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SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の現状と課題、私たちにできること

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の現状と課題、私たちにできること SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、地球上のすべての人々が、安価で信頼できる現代的なエネルギーを利用できるようにすることを目指しています。

結論から言えば、この目標の達成には「途上国へのインフラ支援」と「先進国の徹底した脱炭素化」の両輪が不可欠です。再生可能エネルギーの技術革新が進む一方で、依然として世界では数億人が電気のない生活を送っており、課題は山積しています。

この記事では、目標7の基礎知識から、2024年時点での最新の進捗状況、そして私たちが日常生活で実践できる具体的なアクションについて解説します。

SDGs目標7の概要と世界が直面するエネルギーの現実

私たちの生活は電気や熱などのエネルギーなしには成り立ちません。しかし、現在私たちが依存している化石燃料(石炭・石油・天然ガス)は、気候変動を引き起こす温室効果ガスの主要な排出源となっています。

目標7では、単にエネルギーを行き渡らせるだけでなく、「クリーン(環境に優しい)」かつ「アフォーダブル(安価で手に入れやすい)」であることが求められています。具体的には、2030年までに以下の達成を目指しています。

  • 安価で信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセス確保
  • 世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大
  • 世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる

エネルギーは教育、医療、ビジネスなど、SDGsの他の目標達成の鍵を握る重要なインフラです。クリーンエネルギーへの転換は、地球環境を守りながら経済成長を続けるための唯一の道筋といえるでしょう。

参考:SDGs Goal 7: Affordable and Clean Energy

【最新データ】エネルギーアクセス普及の進捗と残された格差

世界ではエネルギーへのアクセス改善が進んでいますが、そのスピードは目標達成にはまだ十分ではありません。特にサハラ以南のアフリカ諸国など、一部の地域では深刻な状況が続いています。

世界銀行などが発表した2024年のレポートによると、2022年時点で電力にアクセスできない人々の数は約6億8,500万人と推計されています。これは2010年の約12億人に比べれば大幅に改善していますが、パンデミックやエネルギー価格の高騰により、近年その改善ペースは鈍化傾向にあります。

また、電気だけでなく「調理のためのクリーンなエネルギー」も重要な課題です。依然として約21億人が、薪や炭、動物の排泄物などを燃料として料理をしており、これによる室内空気汚染は健康被害の原因となっています。呼吸器疾患による早死を防ぐためにも、ガスや電気コンロなどのクリーンな調理設備の普及が急務です。

参考:Tracking SDG 7: The Energy Progress Report

再生可能エネルギーと従来型エネルギーの比較と転換

気候変動対策の切り札となるのが、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの「再生可能エネルギー」です。技術革新により発電コストが劇的に低下し、多くの国で石炭火力よりも安価な電源となりつつあります。

エネルギー源ごとの特徴を理解するために、従来型エネルギーと再生可能エネルギーの違いを比較表にまとめました。

比較項目化石燃料(石炭・石油など)再生可能エネルギー
資源の枯渇性限りがある(枯渇する)永続的に利用可能
CO2排出量非常に多い発電時はゼロ(または極少)
コスト動向燃料価格や地政学リスクで変動大技術革新により低下傾向
供給の安定性天候に左右されず安定天候により変動(蓄電池が必要)

課題とされていた「天候による発電量の変動」についても、蓄電池技術の進化や、ITを活用して電力需給を調整するスマートグリッドの導入により、解決策が見え始めています。今後は、これらの技術への投資をさらに加速させる必要があります。

省エネ技術とエネルギー効率の改善によるアプローチ

エネルギー問題の解決には「創るエネルギーをクリーンにする」ことと同様に、「使うエネルギーを減らす」ことが重要です。これを実現するのがエネルギー効率(省エネ)の改善です。

産業界では、工場の排熱を再利用したり、AIを活用して生産ラインの電力消費を最適化したりする取り組みが進んでいます。また、建築分野でも断熱性能を高めたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)が標準化されつつあります。

輸送部門における電気自動車(EV)へのシフトも、エネルギー効率改善の一環です。ガソリン車に比べてEVはエネルギー変換効率が高く、再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、トータルの環境負荷を大幅に下げることが可能です。

実現に向けた課題:インフラ整備と公正な移行

目標達成に向けては、技術面だけでなく社会的な課題もクリアしなければなりません。特に開発途上国における送配電網の整備(インフラの強靭化)は大きな壁となっています。

既存の電力網がない地域(オフグリッド地域)では、大規模な発電所を作るよりも、各家庭や地域単位で太陽光パネルを設置して電気を賄う「分散型電源」の導入が有効です。これにより、莫大なインフラ投資を待たずに電気を利用できるようになります。

また、「公正な移行(ジャスト・トランジション)」という視点も忘れてはなりません。脱炭素社会への移行に伴い、石炭産業などで働く人々が失業するリスクがあります。これらの労働者がクリーンエネルギー産業へスムーズに転職できるよう、職業訓練や社会保障の整備を行うことが、持続可能な社会への転換には不可欠です。

私たちにできること:今日から始めるアクション

SDGs目標7の達成は、政府や大企業の取り組みだけで完結するものではありません。私たち個人の選択が、大きな波となって社会を変えていきます。今日からできる具体的なアクションを紹介します。

再生可能エネルギー由来の電力プランを選ぶ

自宅の電気契約を見直し、再エネ比率の高い電力会社やプランに切り替えることは、最も直接的な貢献の一つです。多くの消費者がクリーンな電気を選ぶことで、再エネ発電への投資が促進されます。

省エネ家電への買い替えと日常の節電

古い冷蔵庫やエアコンを最新の省エネ機種に買い替えるだけで、消費電力を大きく削減できます。また、こまめな消灯や空調温度の適正化など、基本的な節電行動も重要です。

移動手段の見直し

徒歩や自転車、公共交通機関を利用し、自家用車の利用を控えることもエネルギー消費の抑制につながります。車が必要な場合は、EVやハイブリッド車を選択肢に入れましょう。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」実現への取り組みと日本の課題【最新版】

まとめ

SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、気候変動対策と貧困解消の両方に直結する極めて重要な目標です。

世界では再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、すべての人に電力を届けるためのインフラ整備や、クリーンな調理環境の確保には、さらなる加速が必要です。同時に、化石燃料からの脱却に伴う雇用の変化に対するケアも求められています。

技術の進化と国際協力、そして私たち一人ひとりの賢いエネルギー選択が合わさることで、持続可能なエネルギー社会は実現可能です。まずは身近な電気の使い道を見直すことから始めてみませんか。

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