SDGs:目標8「働きがいも経済成長も」の実現に向けた取り組みと課題
SDGs(持続可能な開発目標)の第8の目標である「働きがいも経済成長も」は、包摂的かつ持続可能な経済成長、完全かつ生産的な雇用、そしてすべての人々にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進することを目指しています。この目標は、経済成長と雇用の質の向上を同時に達成するという挑戦的な課題に取り組むものです。
持続可能な経済成長の促進
持続可能な経済成長は、貧困削減や生活水準の向上に不可欠です。特に開発途上国では、年間7%程度の経済成長率を目指しています。しかし、単なる量的成長ではなく、環境への配慮や社会的包摂を伴う質的な成長が求められます。イノベーションの促進、生産性の向上、グリーン産業の育成などを通じて、持続可能な経済成長を実現することが重要です。
生産性の向上とイノベーションの促進
経済の高付加価値化と技術革新は、持続可能な成長の鍵となります。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などのデジタル技術の活用、産学連携の強化、スタートアップ支援などを通じて、生産性の向上とイノベーションを促進することが重要です。同時に、これらの変化に対応できる人材の育成も急務です。
完全雇用とディーセント・ワークの実現
すべての人々に、安定した雇用と働きがいのある仕事を提供することは、この目標の中心的な課題です。若者や女性、障害者など、就労に困難を抱える層への支援を強化し、雇用の質を向上させることが重要です。最低賃金の保障、労働安全衛生の確保、社会保障の充実などを通じて、ディーセント・ワークを実現することが求められています。
若年雇用の促進
若者の失業や不安定雇用は、世界的な課題となっています。教育と労働市場のミスマッチの解消、職業訓練の充実、起業支援などを通じて、若者の雇用機会を拡大することが重要です。また、インターンシップやアプレンティスシップ(見習い制度)の活用も、若者の就労支援に有効です。
中小企業の育成と支援
中小企業は、多くの国で雇用の大部分を担っており、経済成長の原動力となっています。中小企業の生産性向上、資金調達の円滑化、国際市場へのアクセス支援などを通じて、中小企業の成長と競争力強化を図ることが重要です。また、社会的企業やインクルーシブ・ビジネスの育成も、包摂的な成長に貢献します。
労働者の権利保護と安全な労働環境の確保
労働者の基本的権利を保護し、安全で健康的な労働環境を確保することは、ディーセント・ワークの実現に不可欠です。労働法制の整備と遵守、労働組合の役割強化、労使対話の促進などを通じて、労働者の権利を守ることが重要です。また、サプライチェーン全体での労働条件の改善も課題となっています。
持続可能な観光業の促進
観光業は、多くの国で重要な産業となっており、雇用創出と経済成長に大きく貢献しています。しかし同時に、環境への負荷や地域社会への影響も懸念されています。地域の文化や環境を尊重した持続可能な観光の促進、観光関連の中小企業支援、観光産業における良質な雇用の創出などが重要な課題です。
強制労働、現代の奴隷制、人身売買の撲滅
世界には今なお、強制労働や現代の奴隷制、人身売買の被害に遭っている人々が存在します。これらの問題を撲滅するために、法執行の強化、被害者の保護と支援、企業のサプライチェーン管理の徹底などが求められています。また、消費者の意識向上も重要な課題です。
働き方改革とワーク・ライフ・バランスの推進
長時間労働の是正、柔軟な働き方の導入、有給休暇の取得促進など、働き方改革を通じてワーク・ライフ・バランスを実現することは、労働生産性の向上と働きがいの創出につながります。また、育児・介護との両立支援や男性の家事・育児参加の促進も重要な課題です。
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まとめ
SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の達成には、持続可能な経済成長の促進、生産性向上とイノベーションの推進、完全雇用とディーセント・ワークの実現、若年雇用の促進、中小企業の支援、労働者の権利保護、持続可能な観光業の発展、強制労働の撲滅、働き方改革の推進など、多面的な取り組みが必要です。経済成長と働きがいの両立は、持続可能な社会の実現に不可欠です。私たち一人一人が、自身の働き方を見直し、また消費者として企業の取り組みを評価することで、この目標の達成に貢献できるのです。
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