産業化

産業化は雇用の創出や所得の向上をもたらし、貧困削減に大きく寄与します。「包摂的(インクルーシブ)」とは、誰一人取り残さないことを意味し、先進国だけでなく途上国の中小企業もグローバルな価値連鎖(サプライチェーン)に参加できる環境を作ることを指します。

また、従来の大量生産・大量廃棄型の産業構造ではなく、環境負荷を最小限に抑える「持続可能性」が必須条件です。資源の効率的な利用やクリーン技術の導入により、経済成長と環境保全の両立を目指す姿勢が問われています。

イノベーション(技術革新)の推進

インフラ整備や産業の課題を解決する鍵となるのがイノベーションです。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどのデジタル技術は、エネルギー効率の向上や遠隔医療、スマート農業など、多分野で社会課題の解決に役立ちます。

技術革新は、新しい産業を生み出し、既存の産業構造を変革します。研究開発への投資を増やし、インターネット環境を世界中に普及させることで、知識や情報の格差(デジタルデバイド)を埋めることも、この目標の重要な要素です。

目標9の具体的なターゲット内容【一覧表】

SDGsの目標には、より具体的な達成基準である「ターゲット」が設定されています。目標9には、5つの「達成目標(成果)」と3つの「実現手段」の計8つのターゲットがあります。内容を要約して一覧表にまとめました。

番号ターゲットの要約
9.1災害に強く、誰もが公平に利用できる高品質なインフラを開発し、経済発展と人々の福祉を支援する。
9.2持続可能な産業化を促進し、各国の状況に応じてGDPに占める産業セクターの割合と雇用を大幅に増やす(後発開発途上国では倍増させる)。
9.3小規模な製造業などが金融サービスや市場へアクセスしやすくし、バリューチェーンへの統合を拡大する。
9.42030年までに、資源利用の効率化とクリーン技術の導入により、インフラと産業を持続可能なものへ改善する。
9.5科学研究を強化し、技術能力を向上させる。研究開発従事者数や、研究開発への公的・民間支出を拡大する。
9.aアフリカ諸国、後発開発途上国などに対し、資金・技術面での支援を強化し、持続可能なインフラ開発を促進する。
9.b開発途上国の国内技術開発、研究、イノベーションを支援し、産業の多角化や商品への付加価値創造を促す環境を整える。
9.c後発開発途上国において、情報通信技術(ICT)へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までにインターネットへの普遍的かつ安価なアクセスを提供する。
参考:JAPAN SDGs Action Platform(外務省)

世界と日本が抱える課題と現状

目標9の達成に向けた進捗は、地域によって大きな偏りがあります。世界的な視点と、日本国内の視点の双方から現状の課題を見ていきましょう。

世界の現状:デジタルデバイドとインフラ格差

世界では依然として、基本的なインフラにアクセスできない人々が多く存在します。特に深刻なのが「デジタルデバイド(情報格差)」です。国際電気通信連合(ITU)の2023年の報告によると、世界人口の約33%にあたる推定26億人が、いまだにインターネットを利用していません。

また、開発途上国では道路や電力などの基礎インフラが未整備であるため、農作物を市場へ運ぶことができずに廃棄されたり、工場の稼働が安定しなかったりと、経済成長の大きな足枷となっています。加工技術が未熟なため、原材料を安く輸出するしかなく、産業の付加価値が高まらないという構造的な問題も残っています。

参考:Statistics(ITU:国際電気通信連合)

日本の現状:インフラ老朽化とDXの遅れ

一方、日本においては「インフラの老朽化」が喫緊の課題です。高度経済成長期に整備された道路、橋、トンネル、水道管などが一斉に耐用年数を迎えつつあります。国土交通省によると、建設後50年を経過する施設の割合は加速度的に増加しており、これらを適切に維持・更新するための技術と資金、そして人材の確保が求められています。

さらに、産業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れも指摘されています。少子高齢化による労働力不足を補うためにも、AIやロボット技術を活用した生産性の向上、いわゆる「Society 5.0(ソサエティ5.0)」の実現に向けた動きを加速させる必要があります。

参考:インフラメンテナンス情報(国土交通省)

企業における技術革新の取り組み事例

多くの企業が、本業を通じて目標9の達成に貢献しています。ここでは、具体的な技術革新のアプローチをいくつか紹介します。

ICTによるスマートシティと通信インフラ

通信事業者は、5G(第5世代移動通信システム)や、その先の6Gを見据えた通信網の整備を進めています。高速・大容量・低遅延の通信は、自動運転や遠隔医療の基盤となります。また、都市全体をネットワークでつなぎ、エネルギー消費や交通流を最適化する「スマートシティ」構想も各地で進行中です。

途上国においては、成層圏から通信ネットワークを提供する「HAPS(高高度プラットフォームステーション)」のような新技術により、山間部や島嶼部など、これまで基地局の設置が困難だったエリアへのインターネット普及が期待されています。

建設・製造業のDXとグリーン化

建設機械メーカーなどは、ICT建機を活用して施工現場の測量から検査までをデジタル化し、作業効率と安全性を飛躍的に向上させています。これは日本の労働力不足解消だけでなく、熟練工の少ない途上国のインフラ整備加速にも役立ちます。

製造業では、製品の設計段階からリサイクルしやすさを考慮する「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行が進んでいます。また、工場からのCO2排出をゼロにするカーボンニュートラル工場の実現や、水素エネルギーの活用など、環境負荷を低減する技術開発が競争力の源泉となっています。

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私たち個人にできること

「産業」や「インフラ」と聞くと、国や大企業の役割に思えるかもしれません。しかし、私たち個人の選択や行動も、技術革新や持続可能な産業を支える力になります。

エシカルな消費と応援

環境に配慮した技術で製品を作っている企業や、途上国の産業支援を行っているフェアトレード製品を積極的に選ぶことは、持続可能な産業化を消費者として支援する行為です。「安さ」だけでなく、「どのような背景で作られたか」を基準に商品を選ぶことが、企業の姿勢を変える力になります。

デジタルリテラシーの向上と活用

新しい技術を恐れずに学び、活用することも重要です。オンライン行政サービスの利用や、リモートワークツールの活用など、私たちユーザーがデジタル技術に適応することで、社会全体のDXが加速します。また、クラウドファンディングなどを通じて、社会課題解決型のスタートアップ企業を直接応援することも、個人ができるイノベーション支援の一つです。

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まとめ

SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、強靭なインフラ整備、包摂的な産業化、そしてイノベーションを通じて、経済成長と社会課題の解決を同時に目指すものです。世界ではデジタルデバイドの解消が、日本では老朽インフラへの対応とDX推進が大きな課題となっています。

技術の力でより良い未来を作るためには、政府や企業の投資だけでなく、私たち一人ひとりが新しい技術を受け入れ、持続可能性を重視した選択を行うことが不可欠です。技術革新の恩恵を誰もが享受できる社会へ向けて、まずは身近な技術や企業の取り組みに関心を持つことから始めてみましょう。

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