記事内に広告が含まれる場合があります。

SDGs目標1「貧困をなくそう」の現状とは?企業・個人の取り組み事例を解説

SDGs目標1「貧困をなくそう」の現状とは?企業・個人の取り組み事例を解説 SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)の1番目の目標である「貧困をなくそう」は、すべてのSDGsの基礎となる重要なテーマです。貧困は単にお金がない状態を指すのではなく、教育、健康、安全な水へのアクセスなど、人間らしい生活を送るための権利が奪われている状態を意味します。

世界では紛争や気候変動、パンデミックの影響により、貧困削減のペースが鈍化、あるいは逆行している地域もあります。一方で、日本国内でも「見えない貧困」と呼ばれる相対的貧困が深刻な課題となっています。

この記事では、SDGs目標1の基礎知識から、世界と日本の最新の貧困データ、そして企業や私たちが今日からできる具体的な取り組みについて解説します。

SDGs目標1「貧困をなくそう」の世界と日本における現状

貧困には大きく分けて「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があります。SDGsの目標1を理解するためには、この2つの違いと、それぞれの最新動向を把握することが不可欠です。

世界銀行は2022年秋に国際貧困ラインを1日1.90ドルから2.15ドルに改定し、さらに2025年6月には物価上昇や購買力平価(PPP)の変動を考慮して「1日3.00ドル」へと更新しました。この基準を下回る生活をしている人々が「絶対的貧困」層にあたります。長年減少傾向にあった世界の貧困人口ですが、パンデミックや国際紛争、気候変動の影響に加え、貧困ラインの引き上げにより、支援を必要とする人々の実態がより浮き彫りになっています。

一方、先進国である日本で問題視されているのは「相対的貧困」です。これは、その国の文化水準や生活様式と比較して適正な水準を下回っている状態を指します。厚生労働省の調査によると、日本の相対的貧困率は15.4%(2021年)に達しており、特に「ひとり親世帯」の貧困率は高い水準にあります。日本において貧困は、決して遠い国の話ではありません。

種類定義主な課題
絶対的貧困1日3.00ドル未満で生活し、衣食住の最低限のニーズを満たせない状態。飢餓、感染症、教育機会の欠如、サハラ以南アフリカへの集中。
相対的貧困その国の大多数よりも貧しい状態(等価可処分所得の中央値の半分以下)。社会的排除、教育格差の固定化、見えにくい貧困。

参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

貧困がなくならない原因と社会への連鎖的な影響

なぜ、技術が発展した現代においても貧困はなくならないのでしょうか。その背景には、個人の努力だけでは解決できない構造的な要因が複雑に絡み合っています。

主な要因として「教育の欠如」が挙げられます。貧困家庭に生まれた子供は、十分な教育を受けられず、その結果として安定した職に就くことが難しくなります。これにより、親の貧困が子へと引き継がれる「貧困の連鎖」が発生します。また、気候変動による干ばつや洪水は、農業を生業とする途上国の人々の生活基盤を一瞬で破壊し、貧困へと追いやる大きな要因です。

貧困は単なる経済的な問題にとどまりません。栄養不足による健康被害、紛争の誘発、児童労働や人身売買といった人権侵害など、他のSDGs目標の達成を阻む根本原因となります。つまり、目標1の達成なくして、持続可能な社会の実現はあり得ないのです。

企業・ビジネスセクターに求められる取り組み事例

かつて貧困削減は政府やNGOの役割とされてきましたが、現在は企業の力が不可欠です。CSR(企業の社会的責任)としての寄付活動にとどまらず、本業を通じた課題解決(CSV)が注目されています。

フェアトレードとサプライチェーンの見直し

企業ができる最も直接的な貢献の一つが、サプライチェーンの透明化とフェアトレードの推進です。安価な製品を作るために、開発途上国の生産者に不当に安い賃金を支払ったり、過酷な労働環境を強いたりしていないかを見直す必要があります。適正な価格で取引を行うフェアトレードは、生産者の生活自立を支え、貧困からの脱却を後押しします。

インクルーシブ・ビジネスの展開

開発途上国の低所得者層(BOP層)を、消費者や生産者、販売員としてバリューチェーンに組み込む「インクルーシブ・ビジネス」も有効です。例えば、現地の女性を販売員として雇用して衛生用品を普及させるビジネスモデルなどは、現地の雇用創出と公衆衛生の向上を同時に実現します。ビジネスとして利益を上げながら貧困削減に貢献する、持続可能なアプローチです。

私たち個人ができる身近な支援とアクション

「貧困をなくす」という目標はあまりに大きく見えますが、私たち個人の小さな選択が積み重なることで、社会を変える力になります。

エシカル消費を意識する

日々の買い物で、フェアトレード認証ラベルがついた商品や、寄付付きの商品(コーズ・リレイテッド・マーケティング商品)を積極的に選ぶことが支援につながります。「安さ」だけで選ぶのではなく、その商品がどのような背景で作られたのかを想像し、生産者の生活を守る消費行動をとることが、日本にいながらできる国際協力です。
参考:エシカルとは?意味をわかりやすく解説!サステナブルとの違いや身近な取り組みも紹介

支援団体への寄付やボランティア

貧困問題に取り組むNGOやNPOへの寄付は、即効性のある支援方法です。最近では、古本や古着の買取金額がそのまま寄付になる仕組みや、ポイントでの寄付など、現金の持ち出し以外でも貢献できる方法が増えています。また、国内の子ども食堂や学習支援のボランティアに参加することは、身近にある相対的貧困の解消に直接関わるアクションとなります。

SDGs達成するためにできることとは?個人・企業の具体的な取り組み17選

まとめ

SDGs目標1「貧困をなくそう」は、途上国の絶対的貧困だけでなく、日本の相対的貧困も含めた世界共通の課題です。貧困は教育、健康、平和などあらゆる問題の根源となっており、解決には多角的なアプローチが必要です。

政府による社会保障の拡充はもちろんですが、企業のフェアトレード推進や、私たち消費者のエシカルな選択が、貧困をなくすための大きな駆動力となります。まずは現状を知り、普段の買い物や寄付など、手の届く範囲から行動を始めてみましょう。

コメント